五輪への思いを胸に全日本選手権に挑む ~ダンス ブレイキン 渡辺楓選手(KAEDIE)~

アーバンスポーツの一つで、若い世代を中心に人気が高まっているダンス競技=ブレイキン。
いわゆる“ブレイクダンス”で、2024年夏のパリオリンピックの新競技に採用され、一気に注目度を増している。
その第4回となる全日本選手権が、2月18日(土)、19(日)に開催される。
日本最高峰の大会に宮城から挑むのが、中学3年生の15歳、渡辺楓選手だ。
東北・北海道ブロックを優勝した渡辺選手=ダンサーネーム「KAEDIE(かえでぃー)」が、全国を舞台に飛躍を誓う。

 

活発だった少女=渡辺選手のダンスとの出会い

仙台市の中学生ダンサー、渡辺選手。
ダンスとの出会いは、幼少期にさかのぼる。
幼稚園の先生に「体力がありあまっている」と言われるほど活発な少女だった渡辺選手は、スポーツをすることを勧められた。
いろいろスポーツを試す中、地元のダンス教室で見たのが、ヒップホップ。
「自由な表現で見る人を魅了する姿」に心を奪われた。
3歳の時にヒップホップを始めたが、まもなく、小学2年生(7歳)の時にダンスの発表会でブレイキンにも出会う。

「他のジャンルにはないダイナミックさがカッコいい…!」
渡辺選手はブレイクダンスに小学4年生から本格的に挑戦。
毎日2~3時間の練習に自ら取り組むほど、のめり込んでいった。

 

初めての苦い経験 昨年の全日本選手権

中学生になった渡辺選手は、活躍の舞台を全国に移す。
第2回全日本選手権(2020年秋開催)では中学生~高校生までのユース部門で、中学1年生ながら全国4位に入賞。
「KAEDIE(かえでぃー)」の名がダンス界で広まってゆく中、ブレイキンがオリンピックの新競技に採用されるというニュースが飛び込んできた。
「自分も大きな舞台に立ちたい」と、渡辺選手も自然とオリンピック出場に憧れを持つようになる。

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中学1年で北海道・東北ブロックを制した渡辺選手(KAEDIE) 写真提供:本人

ブレイキンは、DJがその場で選んだ曲に合わせ、即興で踊りを披露する。
音楽への対応力・技の完成度・踊りのオリジナリティなどを審査して勝敗を決するが、渡辺選手の武器は、「フットワーク」という動きだ。
「フットワーク」は、しゃがんでフロアに手をついて素早くステップを踏む動作のことで、“スピード感”と“細かい所作から生まれる美しさ”を兼ね備えている。
「技のダイナミックさに加え、技と技の間の“つなぎ”の部分でも迫力を出せるようこだわっている」という渡辺選手。
ただ、去年の全日本選手権(2022年1月)では苦い経験を味わった。
「オープン女子」という年齢制限のない部門に挑戦し、ベスト8で敗れた。
「注目度が増して、周りのレベルも高くなっている。同じ世代ではない先輩を上回るためには、自分もこれまで以上に真剣に取り組まないといけない」と、渡辺選手の熱意に更にスイッチが入った。

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演技を披露する渡辺選手(KAEDIE) 写真提供:本人

 

五輪に向けた足掛かりを!全日本選手権「オープン女子」でのリベンジ誓う

中学3年生となった渡辺選手。
全日本選手権での悔しさをバネに、入念に自身のダンスの映像を確認しながら練習を重ね、細かい部分の表現力向上に取り組んだ。

さらに7年前から指導を受けている高橋裕さんとのコミュニケーションも一層増やし、地面に背中や肩、頭をつけて回るアクロバティックな動き=『パワームーブ』の大技の完成度や、どんな曲にもリズムを合わせる即興性を磨くことに精一杯、力を注いできた。

その成果が試されるのが、約1年を経てリベンジを誓う全日本選手権(2/18土、19日)だ。
今年の大会は特に重要度が高く、「オープン女子」の全日本選手権で上位に入った選手は新年度の強化選手に選ばれ、世界大会への参加が大きく近づく。
その国際大会で好成績を残すとオリンピック出場が決まるため、選手たちにとって、大事な一戦となる。
今回渡辺選手が出場する「オープン女子」には29人が参加。
すでに強化選手に選ばれている8人の選手も参加するなど、トップレベルの戦いとなる。

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練習に打ち込む渡辺選手(KAEDIE) 写真提供:本人

渡辺選手は、
「以前から知っている強い選手もいて、経験値の高い年上の選手も多い。
 ただ、自分の強みを活かし、今回に向けて磨いてきたダンスを見せたい。
 前回のベスト8を越えて上位に入り、強化指定選手の座をつかみたい」と意気込む。

憧れてきたオリンピック。
渡辺選手が世界に向けた一歩を踏み出す。

(仙台局アナウンサー・黒住駿)