特殊詐欺の被害は、千葉県内でも深刻な状況です。詐欺グループのターゲットはお年寄りだけではありません。簡単なアルバイトとうたって若者を募集し、若者が「受け子」や「出し子」として詐欺に加担させられるケースもあります。今回は特殊詐欺に加担させられないよう、若い人たちに注意を呼びかける取り組みを紹介します。一役買って出たのは、あの人気プロレスラーでした。
「ガッデム!」
この日、千葉県警察本部に現れたのは人気プロレスラーの蝶野正洋さん。
千葉県内で起きたことしの特殊詐欺の被害は、8月末の時点で東京に次いで全国で2番目に多いおよそ19億円。また、9月末までに特殊詐欺で検挙された106人のうち、少年は11人。未成年が「受け子」などとして関わるケースも少なくありません。
「短時間で高収入」などとネット上で募集され、簡単なアルバイト感覚で応募できる。知らず知らずのうちに詐欺に誘い込まれてしまうことも。そんな甘い誘いに乗せられて少年・少女が詐欺に加担してしまうのを防ごうと、蝶野さんは今回広報大使を引き受けました。
会場では蝶野さんみずからが詐欺グループの指示役を演じた寸劇も披露されました。
「楽して稼ぎたい」。少年が「受け子」として詐欺に加担し逮捕されてしまうストーリーです。
寸劇は、大学生の少年がアルバイトを探すシーンから始まります。
なんかいいバイトないかなあ・・・短時間高収入?当日払い5万円から?これいいじゃん!気になる方メールください?ちょっと送ってみるか。
大学生が送ったメールは、蝶野さんが率いる詐欺グループの事務所に届きます。
早速釣れたな。馬鹿な奴め。おい、早速ひっかかったぞ!電話しろ!
翌日、少年は詐欺グループの事務所へ呼ばれます。
おお!待ってたよ。良い顔してるなあ。うし、期待してるからなあ。頑張ってくれ、な。
では契約書を作成しますので、こちらにご記入をお願いします。あと本日身分証はお持ちでしょうか。少々お預かりします。
しっかりコピーとっとけよ。いざというときに使えるからな!
詐欺グループは身分証のコピーをとり、少年に身動きがとれないよう仕向けます。そして・・・。
今からサギサギ公園という所に荷物を持ってってもらいたいんだ。大丈夫か。
お、おれにできますかね。
お前、何言ってんだよ。堂々としてろもっと。いいか、絶対にびびるんじゃねえぞオラ!わかってっか!
疑問に思いながらも断ることができなかった少年。
指示されるがまま、公園でおばあさんから封筒に入った現金を受け取り、「受け子」として詐欺に加担してしまいます。
これだけ?これで5万円ゲット?めっちゃいいバイトじゃん!
ところが・・・。
警察です。荷物を確認させてもらえるかな?そのお金は何だ?
知りません。人に言われて受け取っただけなので・・・。
詳しい話は署で聞かせてもらおうか。
こんなはずじゃなかったのにー。
寸劇の少年のように詐欺に加担しないよう、若者に向けて蝶野さんは呼びかけます。
①簡単に稼げるバイトはない
②甘い誘いには乗らない
③友達や先輩に誘われてもきっぱりと断る
④困ったときにはすぐに相談
蝶野さん「俺が言ったことを絶対に、忘れるんじゃねえぞ!電話で詐欺に加担したら、お前の人生がガッデムだ!」
蝶野さんは、「少年の詐欺加担」と書かれた風船を得意のビンタで割りました。
蝶野さん「若いときというのはいろんな勢いで物事をしてしまったりということもあるし、判断できなかったりすることは、一番身近な人に相談をする。やっぱり、人に聞くということが大切だと思います」
蝶野さん「うちも今、中学生の子どもがいますけれども、道を尋ねるにも人に聞いて教えてもらうということが当たり前にできると思うので、同じようにちょっとおかしいなと疑問に思ったら、近くの人に話をしてみる、聞いてみるというのを習慣づけてもらいたいなと思います。
プロレス界は、おいしい話にろくな話はないですから。その辺のところを、子どもたちには気をつけてほしい」
蝶野さん「子どもたちがどこかで緩んでいるところに、悪い人たちは必ず入ってきます。自分の身近な人を犯罪に加担させないということを、特にこれから年末年始、注意をしていきたいと思います。皆さんも気をつけて頂ければと思います」
新型コロナの影響でバイトができなくなるなど、お金に困っている若い方も多いかもしれません。「短時間で高収入」「簡単な仕事」など魅力的な言葉に食いついてしまうかもしれません。しかし、うまい話には裏がある。そのことを常に心に刻んでおきましょう。自分も含めてですが、若いうちは勢いで物事を判断してしまったり、視野が狭くなってしまうことも多いと思います。まずはいったん落ち着いて、甘い誘いは疑い、身近な周りの人にすぐに相談するようにしましょう。詐欺に加担させられないよう、蝶野さんの言葉をしっかりと胸に刻んでほしいと思いました。