9月8日の記録的な大雨で、千葉県内では史跡や天然記念物といった文化財も被害を受けました。
「チバニアン」として知られる市原市の地層や、長柄町にある古墳時代の墓、地域住民によって守られてきた睦沢町の森など、被害は多岐にわたっていて、千葉県教育委員会は修復を検討することにしています。
(千葉放送局記者・金子ひとみ)
千葉県教育委員会のまとめでは、9月8日の記録的な大雨の影響で、県内12の文化財の被害が確認されています。
表のように、国が指定や登録を行っている▼史跡が4か所、▼天然記念物が2か所、▼有形文化財が1か所のほか、県が指定している▼史跡が2か所、▼天然記念物が1か所、▼有形文化財が2か所となっています。
住宅の浸水被害が大きい茂原市やその周辺だけでなく、旭市や南房総市、柏市の文化財でも斜面が崩れたり、屋根が雨漏りしたりするなど、県内の広い地域で被害が確認されています。
国の天然記念物で、地質学上の一時代が「チバニアン」と名付けられるきっかけとなった市原市の「養老川流域田淵の地磁気逆転地層」では、周辺の土砂が一部崩れました。
市原市によりますと、復旧作業はほぼ終わったということですが、9月21日現在、立ち入りは規制されています。
国の史跡で、古墳時代の終わりに山の斜面に穴を掘って作られたとされる墓の「長柄横穴群」(長柄町)では、斜面2か所が崩れました。
長柄横穴群では、2019年の台風15号や台風19号、10月の豪雨でも倒木や見学路の安全柵が壊れるなどの被害が出て、その後復旧していましたが、4年前に続く被害となりました。
県の天然記念物に指定されている睦沢町の「妙楽寺の森」は、「スダジイ」や「ウラジロガシ」などの常緑樹が茂っていて、貴重なヒメハルゼミや野鳥も多く生息する自然環境に恵まれた場所で、寺や地元住民によって守られてきました。
森では、100メートルほどにわたって土砂崩れが起きて、常緑樹が相次いで倒れるなどの
被害があったということです。
妙楽寺 須賀田徳円 住職
「8日の昼過ぎに、森の見晴らしが急に良くなったなと思って見に来たら、地形が一変していて、『ここでこんなことが起きるなんて』と、驚きました。崩れていく音は全然聞こえなかったので、全然気づきませんでした」
森を囲む道路も土砂崩れで寸断し、寺は2日間ほど孤立状態となったほか、水道管は今も壊れたままで、広域市町村圏組合が急きょ給水タンクを設置しています。
水道が止まっていると、生活に不便があるだけではなく、文化財の保護もできません。
斜面が元どおりになって、みんなが楽しく安全に来ることのできる場所になるといいなと願っていますが、この斜面を一体どうすればいいんだろう?経済的負担に耐えられるだろうか?と思います。規模が大きいので想像もつかず、今後のことはかなり心配です。
文化財の被害について、千葉県教育委員会では、「国や地元の自治体などと協議し、修復に向けて検討を急ぎたい」としています。