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- 2024年4月30日
カスハラとは 当事者が語る理由 東京都やJR東日本の対策は アンガーマネジメントどうする
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「店員をクビにしろ」「上司を呼んでこい」
こうしたことばは「カスタマーハラスメント」となりかねません。この「カスハラ」の実態を調べるため、労働組合が3月までサービス業の組合員を対象にアンケート調査を行ったところ、「2年以内で被害にあった」と回答した人が半数近くにのぼりました。客側はなぜこうした行為をしてしまうのか。「カスハラ」を繰り返したことがあるという当事者が取材に応じました。対策の動きとあわせてまとめました。
繰り返したカスハラ “自分は厳しく叱責されて成長”
「『ばか野郎!お前は無能なんだよ』みたいな。もうありとあらゆる罵詈雑言をぶつけたような次第です」
これはカスハラを繰り返していたという40代の男性の話です。
男性は、IT関係の会社に勤めていましたが、5年前に独立してIT関連の事業を立ち上げ、今では年収が1000万円を超えるまでになったと言います。
これまで働いてきた中で、自分のミスなどを上司や客に厳しく叱責されたことが自身の成長につながったとして、客として訪れた店では不備などを厳しく指摘することが相手のためになると考えていました。
“自分の正義感を振りかざしてしまった”
最近では、定食屋でおかずの量が少ないと感じたときに店員に『作り直せ』とどなったと言います。
「多いときは1年に10回ぐらいカスハラをしていた。相手に強く言うことでよくしたいという自分の正義感を振りかざしてしまった」
“2年以内にカスハラ被害にあった” 46.8%
労働組合でつくるUAゼンセンはカスハラの実態を調べるため、3月サービス業の組合員を対象にインターネットでアンケート調査を行った結果、3万3000人あまりから回答がありました。
それによりますと、「2年以内でカスハラの被害にあったことがあるか」尋ねたところ、46.8パーセントが「被害にあった」と回答しました。
カスハラの内容 客側に原因も
また、最も印象に残っている客のカスハラについて尋ねたところ、▽「暴言」が39.8%、▽「威嚇・脅迫」が14.7%、▽「何回も同じ内容を繰り返すクレーム」が13.8%、▽「長時間拘束」が11.1%などとなっています。
カスハラのきっかけとなった具体的な理由について尋ねたところ、▽「客の不満のはけ口や嫌がらせ」が26.7%、▽「接客やサービス提供のミス」が19.3%、▽「消費者の勘違い」が15.1%などとなっていて、原因が客側にあったという回答も目立ちました。
カスハラやめたい…アンガーマネジメント講座
カスハラへの認識が広がる中、カスハラをやめたいと考えている人もいます。都内で開かれている怒りの感情をコントロールする方法を学ぶ「アンガーマネジメント講座」には、開設された去年以降、のべ140人が参加しました。
主催者によるとこのうち、カスハラをやめられない自身を変えようと受講を希望する人も相次いでいるということです。
相手の事情を想像して感情コントロール
講座では、参加者が、発注した名刺に載せる顔写真の画像が想定していたよりも粗く見えて不快に感じた場合、どう感情をコントロールするかのシミュレーションが行われました。
2%でいいから相手のことを肯定してあげる。少ない人数でレストランをまわしているのかもしれない。相手のバックグラウンドを想像するだけで怒りが落ち着く。
講師は、不快感に伴ってカスハラ行為を起こす前に、思いとどめてほしいと呼びかけていました。
講座を運営 心理カウンセラー 吉村園子さん
「カスハラをテーマにした講座は求められている。今後、ブラッシュアップした講座を作っていきたい」
カスハラ防止 東京都は条例案の提出目指す
東京都は、全国初となるカスハラ防止条例の制定に向けた検討を進めています。カスハラがセクハラやパワハラなどのハラスメントと違って法律上の定義はないことから、「違法な行為、または不当な行為で就業環境を害するもの」などと条例で定義づける方向で調整を進めていて、こうした内容を盛り込んだ条例案の早期提出を目指しています。
JR東日本 サービス休止や要望対応をやめることも
JR東日本は4月、初めてカスハラへの対処方針を策定したと発表しました。この中ではカスハラに該当する行為を▽執ような言動や▽社員の個人情報などのSNSなどへの投稿、▽不合理または過剰なサービスの要求などとしていて、こうした行為が確認された場合、サービスの休止や要望を聴くなどの対応をやめるとしています。
さらに悪質と判断される行為があった場合は警察や弁護士などに相談し、厳正に対処するとしています。