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“サンダルバイバイ”で水難事故を防ぐ~叱られると思うから追いかける!?~

  • 2023年7月31日

流されたサンダルなどを追いかけて水の事故に巻き込まれるケースは全国で後を絶ちません。

こうした中、インターネットなどである言葉が広がっています。

それが「サンダルバイバイ」

どのような意味なのか、呼びかけている人を取材しました。

サンダルなど拾おうと溺れるケースが後を絶たず

流されたサンダルなどを追いかけて水の事故に巻き込まれるケースは全国で後を絶ちません。

警察庁の統計によりますと去年(2022年)、中学生以下で水の事故で亡くなった人は26人で、この42.3%にあたる11人は川や海での水遊び中だったといいます。

また、河川財団による過去20年間の川の事故の分析では、幼児と小学生でよく見受けられる事故のパターンとして「落としたボールやサンダルなどを拾おうとして溺れたケース」が挙げられています。

3年前(2020年)の6月には、埼玉県日高市の川で友人と遊んでいた小学4年生の女の子が溺れて亡くなり、川に流されたサンダルを拾いに行こうとしたとみられています。

5年前(2018年)の8月には、仙台市の河原でバーベキューをしていた高校1年の男子生徒が、川に流されたサンダルを探しに行ったあと行方が分からなくなり、川の中で見つかりましたが、死亡が確認されました。

大人の例もあり、3年前(2020年)の7月には、福島県会津若松市で70歳の男性が流されたサンダルを探しに川に入ったあと行方が分からなくなり、その後、死亡が確認されました。

水の事故 防止へ…「サンダルバイバイ」

夏のレジャーシーズンで相次ぐ水の事故を防ぐ合言葉として、「サンダルバイバイ」ということばがネットなどで広まりつつあります。

呼びかけているのは大阪市のNPO法人の代表で、水の事故を防ぐ教室を開いているすがわらえみさんです。「サンダルバイバイ」とは、海や川でサンダルなどが流されても、追いかけずに見送ろうという呼びかけです。

無理に追いかけて溺れてしまう事故も起きていることから、すがわらさんは、2年前からインターネットで動画や漫画を紹介するなどしてこの「サンダルバイバイ」を呼びかけています。

サンダル追いかける背景とは

すがわらさんによりますと、子どもたちがサンダルなどを追いかけてしまう背景には、「物をなくしてはいけない」という教えや「なくしたらしかられる」という思いがあり、保護者の理解も重要だということです。

このため、サンダルをなくした子どもをしからないことを約束してもらおうと、「おやこ条約」という用紙を作って親子で署名してもらうことを勧めています。

すがわらさんは、この日、大阪市内で開いた教室でも、参加した小学4年生やその母親に「サンダルバイバイ」の考えを教え、「おやこ条約」に署名してもらいました。

また、体に密着するようにライフジャケットを着て必ず大人に確認してもらうことや、腕にはめる浮き具は川や海では急な流れで腕から抜けてしまう危険があることを伝えていました。

参加した小学4年生の女子児童
「大切なものが落ちても、その先が深いかもしれないから取りにいきません。ライフジャケットもちゃんと着ます」

女子児童の母親
「条約は大事だと思いました。サンダルが流されたら、買ったばかりであれば私も追いかけてしまうと思います。サンダルよりも命のほうが大切だということを親子で分かっていないとダメだなと感じました」

NPO法人「AQUAkidssafetyproject」代表 すがわらえみさん
「川も海も、しっかり対策を取れば安全に楽しめるところなので、『サンダルバイバイ』を水の事故防止の第一歩として覚えてほしい。『サンダルバイバイ』やライフジャケットの大切さが当たり前になるまで、活動を続けて行きたい」

“命よりも大切なサンダルはない”

海上保安庁で救難や警備の業務に長年携わった日本水難救済会の遠山純司理事長は、「光の屈折などの原因で、海や川は、水面を見ただけでは分からない予期せぬ深みや流れがある。流されたサンダルを一生懸命追おうとすると、物ばかりに注意がいって深さや流れなどの周りの環境に対する注意力がなくなってしまうので非常に危険だ」と話しています。

ほかに、海や川の事故を防ぐポイントとして遠山理事長は、以下のようなことを挙げています。

・脱げにくいサンダルやマリンシューズを履くこと。
・海や川の環境を知ること。
・保護者が子どもより川の下流や海の沖側に立つこと など。

日本水難救済会 遠山純司 理事長
「備えたうえで海や川に行くことが大切です。命よりも大切なサンダルはないということをしっかり心に刻んで、海や川で楽しんでいただきたい」

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