【宮城の女子ラグビーに新星!】

ラグビーのワールドカップ フランス大会が開幕しました。日本の躍進への期待が高まる中、私、佐々木が注目したのは「女子ラグビー」です。この春、宮城県内のラグビー強豪校・仙台育英高校ラグビー部に初めて女子選手が入部したという情報をキャッチ。しかも2人も。「本当に男子選手と一緒にプレーするのだろうか??」半信半疑で向かった高校で私が見た2人の衝撃の姿とは。

(仙台放送局キャスター 佐々木成美)

 

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2人に初めて会ったのは5月下旬でした。仙台育英ラグビー部に入部したのは、石巻市出身でバックスの阿部心春さん(左)と、登米市出身でフォワードの和泉ひなたさん(右)です。ともにラグビーをしていた家族の影響で小学校の時にラグビーを始めました。中学生の時には15歳以下の東北選抜で一緒にプレーしたといいます。高校でもラグビーを続けたいと考えていましたが、宮城県内に女子ラグビー部がある高校はなく、県外への進学も考えていました。そうした中、県ラグビー協会の紹介で、男子ラグビー部がある仙台育英に進学が決まりました。仙台育英の男子ラグビー部は27年連続で花園に出場する県有数の強豪校です。

阿部心春さん
“男子のハードな練習の中でやると、自分が楽になる部分があると思うのでそこを意識して練習しています”

和泉ひなたさん
“ここでレベルアップしてさらに活躍できるようなという思いでやっています”

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私が驚いたのは2人の練習です。練習時間のほとんどを男子選手と同じメニューをこなしているのです。

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フォワードの和泉さんは男子選手とスクラムも組みます。(右側の3人真ん中が和泉さん)。男子選手も手加減する様子は見られません。男子選手の激しいコンタクトの中、2人は歯を食いしばりながら練習に臨んでいました。おもりを使って行う室内トレーニングでも2人は男子選手と同じ数をこなしていました。男子選手にとっても、2人の存在は大きな刺激になっているようすでした。

仙台育英ラグビー部コーチ 白井翔太さん
“スクラムのヒットスピードは男子選手も含めた同学年の中でトップレベル”

かつて和泉さんと一緒にプレーした男子のチームメート
“小学生の時一番パワーがあったのはひなた。ひなた中心のサインプレーなども組まれていた。2人とも男子の中で頑張っているので負けないように頑張りたい”

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日本の女子ラグビーでは現在、インターハイに競技はなく、男子の公式戦に出ることもできません。そこで2人は公式戦の出場機会を求めて、県内で唯一の女子ラグビーチーム「DIANATE(ディアネート)」に加入しました。チームには県内各地から集まった女子12人が所属し、毎週末活動しています。メンバーは高校生から社会人まで幅広く、専門学校の教員をしながらラグビーに取り組んでいる選手もいます。

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8月下旬、チームは宮城代表として岩手で行われた7人制の国体予選に出場。山形を除く東北5県の総当たり戦で、優勝チームが国体への切符を手にできます。しかし、宮城は初日から2連敗で、がけっぷちの状況で秋田との試合に臨みました。

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「最初から攻めていく」と、前半から果敢に攻める宮城。前半に先制トライを決めて流れをつかむと、仙台育英のルーキー阿部さんが、男子との練習で鍛え上げてきたタックルで相手の攻撃を食い止めチームを盛り立てました。

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その後もトライを重ね、終盤には阿部さんが相手にタックルされながらも、同じく仙台育英のルーキー和泉さんにボールをつなぎました。和泉さんは、自慢のパワーを生かし、タックルに来た選手を片手で突き放しながら走り、見事トライを決めました。

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結果は24対0で秋田に勝利。宮城のメンバーはハイタッチをしたり、仲間の肩を抱き合ったり、勝利を分かち合っていました。

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仙台育英の2人も大きな手ごたえを感じたようです。

和泉ひなたさん
“トライを決めたときに「ナイス!」と言いながら仲間たちが駆け寄ってきてくれたのがうれしかったのと「やった!」という気持ちがすごいありました”

阿部心春さん
“今回みたいなひなたとの連携プレーももっと増やして、チームに貢献できるように頑張っていきたい”

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残念ながら国体への出場は果たせませんでしたが、仙台育英の2人をはじめ、女子ラグビーのみなさんは、明るく、パワフルで、初めて会った時から気さくに話しかけてくれる姿が印象的でした。とにかく「ラグビーがしたい」と共通の思いでプレーする場を求めて集まった仲間だからこそ、より全員が一つになり、生き生きとプレーしているように感じました。大好きなラグビーに打ち込む女子選手の皆さんをこれからも応援していきたいと思います。