ページの本文へ

  1. 首都圏ナビ
  2. ちばWEB特集
  3. 千葉 一宮川など氾濫の大雨災害から3年 学校現場でも対策進む

千葉 一宮川など氾濫の大雨災害から3年 学校現場でも対策進む

  • 2022年10月25日

2019年10月、千葉県内で12人が死亡した大雨災害からきょう(25日)で3年です。
予報を上回る大雨になったこともあって、下校できなくなる児童や生徒が相次ぎ、800人以上が校内で一夜を明かしましたが、備蓄や保護者への連絡などで課題が残りました。
そのため千葉県内では学校に安全にとどまるための対策が進められています。

(千葉放送局 荻原芽生/渡辺佑捺)

千葉県によりますと、2019年10月25日の豪雨では、一宮川など19の河川が氾濫して、県内で12人が死亡し、浸水などの被害があった住宅はおよそ4800棟にのぼりました。

2019年10月26日

この日は昼前後に雨が強まり、予報を上回る大雨になったことから県内の学校では、周囲の冠水や交通機関の運転見合わせなどのため、下校できなくなる児童や生徒が相次ぎました。

公立の小中学校や高校などを対象に県教育委員会と千葉市教育委員会が調べたところ、学校内に泊まり込んだ児童や生徒はあわせて32校の834人にのぼったということです。

学校側からは、「予報を大きく上回る雨が降り、下校すべきか留め置くべきかなど判断が難しかった」とか、「食料や毛布の十分な用意がなかった」、それに「職員が手薄になり保護者からの電話対応にも追われた」といった声が寄せられました。

こうした声を受けて県教育委員会は学校ごとに、対応マニュアルの整備や備蓄などの対策を進めるよう、求めてきました。
 

その結果、非常食や水、それに防寒シートなどの備蓄のほか、自治体によっては、学校に代わって教育委員会が保護者へ連絡を行うなど、連絡体制の強化が進みました。

また千葉市では、休校や登下校時間の変更を各校が判断する際の材料にしてもらおうと、市が契約している気象情報会社の情報を学校と共有しています。

学校では対策進む

3年前の豪雨で生徒8人が帰宅できず校内に泊まり込んだ一宮町の県立一宮商業高校では、空き教室を備蓄庫として活用するほか、大雨の際の下校の判断などを決めるマニュアルを作るなどの取り組みを進めています。

一宮商業高校では2019年10月25日の豪雨の際、浸水被害が発生した茂原市や長柄町などに住む生徒8人が、保護者が迎えに来られなかったり交通機関が運転を見合わせたりしたため校内で一夜を明かしました。

学校側では、当日中止となったPTA会議のためにたまたま準備されていた弁当や水を生徒に配り、会議室にマットを敷き毛布を町から借りて寝てもらったということです。

この経験から、新たに空き教室を備蓄庫として生徒およそ450人分の非常食や水、それに防寒用のアルミシートといった物資を保管しています。

保管している物資

こうした物資は、生徒自身に2000円程度の費用を負担してもらって高校が購入し、生徒が卒業する際に返すことになっています。

また、「大雨対応マニュアル」の中では「土砂災害警戒情報」が出されたら下校はさせず、校舎内の安全な場所で待機するなどの目安を設けたほか、職員の役割分担もあらかじめ決めています。

田邉 学教頭

大雨だけではなく、地震なども含めていつどんな災害が来るかはわからないので、的確な情報を得て判断ができるよう備えを進めていきたい

学校に気象情報も

千葉市教育委員会では以前から悪天候が予想されるときは小中学校にメールを送っていましたが、3年前の豪雨などを教訓に、去年からは市が契約している気象情報会社の情報も市内の小中学校に共有しています。

地域ごとに、災害が起きるリスクの高さや警報や注意報の出る可能性の予想が分かり、休校や登下校時間変更の判断に活用してもらいます。

土気小学校の3年前の被害の写真

3年前の大雨で校庭の木が倒れたり、校舎の窓ガラスが割れたりするなどの被害があった緑区の土気小学校では、ことしの台風の対応などで市からの情報を活用したということです。

田村 髙広校長

以前は、教職員が自力で気象情報を集めていましたが、教育委員会からの情報はより詳細なので、とても助かっています。子どもたちの安全確保に役立てたい

熊谷知事「児童や生徒の安全を第一に考えると、下校させずに校内にとどめるという判断が非常に重要になってくる。県教育委員会でも3年前を教訓に学校への指導などを着実に進めていただいている。どのような災害があっても対応できるように、ハザードマップなど基本的な情報をしっかり確認して、まずは自身で備えをしていただくこと、また、自主防災組織や消防団など、共助の取り組みにもしっかり参画していただき、地域力を高めてほしい」

取材後記

取材した一宮商業高校の田邉教頭は、取材の合間でいつ災害が来てもいいように動きやすいジャージなどの着替え一式を常に通勤用の車の中に積んでいることを教えてくれました。「いざとなったらスーツでは活動できませんから」と生徒を守ろうという強い意志を語ってくれました。

また、豪雨災害から3年が経過し、すでに高校では当時の様子を知っている職員が異動などでほとんど残っていないということです。それでも災害はいつ再び起こるかは分かりません。災害の記憶を伝えることで少しでも多くの人に備えの意識をもってもらえるように取材を続けていきたいです。(荻原芽生)

豪雨災害があった3年前よりも、さらにインターネットなどからは膨大な数の気象情報が手に入るようになりました。しかしサイトによっては情報がばらつくこともあり、むしろ判断が難しくなることもあります。教育委員会から信頼できる気象情報を得られることは、教職員の方々の正確で迅速な行動につながっていると思いました。

台風や大雨のときに教室が水びたしになったり、通学路に倒木があった際には教職員の方々で子どもたちが登校してくるまでに片付けを行うこともあるそうです。子どもたちの安全を第1に考える教職員の方々がより良い判断ができるための仕組みが、こうして整っていくとよいと感じました。(渡辺佑捺)

  • 荻原芽生

    千葉放送局 記者

    荻原芽生

    ふだん警察や司法取材を担当。趣味のキャンプ道具を防災用品として備えています。

  • 渡辺佑捺

    千葉放送局 記者

    渡辺佑捺

    ふだん警察や司法取材を担当。これからも防災・減災につながる取材をしていきたいです。

ページトップに戻る