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お風呂の“ヒートショック”対策どうする? チェックリストも 冬到来で高齢者施設は対策始める 千葉

  • 2023年11月14日

記録的な高温となったのが一転、冷え込む日が続いています。冬本番を迎える中で、毎年この時期には、入浴中の事故が増加しています。

中でも注意が必要なのが「ヒートショック」「熱中症」。寒いときこそ入りたい冬のお風呂。健康に楽しむために、気をつけたいことをまとめました。

(千葉放送局記者・浅井優奈)

入浴中の死亡事故 冬場に増加!

冬場を中心とした寒い時期には、入浴中の死亡事故が多くなっています。

東京都監察医務院によりますと、東京23区で入浴中に亡くなる人は1年間で約1400人に上り、毎年11月から4月にかけて多くなっているということです。

入浴中の事故による月別の死亡者数(東京23区・2015~2019年)
(東京都監察医務院のデータからNHK作成)

高齢者の「ヒートショック」対策は

入浴の介助を行う高齢者施設では「ヒートショック」の対策を取り入れています。

千葉市中央区にある「ヒューマンライフケア 千葉院内の湯 デイサービス」では、毎日20人ほどの高齢者が通っています。

午前中、順番に入浴の介助が行われますが、この施設では必ず入浴前に血圧や体温を測り、看護師が体調を確認した上で入浴できるかどうかを判断しています。

脱衣所では、寒さが増した11月11日からエアコンの暖房を入れ始め、足元を暖めるヒーターも設置しました。

そして、浴室では最初に湯船には入れず、先に洗い場で手足から体へと順番にお湯をかけ、急激な寒暖差を生み出さないよう気を配っています。

湯船の温度は熱くなりすぎないよう確認し、入浴時間も長くなりすぎないよう注意しています。

利用者

脳梗塞で左半身が動かせないので、自宅ではお風呂に入れません。そのためここでのお風呂の時間をとても楽しみにしています。今日からはこの寒さなので、お風呂場を温かくしてくれてあってすごく良かったです。

利用者

ここでは脱衣所も寒くないようになっているのでありがたいです。慢性の腰痛があるのですが、お風呂であったまると足腰が軽くなるので助かっています。

「ヒューマンライフケア 千葉院内の湯 デイサービス」大城妃那子さん

急に寒くなって高齢者の体にも影響が出やすいと思うので、浴室内と脱衣所の寒暖差がないように気をつけています。

また、心臓が弱い方などは入浴時間を短めにするといった対応を取っています。まず室内から温めて、体に負担がかからないように気をつけていきたいと思います。

「ヒートショック」対策 専門家は

ヒートショックを防ぐポイントについて、医師でヒートショックに詳しい東京都市大学 早坂信哉 教授に聞きました。

早坂教授

脱衣所を温めるなどして「温度差」を小さくするのが重要です。

リビングと脱衣室・浴室の温度差は「5℃以内」、最適なお風呂の温度と入浴時間は「40℃で10分」と覚えてください。

《自宅でできるヒートショックを防ぐための工夫》

① 湯温は40℃、入浴時間は10分程度を目安に(体が温まらない場合は15分まで)
② 脱衣所に暖房入れる
③ 入る前に浴室にシャワーをかけ流して温める
④ 浴槽にお湯を張るときに蓋をしない
⑤ 風呂に入る前に水分をとる
⑥ 家族に声をかけてから入浴する

浅井記者

ヒートショックはどうして起こるのでしょうか?

早坂教授

ヒートショックは、急な温度差によって血圧が変化して起こる様々な健康障害のことを言います。

例えば暖かいリビングから寒い脱衣所や浴室に行く、また体が冷えているのに急に熱いお風呂に入ると、自律神経のうちの交感神経が刺激されます。それによって血管が収縮して、血圧が急上昇します

一方、ぬるめ風呂に長くつかっていると、血管が拡張されて逆に血圧は低下します。こうした血圧のジェットコースターのような乱高下によって、心臓や血管には大きな負担がかかります。

脳内出血を起こしたり、心筋梗塞脳梗塞などを起こしたりするおそれがあるほか、脳貧血によって転倒や溺れる危険性もあるんです。

浅井記者

特に注意が必要なのはどのような人ですか?

早坂教授

ヒートショックになるのは高齢の方が圧倒的に多いです。どうしても年齢が上がっていくと血管の動脈硬化が進んでいくので、血管が破けてしまったりとか、血管が詰まるってことが起こりやすくなっています。

また、高齢者以外でも糖尿病高血圧がある方、それからコレステロールが高い方などは、動脈硬化が進んでしまうので、大きな病気を引き起こす可能性があり、注意が必要です。

また、温度差に加えて注意が必要なのが"熱中症”だといいます。熱い風呂に長く入ってしまうと、体温が上がりすぎて意識障害が出てしまう可能性もあるといいます。

早坂教授

入浴中の事故原因は完全に解明されていませんが、「ヒートショック」はかなり多いだろうと言われていて、さらに「熱中症」もあると考えられています。

「ヒートショック」の原因となる温度差を小さくした上で、寒い日にはお風呂の温度を上げたくなりますが、温度を上げすぎず、長く入りすぎないよう気をつけてもらいたいです。

「ヒートショック予備軍」4割も!

日頃の入浴にどの程度「ヒートショック」のリスクがあるのか。

大手ガス器具メーカー「リンナイ」は毎年、入浴の習慣に関する調査を行っていて、ことしは全国の2350人にインターネット調査を行い、11月9日に結果が公表されました。

リンナイのホームページより

この中で、冬場に入浴する際の湯船の温度設定を尋ねました。

全国平均は40.6℃でしたが、「ヒートショック」のリスクが高まるとされる42度以上と回答した人は全体の約1/3に上りました。

また、湯船につかっている時間も尋ねました。

全国平均は14.3分でしたが、20分以上と回答した人は全体の約1/4を占めたということです。

早坂教授

多くの方は、適切な温度や時間で入浴しているようですが、熱いお風呂に長時間入るというリスクの高い行動を取っている方も一定数いるので、注意が必要です。

また、調査では、早坂教授が作成した「ヒートショック診断テスト」を元に、「ヒートショック予備軍」がどの程度いるのかも調べました。

《ヒートショック診断テスト》

① お風呂に入る前よりお風呂の後に水分をとる
② できるだけ食後すぐにお風呂に入る
③ 家族に声をかけずにお風呂に入る
④ お風呂場が寒くても我慢する
⑤ お風呂に入ったらすぐに湯船に浸かる
⑥ あつあつの湯船につかる
⑦ 湯船から出るときに立ちくらみすることがある
⑧ 湯を張るときには湯船にふたをする
⑨ サウナに行ったら水風呂に入る

→3個以上チェックがつくと「ヒートショック予備軍」

この調査の結果、「ヒートショック予備軍」は全体の41%を占めていたということです。

早坂教授

毎年普及啓発をしていますが、なかなか完全には伝わってないところもあるのかなと思います。

ちょっとしたことで対策できるので、今晩からでも実践してもらって、ぜひ「ヒートショック」の危険性を減らしてもらえればと思います。

メリット多いお風呂「安全な入浴を」

冬場は危険性が高まる入浴。一方で早坂教授によりますと、毎日の入浴はうつ病になるリスクを下げたり、介護予防に繋がったりすることがわかっているといいます。

入浴で気をつけるポイントを押さえて、安全にお風呂に入ってほしいといいます。

早坂教授

お風呂は健康効果が高い一方で、ちょっとした工夫をしていただかないと危険が伴います。

逆に言えば、色々なポイントに気をつけていただければ安全にお風呂に入れるということですので、工夫をしながらぜひお風呂を活用していただきたいなと思っています。

  • 浅井優奈

    千葉放送局記者

    浅井優奈

    2018年入局。函館・札幌での勤務を経て、千葉へ。 遊軍担当として医療や地域の話題を取材しています。

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