「気になる汗の悩み」④ ~夏でも汗をかけない!?~

24/05/02まで

健康ライフ

放送日:2024/04/04

#医療・健康#カラダのハナシ

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【出演者】
藤本:藤本智子さん(池袋西口ふくろう皮膚科クリニック 院長)
聞き手:星川幸 キャスター

汗をかけないのは何が原因?

――汗の病気を専門に研究・治療されている、池袋西口ふくろう皮膚科クリニック院長の藤本智子さんに伺います。
今回のテーマは「夏でも汗をかけない!?」です。
夏でも汗をかけない、というのは、ちょっと体にはよくなさそうですね。

藤本:
はい。暑い日や運動したときに汗をかかないというのは、体に何らかの異常が生じている可能性があります。
汗の最も重要な役割は「体温調節」です。汗の水分が皮膚の上で蒸発するときに熱が奪われて、それによって体温を下げてくれます。その体温調節が、ご高齢の方などうまく機能していないと、熱中症になる危険性も高まったりします。特に、近年は猛暑で熱中症になる人も増えていますので、注意が必要です。

――夏や、暑い環境でも汗をかけない、というのは何が原因なんでしょうか。

藤本:
発汗するはずの環境にいても発汗量が少ない場合を「乏汗症(ぼうかんしょう)」、「無汗症(むかんしょう)」とも呼びますが、病気の可能性があります。
汗を分泌する汗腺の異常、交感神経の異常、代謝異常、脳の病気、あるいは病気の治療で使用している薬の副作用など、さまざまな原因で起こる可能性があるんですが、原因不明の場合もあります。大人になってから発症する後天性で、明らかな原因が分からないものについては「特発性後天性全身性無汗症」といって、難病に指定されています。
何らかの原因があって汗がかけなくなっているのか、また、原因不明の難病による無汗症なのか、判別して適切な治療をするためにも、医療機関を受診していただきたいと思います。

難病の無汗症 特発性後天性全身性無汗症

――では今回は、原因不明で起こる、難病の無汗症についてお聞きします。
難病に指定されている無汗症、患者さんは多いんでしょうか。

藤本:
特発性後天性全身性無汗症は、1990年代に報告が上がってきた病気で、当時はまれな病気とされていたんですけれども、実はこの数年間で増加しています。
その理由としまして、難病として認知されてきたことで受診する人が増えてきたこともありますが、コロナ禍で運動が減り、うまく発汗できなくなったことに影響している可能性があるともいわれており、当初考えられていたようなまれな病気ではありません。

――どんな人が多いんでしょうか。

藤本:
原因はいまだ明らかではないのですが、無汗症は、欧米よりも日本で報告が圧倒的に多い状況です。
発症年齢は、2015年のガイドライン作成時に行われた調査によりますと、1歳から69歳までととても幅広く、多いのが10代から30代の方でした。また、男性に多く発症することが分かっています。

――無汗症を発症する人に、何か共通点はあるんでしょうか。

藤本:
実は、もともとたくさん汗をかく職業の人や、運動選手などにも多いんです。例えば、宅配便のドライバーさんや消防士さん、最近ではホットヨガのインストラクターさんなどもいらっしゃいます。

――それまでたくさん汗をかいていたのに、どうして汗が出なくなるんですか。

藤本:
汗腺が働き過ぎて、疲労してしまうことが一因、とも考えられています。
発症の季節は、汗をかく機会が少ない秋から冬なんですけれども、春になって、ちょっと汗をかけない、ということで気付くことが多いようです。

――汗をかけないと熱中症の危険性も高まる、ということでした。無汗症の症状としては、ほかにどんなことがあるんでしょうか。

藤本:
汗がかけないことで全身がほてったり、顔面が赤くなったり、吐き気やめまい、頭痛、動悸(どうき)などが起こりやすくなります。また、皮膚がピリピリ痛んだり、小さな赤いじんましんを合併することも多いです。

――治療法はありますか。

藤本:
「ステロイド・パルス療法」という治療があります。ステロイドを3日間点滴する治療を1~2回、行います。
冬はステロイド治療の反応が悪いため、夏に治療した方が治りやすいことも分かっています。
点滴直後、または数日後から改善が見られ、半数以上の方はこの治療法で治ります。この治療だけで改善しない場合は、飲み薬などを使用します。
ただ、汗をかく機会が減る冬に、また再発する例もあります。

――無汗症の再発、または発症を予防するために、気をつけることはありますか。

藤本:
汗を出す汗腺は、筋トレと同じで、鍛えるのをさぼると衰えます。ウォーキングなど発汗トレーニングで、汗ばむ程度でもいいので、適度な運動を続けましょう。
特に冬は、汗腺が衰えやすいです。冬も含め、一年中上手に汗をかくようにすることが大切です。
無汗症の人でなくても、冬の間に汗腺の働きが鈍ります。うまく汗をかけず、暑くなり始めたころや梅雨の時期に体調を崩しやすくなったり、熱中症にかかりやすくなることがありますので、気をつけてください。

――最後に、今回のポイントをお願いします。

藤本:
梅雨・夏を迎える前に、汗腺を鍛えましょう。


【放送】
2024/04/04 「マイあさ!」

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