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ウクライナから避難 “日本で夢をかなえたい” 春から大学進学の高校生

  • 2024年02月22日

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻から、2月で2年。ウクライナからは多くの人が日本に避難し、いまも2000人あまりが暮らしています。

その中に、都立高校に通いながら学び続け、この春、日本の大学に進学する高校生がいます。目標にしてきた夢に向かって、新たな一歩を踏み出そうとする姿を取材しました。

(千葉放送局成田支局 佐々木風人)

ウクライナから避難 都立高校で学ぶ

英語の授業を受ける高校3年生、ミラーナ・アズィマさん(18)です。

外国籍の生徒を多く受け入れている都立高校に入学を認められ、日本語をいちから学びながら、英語などの教科の勉強も続けてきました。

おととし起きたロシアのウクライナへの侵攻で、首都・キーウで高校に通っていたミラーナさんの生活は一変しました。

キーウの学校で学ぶミラーナさん(2020年)

優秀な成績を収めていたミラーナさんは、現地の大学への進学も決まっていましたが、断念せざるを得なくなりました。

避難していた時のミラーナさん(2022年)

地下に避難しての生活が続き、先行きが見通せない状況にふさぎ込む日々が続いたといいます。

ミラーナさん

「毎日勉強を頑張っていたのに、全て失われてしまい、むなしさを感じました」

そしておととし4月、母親・マリナさんの日本に住む友人を頼って、2人で来日。

日本の住まいでのミラーナさんとマリナさん

もともと日本のアニメが好きで、興味があったというミラーナさん。都立高校で学びを再開させると、新しい生活や出会いの中で気持ちが前向きになり、日本で大学進学を目指すことに決めたといいます。

高校の担任とミラーナさん

都立高校で学ぶ2年の間に、先生や友人とも日本語でやりとりができるようになりました。

きょうの補習はどうでしたか?

よかったです。TOEFLの練習ができました。エッセイは書くのがちょっと難しいです。リーディングも難しいです。スピーキングとリスニングは大丈夫です

ミラーナさん

「この学校はとても雰囲気が良くて、先生たちもみんなとても親切です。感謝しています」

日本でかなえたい夢とは

3月、この高校を卒業するミラーナさん。ウクライナにいたときから目標にしてきた、将来の夢があります。

ミラーナさんが見せてくれたのは、チョルノービリ原発の写真です。

チョルノービリ原発事故(1986年)

38年前、キーウの北にあるチョルノービリで起きた原発事故。事故後、周辺の住民の間では健康被害が報告されています。

ミラーナさん(左)とマリナさん(中央)、祖母のタチヤナさん(右)

ミラーナさんは、一緒に暮らしていた祖母をがんで亡くし、放射線が人体などに与える影響をもっと知りたいと、研究者を志すようになりました。

ミラーナさん

「祖母はとても大切な家族の一員でした。祖母ががんになって、将来、人々を助けるために、放射線の研究をしたいと思いました」

日本で大学進学へ

日本で勉強を続けてきたミラーナさんに、うれしい知らせが届きました。都内の大学への、合格通知です。

母語ではない英語も猛勉強し、英語で数学や科学などの試験などを受けて合格しました。春からは、アルバイトをして生活費を稼ぎながら、目標にしていた放射線について学ぶことになります。

ウクライナにいる父親にも報告しました。

私、大学に受かったんだよ。すごく頑張った

父 ドミトロさん

よくやった!

母 マリナさん

「本当にうれしいです。母親として、娘が順調に前に進んでいることがうれしいのです」

ミラーナさん
「将来は、ウクライナの人だけでなく、世界中の人のためになる研究成果を出して、いまは『ウクライナは戦争が起こっている場所だね』と言われるが、そうではなくて、『ウクライナは、こんなに素晴らしい研究をした、ミラーナという研究者の出身地だ』と言われるように頑張りたい」

編集後記

戦火を逃れてきたミラーナさんに出会ったのは、2年前の成田空港でした。その後、都立高校入学や大学合格など、節目に合わせて取材を続けてきました。目標に向けて前に進み続けるミラーナさんの話を聞く度に、私自身が背中を押されます。

  • 佐々木風人

    千葉放送局成田支局記者

    佐々木風人

    新聞社を経て、2018年入局。2021年に成田支局に赴任し、日々、空港での取材を続けています。

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