スポーツ

2023年12月18日 (月)

全国高校駅伝 取材記 佐久長聖男子(長野)~去年2位の悔しさを胸に~

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今大会、男子の優勝候補の一つが長野の佐久長聖高校。
取材に訪れた日、佐久の朝の気温は1度。厚い雲に覆われた厳しい寒さの中で、練習が始まりました。

日本高校最高記録樹立と2位の悔しさ

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佐久長聖高校は、去年、日本高校最高記録(=日本選手のみによる最高記録)の奪還を目標にかかげ、見事に2時間1分57秒のタイムでたすきを繋ぎ、日本高校最高記録を2秒更新。
しかし留学生を擁する倉敷に敗れ順位は2位、目標達成の充実感と優勝を逃した悔しさを味わいました。

昨年のリベンジを!

去年、4区を走った山口竣平選手は、その悔しさを強く感じている1人です。

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 去年は、前を走る倉敷高校と15秒差の2位でたすきをもらいましたが、山口選手の区間で29秒差に広げられてしまいました。

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【山口竣平選手】

「去年は、自分の区間で差を広げられ2位が決まってしまったという思いがあります。
ことしはどの区間を任されても、区間上位でたすきを渡すという思いでやっていきたいですが、出来ればもう一度4区を走って、去年のリベンジをしたいと思っています」

山口選手は、この悔しさを胸にこの1年練習に取り組み、5000mの自己ベストをチームで最も速い13分34秒まで伸ばしました。
ことしのレースの鍵を握る存在です。

兄の背中を追って

もう1人、ことしの大会に強い思いを持って臨む選手がいます。3年生の吉岡斗真選手です。

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吉岡選手の兄は、去年、佐久長聖の3区で、22分51秒という日本選手の最高記録を出した吉岡大翔選手です。

弟の斗真選手は、去年10人の登録メンバーには入りましたが、全国大会では出番がなく、兄・大翔選手のサポートにまわりました。
弟を自分のサポート役に選んだのは、兄の大翔選手です。
斗真選手は、レースに挑む兄の姿を間近で見て大きな刺激を受けました。

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【吉岡斗真選手】

「兄は、自分の憧れの人、目指すべき選手です。
去年は、最後の都大路にかける兄の思いを間近で感じました。
兄は、その姿を自分に見せたかったのかなと思います。
ことしは、自分が最後の都大路なので、去年の兄と同じような気持ちで戦いたいと思います」

吉岡斗真選手は、11月末の記録会で5000m13分55秒を出し自己ベストを更新。
メンバー入りに向けて大きくアピールしました。

故障を乗り越え、エースの走りを

そして6年ぶりの優勝を狙うことしの佐久長聖を引っ張るのは、主将の永原颯磨選手です。

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夏の高校総体では、3000m障害で8分32秒12のタイムで優勝。
現在、この種目の日本記録保持者の三浦龍司選手(順天堂大学)が持つ、高校記録を塗り替えました。

11月末には、日本陸連が国際大会での活躍が期待できる次世代の競技者を強化育成するプログラム「ダイヤモンドアスリート」に認定されました。

長野県駅伝、北信越駅伝は、故障のため出場出来ませんでしたが、現在は練習も再開し、本番に向けて調整を進めています。

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【永原颯磨選手】

「故障中は、走れない情けなさ、自分だけ走れなくてまずいなという気持ちもありました。

都大路は絶対に走るんだという気持ちに切り替えて、ケアや治療をしっかりやってきて今は全く問題なく、調子も上がってきています」

 

13年目を迎える名コンビ

佐久長聖を指導するのは、高見澤勝監督市村一訓コーチです。

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(左:市村一訓コーチ 右:高見澤勝監督)

高見澤監督が前任の両角速監督からチームを引き継いだのが2011年。
この年、市村コーチが就任し、2人でタッグを組んでの指導がスタートしました。

2人は、ともに佐久長聖高校のOBで、高見澤監督が3年生の時に、市村コーチが1年生という間柄です。

2人が指導を始めた2011年は全国で21位、6年連続入賞もストップという苦い船出でした。
そこから2017年に日本一に返り咲き、ことしはその年以来の頂点を目指します。
ことしは、登録メンバー10人の内、5000m13分台の自己ベストを持つ選手が6人。
高校生ランナーにとって、5000mで14分を切るというのが大きな目標とされる中で、6人が13分台という驚異的な高速チームを作り上げました。

【高見澤勝監督】

「ことしのチームは、過去のチームと比較しても一番強いチームではないかと思っています。
去年の倉敷高校が出した高校記録を超えていかないと勝てないと思いますが、選手たちにはあまり優勝を意識せずに、応援して下さる方々が喜んでいただけるレースをしようと伝えています」

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取材を終えるころには、空を覆っていた雲も取れ、美しい浅間山の稜線が姿を見せました。

去年の悔しさを力に変え、佐久長聖の選手たちが6年ぶりの頂点を目指します。

 

(取材:三瓶宏志アナウンサー)

 

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