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たった数分で愛車が盗まれる!? 自動車盗最多 千葉県で広がる手口は?対策は?

  • 2024年04月01日

車の盗難が相次いでいます。千葉県では去年1年間に自動車の盗難が746件発生し、全国ワーストになりました。
背景を取材すると、最新の車に搭載された電子制御システムを逆手に、とても短時間で盗み出す手口が広がっていることが分かりました。
広がる手口とその対策を取材しました。

(NHK千葉放送局 上原聡太)

首都圏で相次ぐ自動車盗難 去年は千葉が全国最悪に

上の表は、去年1年間で警察が認知した自動車の盗難の件数です。全国では5762件発生。千葉県が前の年よりも100件以上増えて746件と全国ワーストとなりました。首都圏のほかの県も被害が多く、3位埼玉県、4位茨城県、5位神奈川県となっています。

防犯カメラが捉えた犯行の瞬間

今、広がっている自動車盗難の手口が防犯カメラに捉えられていました。
下の画像は去年12月の午前3時半に千葉県柏市の駐車場で撮影された映像から切り出したものです。2人組の男が辺りをうかがったあと、このうち1人がミニバンの「アルファード」に近づき、助手席側のタイヤ周辺をライトで照らしました。

提供:視聴者

そして、バンパーに手をかけると・・・。

提供:視聴者

力まかせにバンパーをこじあけました。

提供:視聴者

このあと、「CANインベーダー」という特殊な機器を取り付けて車を盗もうとしたとみられます。このときは、人が来たため2人組は慌ててその場から逃げました。

広がる手口「CANインベーダー」

「CANインベーダー」は、モバイルバッテリーほどの大きさの自動車を盗むために作られた機器で、窃盗グループの間で出回っているとみられています。

提供:千葉県警察本部

犯罪グループはこの機器を使って、「CAN通信」と呼ばれる車の電子制御システムに侵入。車のキーなしにカギを開けてエンジンをかけ盗んでいるとみられています。カーセキュリティーの会社に聞くと、早ければわずか数分で盗むことが出来るため、この手口が広がっているということです。

車のセキュリティ会社代表 撹上智久さん

「この手口は、車の外から純正の車のセキュリティの解除やロックの解錠を行い、車種によってはエンジンをかけてそのまま盗んでいってしまうのが特徴です。お客さんの中には『実は以前の車を盗まれてしまい、こんな思いはしたくないので、新しい車には対策をしてください』という方が非常に多いのですが、盗まれた際の状況からして『CANインベーダー』じゃないかという人が多いです」

対策をしていても盗まれる 被害者の男性

千葉県ではいま、この手口によるとみられる被害が相次いでいます。市川市に住む40代の男性は、去年3月の深夜に自宅にとめていた車を盗まれました。

車を盗まれた男性

盗まれたのは、数年前に購入したばかりのSUV=多目的スポーツ車の「ランドクルーザー」。休日に家族と遊ぶ際に使っていました。

男性は周辺で自動車盗難が数件起きる中で、自宅の駐車場に防犯カメラを設置。電動の柵も常に閉めるなど、日頃から警戒していました。

取材をもとに作画

しかし、犯人はどこかから駐車場に侵入。防犯カメラの向きを変えたうえで、CANインベーダーを使って短時間で車のドアを開け、エンジンをかけたとみられています。
 

取材をもとに作画


そして、駐車場の柵は車内に置いていたリモコンで操作されたとみられ、自宅で寝ていた男性が気づかないうちに盗まれてしまいました。

取材をもとに作画

『犯人も自宅のゲートがついたところまでわざわざリスクは冒さないだろうから大丈夫だ』と思っていましたが、盗まれてしまいました。おそらく何度も下見して準備したうえで狙ってきたと思うので、ものすごく気持ち悪いです

警察は難しい捜査 自衛を呼びかけ

後を絶たない「CANインベーダー」による盗難被害。警察も難しい捜査を迫られています。

犯人を割り出すには盗まれた車を追う必要がありますが、犯人はナンバープレートを交換したり、わざと回り道をするなど、捜査の手から逃れようとします。
それでも、防犯カメラの映像をひとつひとつ集め、つなぎあわせるという地道な捜査を続け、検挙につなげようとしています。

ただ、こうした捜査には時間がかかり、その間に車が解体されてしまうケースも少なくありません。警察はまずは各自による盗難対策を徹底してほしいと呼びかけています。

 

千葉県警察本部生活安全部 齋藤孝之参事官

最近の自動車盗はCANインベーダーと呼ばれる特殊機器を用いて犯行に及ぶなど、犯行態様がハイテク化・スピード化している現状にあります。対策は1つではなく、複数の対策をとるようお願いします

有効な対策は?

広がる手口に対して、どのように対策すれば良いのか。取材したセキュリティ会社は、盗難警報装置が有効だとしています。

 

盗難警報装置を取り付けた車

こちらは装置を取り付けた車。不審者がドアを開けるとアラームが鳴ります。

アラームが鳴っている間にエンジンをかけようとしてもかかりません。費用は数十万円程度かかるものの、新たな手口に対しても効果的だといいます。

(追跡用の)GPSがついていても一度盗まれたら見つからないケースはすごく多く聞きます。まずはエンジンがかからなくするなどして、車がこの場所から移動できなくさせてしまうのが一番有効だと思う

警察によると、「CANインベーダー」の手口で盗まれやすいのは、電子制御システムを搭載したSUV=多目的スポーツ車の「ランドクルーザー」やミニバンの「アルファード」、それにハイブリッド車の「プリウス」など。

千葉県警察本部のポスター

対策としては、盗難警報装置のほか、ハンドルやタイヤを物理的に固定するハンドルロックやタイヤロック、防犯カメラやセンサーライトなど、さまざまな対策を併用することが重要です。これにより、さまざまな方法で対策を破ろうとしてくる犯人に対して「盗みにくい」「盗むのに時間がかかる」と思わることができるということです。愛車の盗難対策を見直してみてはいかがでしょうか?

  • 上原聡太

    千葉放送局 記者

    上原聡太

    2018年(平成30年)入局 長崎局を経て千葉局 現在は警察取材、災害取材を担当

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