【出演者】
松村邦洋さん
堀口茉純さん
川久保秀一さん


2024年4月14日(日)放送の<DJ日本史>、テーマは「平安貴族の人事異動」。上下の序列がびしっと定まった朝廷の貴族にとって、人事異動は最大の関心事。よい官職に就けるかどうかで、自分の人生ばかりか一族の運命も決まったからです。彼らの出世は、何によって決まったのでしょうか?

平安貴族の人事発令は「除目(じもく)」と呼ばれました。前任者の名前を目録から除く、という意味です。
この除目は朝廷で年に2回行われましたが、よい官職を得るために何が求められたか?
重視されたのは家柄と血筋、そして能力でしたが、それ以外の「ある才能」も決め手になったことがあったようです。

ここで取り上げるのは、あの紫式部の父親・藤原為時(ふじわらのためとき)。
さえない下級貴族で官職になかなか恵まれず、貧乏暮らしを余儀なくされていました。そんな藤原為時ですがついに一念発起、「ある才能」を生かして目指す官職を射止めます。
出世の決め手となった、その才能とは?


藤原為時は、朝廷の中でもひっそりと目立たぬ存在でした。
名前こそ「藤原」ですが、数多い藤原一族の中でも傍流、位も高くありません。
しかも人づきあいが大の苦手。天皇臨席の集いに招かれても顔を出さず、あきれられることさえありました。
ですから、目をかけてくれる人もおらず、いくら官職に就きたいと願い出ても聞き届けられません。

そんな希望の見えない日が10年続いた後のこと。
除目のとき、藤原為時は自身の才能にいちるの望みをかけて動きます。
その才能とは、漢詩を詠むこと。為時はやるせない思いを漢詩に込め、天皇に送ったのです。
これは官職を求める上申書に添えたものでしたが、中身はわずか16文字、このようなものでした。

苦学寒夜 紅涙霑襟
除目後朝 蒼天在眼

(苦学の寒夜 紅涙襟をうるおす  除目の後朝 蒼天眼に在り)

苦学し寒い夜も耐えてきたのに官職に就けず、赤い血の涙が服の襟をぬらしている。
しかし除目が見直されて官職に就ければ、青い空が目に焼きつくことだろう。

この詩が、まだ十代半ばの一条天皇の心を動かしました。
すでに決まっていた人事は、急きょ変更。藤原為時は、豊かな越前国の国司になることができました。
このとき越前には中国から商人の一団が訪れていたため、漢文が読める為時が抜てきされたという背景もあったようですが、いずれにせよ漢文の素養が役立ったのは確か。
すでに発令された人事を覆す決め手となったのでした。

光る君へ

日曜日 [総合] 午後8時00分/[BS・BSP4K] 午後6時00分

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DJ日本史「平安貴族の人事異動」②