冬に災害が起きたら あなたはどうする?

冬の寒い時期。
もし災害が起きて、避難が必要になったら、
あなたは安全に避難できますか?その備えはできていますか?
実は「冬の避難」にはほかの季節にはないリスクがあるんです。
災害から命を守るため。
そして、災害から守った命を、その後の避難生活で決して失わないため。
NHK仙台放送局では「みんなで冬の避難シミュレーション(ふゆひな)」という
キャンペーンを展開して、皆さんに冬の避難のリスクや注意点をお伝えしていきます。

《ふゆひなプロジェクト》
宮地 夏未・湯河 久美子(仙台局視聴者リレーションセンター)
小斉平 真樹(仙台局コンテンツセンター)


“冬の避難”はリスク増!
大きな地震や津波。大雪による停電…。
寒い冬、災害が起こって、いまいる場所から避難しなければならなくなったら、
あなたの前には、「冬ならでは」の困難が立ちはだかります。
雪道では、冬以外の季節に比べて、スムーズに足を進めることができないかもしれません。
誰かを連れて逃げようとする場合は、リアカーのタイヤが雪に食い込む上、足も滑りやすく、思うよう引っ張ることができません。

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「冬の避難では高まるリスクがある」。
そう警鐘を鳴らしているのが、石巻赤十字病院で副院長を務める、医師の植田 信策さんです。

(石巻赤十字病院 副院長 植田 信策さん)
「寒さによる低体温症が体や健康に大きな被害を与えます。ひどい場合は意識障害がおこり、心臓の働きも落ちてしまい、それによって命に関わる事態に陥ることもあります」

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命を奪うこともある“低体温症”
低体温症とは、「深部体温」という、体の中の温度が35度以下になることです。
寒さによる激しい震えや判断力の低下。
さらにひどくなると、意識障害が起こり、呼吸や脈拍が低下。
最悪の場合、死に至ることもあります。

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植田さんは2011年3月11日の大震災発生直後から、
次々に病院に運ばれてくる人たちの治療にあたりました。
発生から48時間で担当した重傷患者は118人。そのうち31人が低体温の状態でした。
深部体温が30度を下回っている人もいました。
津波に流され、体がぬれた人だけでなく、
津波から逃れた人の中にも、低体温の人がいたそうです。

「思い通りに避難できない」高まる低体温症のリスク
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“避難中、長い時間、極寒にさらされる…”。
例えば、吹雪の中だと、思うように前に進めないことがあります。
雪や雨で衣服がぬれれば、それが低体温を加速させる要因にもなります。

車で避難した場合はどうでしょうか。
路面が凍結していると、思わぬ事故にあうリスクが高まります。
何台もの車が吹雪で立ち往生し、解消までに長時間を要するケースも起きています。
避難の中で低体温症に陥るリスクがあるのです。

避難した先にも低体温症のリスク
東日本大震災の発生後、医師の植田さんは避難所を回り、
身を寄せていた人たちのケアにもあたりました。
そこで目の当たりにしたのは、地震や津波からせっかく守った命が、
避難生活の中で危機にひんしていく過酷な現実だったといいます。

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(石巻赤十字病院 副院長 植田 信策さん)
「本当に衝撃的でした。場所によっては、体育館の床にブルーシート。あるいは何もなく毛布1枚で寝ている。ちゃんとした暖房などもない状態で、多くの方がそこで我慢していらっしゃる状況だったわけです」
「災害関連死という言葉が日本にはあります。これは災害そのものでは生き延びたんだけれども、その後の避難生活などで命を落とした方です。東日本大震災では、災害関連死のうちの約半分が、原因が避難所にあると言われているんです。ですから、避難所の環境さえよければ救われた命っていうことになりますね」

“冬の避難”を想定して備えを見直して
冬の寒さは、これから一段と厳しくなります。そして、冬は毎年やってきます。
避難中、そしてその後の避難生活でも命を失うリスクが高まる冬。
植田さんは一人ひとりに、寒い時期を想定して災害への備えを見直してほしいと訴えます。

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(石巻赤十字病院 副院長 植田 信策さん)
「行政などにすべてを委ねるのはなかなか難しいところがありますので、どうしても自助努力が必要になってくるかと思います。自宅でも暖房が使えない環境になることを考えて、低体温にならないような服装であったり、トイレが使えるようにするための携帯トイレだったりを持っておくこと。食料を備蓄しておくことなども需要になってくるかと思います」

“冬の避難”を想定して、一度、いまの備えを見直してみませんか?
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