平井は練習中、決して選手達から目を離さず、その日の泳ぎをチェックしている。
自分が今、どういうフォームで泳いでいるかなど、当然選手には分からない。平井の目だけが頼りなのだ。脳裏には、それぞれの選手のベストなフォームが焼き付いている。そして、その理想のフォームに比べ、どこがどう崩れているかを瞬時にはじき出すことが出来る目を平井は持っているのだ。
そして、それを修正するときも、平井は最短距離を走る。心がけるのは、「ワンポイントで伝える」こと。選手は一度に、多くのことを気にかけて泳ぐことなど出来ない。指示を出しすぎると、余計泳ぎが崩れてしまう。その選手の性格も考え、最適な一言を選んで、指示を送る。