【出演者】
松村邦洋さん
堀口茉純さん
川久保秀一さん


2023年2月12日(日)放送の<DJ日本史>のテーマは、『歴史の中のパワハラ対処法』。身分制度があり上下関係も厳しかった時代は、主君のかんに障ればとんでもない仕打ちを受けることもありました。そんなとき、当時の人はどうやって上役の難癖やむちゃぶりをかわしたのでしょうか?

言いがかりや難癖をつけてきた殿様に対処した江戸時代の話を見ていきましょう。
その殿様とは江戸時代初期の水戸藩藩主。何代目の誰かは記録に書かれていませんが、困ったところがあったようです。

水戸藩は御三家と呼ばれる将軍家の親戚筋ですが、その殿様は同じく御三家の1つである紀州藩の江戸屋敷に何度も遊びに来ていました。問題はそのときに起きました。
水戸藩の殿様が遊びに来ると紀州藩の家来はそのたびに応対にあたるのですが、それに対して水戸の殿様はいつも言いがかりや難癖をつけたのです。
これに紀州藩の家老は耐えかねて、ついに反撃に出ることにしました。
しかし、相手を怒らせて親戚同士の関係がもつれたら大変。
紀州藩の家老は、どうやって水戸藩の殿様の“パワハラ”に対処したのでしょうか?


水戸藩の殿様が紀州藩の江戸屋敷に遊びに来ると、決まって所望したものがありました。
それは、たばこ。
応対にあたった紀州藩の侍はいつも上質のたばこを準備しておき、差し出していました。
ところが水戸藩の殿様は、苦い顔。

「何じゃ、このたばこは。まずい!」

嫌みは毎度のこと。いくら他のたばこを探して差し出しても、返ってくる言葉は「まずい、まずい!」
これはもう、れっきとした嫌がらせですね。
そこで、困った紀州藩家老の加納五郎左衛門、一計を案じました。

ある日、いつものように屋敷にやって来た水戸の殿様。
加納五郎左衛門が差し出したたばこを一服するや、いつもの嫌がらせが始まりました。

「何じゃ、このまずいたばこは」

すると加納五郎左衛門、水戸の殿様にこう切り出したのです。

「恐れながら申し上げます。このたばこは、殿がいつも吸われているたばこでございます」

実は加納五郎左衛門、お供でついてきた水戸の殿様の家来に声をかけ、殿様ご愛用のたばこをゆずり受けていたのです。
さらに五郎左衛門、その家来にこんな書付も書いてもらいました。
「このたばこは、水戸様ご愛用のたばこに相違ない」

さすがに、返す言葉が見つからない水戸の殿様。
以降、嫌みを言うことはなくなった、ということです。

DJ日本史「歴史の中のパワハラ対処法」②