かんさい深掘り

2022年03月11日 (金)

ウクライナに残る両親 日本在住の娘 いまの思いは

22031103.jpg日ごとに激しさを増すロシアによるウクライナへの軍事侵攻。

関西の大学で助教として働くウクライナ出身の花村カテリーナさんは、両親がいまも首都・キエフに残っています。

花村さんは、両親の身の安全に不安を感じながら、日本の人たちに向けて「平和や自由の大切さを自分なりの方法で声を上げ続けることが、ウクライナにとっても助けになる」と訴えています。 

(奈良局 平塚竜河記者)
(大阪局 小林あかりディレクター)

日ごとに不安定になるウクライナ

22031102.jpg

ウクライナの首都・キエフ出身の花村カテリーナさん。

1991年にソビエトが崩壊した際、5歳だった花村さんは、祖父母やいとことともに日本に逃れてきました。

その後、一時、ウクライナに戻りましたが、19歳の時に再び、留学生として来日。

臨床心理士の資格を取った花村さんは現在、兵庫県にある関西看護医療大学で心理学を教える助教として働いています。

ロシアが軍事侵攻を始めてから日ごとに激しさを増す中、花村さんの両親や祖父母はいまも、キエフに残っています。

22031105.jpg

毎日、両親と連絡を取り合っていますが、日ごとに現地の不安定さが増しているように感じているといいます。

(花村さん)
 侵攻が始まった2月24日以降、毎日、連絡は取れていますが、サイレンが鳴ったら、地下のシェルターに逃げているみたいです。
この3日間は特に攻撃が激しいらしく母も父も夜はシェルターにいるようです。少しずつ音には慣れてきていたみたいですが、それでもとても怖かったと言っていました。
最初は元気そうに振る舞っていた両親も、母は今では涙を流し、父も心配するなといいますが、かなり表情がこわばっていて、あまり眠れていない様子がうかがえます。
スーパーにも卵と牛乳しか売っていない状態で、買うのにも何時間も並ぶと。
電波もとても不安定になっていて、きのうもなかなか連絡がとれず、本当に心配しました。

 

自分が自分であるために避難をしない選択

花村さんは両親と連絡を取る中で、何度もウクライナから避難することを勧めてきたといいます。

しかし、両親の意志は固く、ふるさとを捨てることは自分を捨ててしまうことと同じだと、ウクライナに残る決断をしました。

22031101.jpg

(花村カテリーナさん)

病気などの理由で長時間の移動に耐えられず、避難しない人がいると聞きます。でも、両親の場合はキエフにいることが自分を保つことに必要不可欠で、自分が自分であるために残っているんだと思います。
年を取っているから新しい場所に行く不安もあるのだと思いますが、キエフには思い出があふれていますし、自分を形作るものがキエフにはあるので、それを置いて逃げるのは命は助かるが、自分を捨てることになると話しているんです。

花村さんは、ウクライナ人には両親と同じように思う人が多いのではないかと感じているといいます。

(花村さん)
ウクライナ人であることに誇りを持っている人は多いです。長い歴史の中でいろいろな国から攻められ、自分たちの国や文化を守ってきた中でアイデンティティーが形成されているので、国を捨てる選択ができない人が多いのではと思います。

花村さんは、こうした事情を踏まえ、娘として両親の考えを尊重し、その上で、何ができるのか考えていきたいと話しています。

 

それでもやはり複雑な思い

ロシア軍がキエフに近づく中で、花村さんは数日前に父が話した言葉に複雑な思いを抱いていました。

22031106.jpg

(花村さん)
実はおととい、父と話した時に『死ぬときが死ぬときだから。人はいつか死ぬんだから、あまり心を痛めないで欲しい』と言っていたんです。なかなかコロナで帰れない時期が続いていて、まさかコロナ前に会ったのが最後にならないようにと祈るばかりです。

どうか助かってほしい。

血が流れる事態が一刻も早く収まってほしい、止まってほしいのが一番の願いです。

 

平和のために声を上げ続けて欲しい

この2週間、周りの人から、ウクライナの状況を案じる声をかけられることが増えたという花村さん。

22031107.jpg

多くの人が平和のために声を上げることは大きな助けになるといいます。

22031103.jpg

(花村カテリーナさん)

自分にできることはないと言う人もいますが、それは違います。ウクライナのために寄付や話し合いをしてくれる人もたくさんいて、感謝していますが、それをしないと助けにならないというわけでは決してないです。
知って欲しいのは、平和や自由、尊厳のために自分なりの方法で声を上げ続けることの大切さです。それがウクライナにとっても世界にとってもすごく助けになりますし、感謝という言葉ではおさまりきらないです。