――「副鼻くう炎」には私も悩んでいまして、よく鼻が詰まったり調子が悪いということがあるのですが、そもそも副鼻くう炎とはどういうものでしょうか。
三輪さん: | 鼻の中には、のどに続く空気の通り道である「鼻くう」があります。副鼻くうというのは、その鼻くうの周りにある、骨に囲まれた4つの空洞です。 何らかの原因で副鼻くうの中が腫れた状態を、副鼻くう炎といいます。副鼻くう炎が1か月未満の場合が「急性副鼻くう炎」、3か月以上続くと「慢性副鼻くう炎」と診断されます。 |
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――急性副鼻くう炎は、どういう特徴がありますか。
三輪さん: | かぜをひいたあとに、副鼻くうに細菌感染が起こる状態を指しております。 かぜをひくと、熱が出たり鼻水・鼻詰まりが起こるわけですが、そのあとに、ほおやおでこが痛くなったり重くなったり、うみのような鼻が出たりします。この状態が急性副鼻くう炎です。 軽症ですぐに治る場合はよいのですが、これが5日以上続くといった場合には抗菌薬による治療が必要になりますので、耳鼻咽喉科の受診をおすすめいたします。 |
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――慢性副鼻くう炎はどんな病気でしょうか。
三輪さん: | 副鼻くうの腫れ・炎症が3か月以上続く状態です。急性副鼻くう炎が慢性化したもの(いわゆる「蓄のう症」)と「好酸球性副鼻くう炎」の2つのタイプがあります。 |
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――蓄のう症についてはよく聞きますよね。
三輪さん: | 蓄のう症は、黄色や緑色をした粘りのある鼻が出るのが特徴で、細菌の感染が原因で起こります。 副鼻くうの炎症が長引きますと、粘膜が腫れ、鼻くうと副鼻くうをつなぐ通路が詰まってしまいます。その結果、細菌の混じった鼻水が副鼻くうから出にくくなってしまい、常に感染が副鼻くうに持続する。これが蓄のう症であります。 |
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――蓄のう症はどう治療するのですか。
三輪さん: | 自然に治らない場合は、耳鼻咽喉科で鼻くうや副鼻くうを洗浄することがあります。そしてそのあと、霧状にした抗菌薬などを鼻から吸い込むことで副鼻くうの腫れや炎症を抑えます。それとあわせて、のみ薬の抗菌薬や、たんをやわらかくする薬を使うこともあります。 |
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――もう1つのタイプ、好酸球性副鼻くう炎は、どんな病気でしょうか。
三輪さん: | 白血球の一種の好酸球が反応して副鼻くうに集まり、そして炎症も引き起こすものであります。そしてその結果、ポリープと呼ばれる、ぶよぶよしたキノコのようなものが鼻の中にできて、鼻が詰まったりにおいがしなくなったりします。 好酸球性副鼻くう炎は大変再発しやすい病気で、2017年に難病に指定されています。 |
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――好酸球性副鼻くう炎は、どういう症状が出るのでしょうか。
三輪さん: | 黄色くのりのような粘りけが非常に強い鼻水、鼻詰まりが特徴です。さらに、においを感じる場所に近いところで起きやすいので、早い時期から嗅覚障害を起こしやすいといわれております。 |
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――こちらはどう治療をするのですか。
三輪さん: | ステロイド薬を使って治療しております。ステロイドには炎症を抑える効果があるほか、鼻の中にあるポリープを鎮めるといった効果も期待できます。 ただし、炎症によってポリープがたくさんできている場合は、内視鏡手術でポリープを取り除きます。手術を行っても再発することもあるのが、この病気のやっかいなところであります。 |
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――手術をしても、また再発となるとつらいです。
副鼻くう炎の予防のために、日常生活ではどんなことに気を付ければいいでしょうか。
三輪さん: | 鼻水にはウイルスや細菌などが多く含まれておりますので、鼻水がたまると症状が悪化するおそれがあります。したがいまして、鼻の中を洗浄・鼻うがいで清潔に保つことが、慢性副鼻くう炎の予防・再発の予防につながると考えております。 鼻洗浄・鼻うがいをする場合は、市販の鼻洗浄用のポンプを使うとよいでしょう。 |
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――私も鼻洗浄・鼻うがい、やっているのですけれど、一方の鼻から洗浄液を入れて反対側から出す方法ですよね。実際にやってみるとそれほど痛くはないですよね。
三輪さん: | 水道水やプールの水が鼻に入って痛いのは、人間の体液と鼻に入った水の塩分濃度が違うことで痛みが出るのです。鼻の洗浄液は体液に近い成分でできていて同じ塩分濃度でありますので、鼻がツーンと痛くなることはありません。 |
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■マイあさ! 健康ライフ「耳鼻科の名医に聞く 気になる症状」シリーズ おわり