１７試合でわずか１勝だった阪神に、復帰後初登板で勝利をもたらした青柳晃洋投手。
昨シーズンの好成績に満足せず、“進化”を求め続けた姿勢がチームを救いました。

【昨シーズンは投手２冠】

下手気味のサイドスローから独特な軌道を描くボールで打たせて取るピッチングが持ち味の青柳投手。
先発ローテーションに定着して３年目となった昨シーズンは、１３勝６敗の好成績を残し、自身初のタイトルとなる最多勝と最高勝率を獲得。
東京オリンピックの日本代表にも選ばれるなど、飛躍のシーズンとなりました。

【投球の幅を広げる】

さらなる“進化”を求めて、青柳投手がキャンプから取り組んできたのが投球の幅を広げることでした。
もともとは右バッターのインコースに食い込む１４０キロ台のツーシームと、大きく曲がるスライダーを中心に配球を組み立ててきました。
しかし、昨シーズンの好成績を受けて相手の対策も進むことを見越して、これまで公式戦であまり投げてこなかったカーブやカットボールなどを重点的に練習。
オープン戦では得意のツーシームとスライダーをあえて封印して、キャンプで磨いた球種を試すなど、徹底して変化を求めてきました。

（青柳投手）
「僕の中でいいボールと言えばツーシームとスライダーで、困ったらそれに頼ってきたが、そういうイメージを崩していけたらいい。去年のままでは勝てないと思うので、変わりたくていろいろな挑戦をしている」

【新球種でピンチをしのぐ】

迎えた４月１５日の今シーズン初先発。
開幕投手に指名されながら新型コロナの感染で出遅れ、チームも１７試合でわずか１勝という苦しい状況での登板になりました。
それでも「チームの空気を変える」と、５回まで１点に抑える粘りのピッチング。
不振が続いていた打線も２点を奪って逆転に成功しました。
そして、この試合のポイントとなったのは６回のピッチングでした。
青柳投手は２本のヒットを打たれて同点のピンチを招き、迎えたのが巨人の４番・坂本勇人選手でした。

「去年まであまり打たれていなかった」という相手に、この試合の２打席ではいずれもツーシームを捉えられ、ヒットを打たれていました。
試合を左右するこの場面で、青柳投手が２球目で投じたのが、得意球のツーシームやスライダーではなく、キャンプから磨いてきたカーブでした。
この試合で初めて投げたカーブでタイミングを外し、坂本選手を浅いセンターフライに打ち取りました。

（青柳投手）
「坂本選手にきれいに打たれていたので、『何かを変えなきゃな』ということでカーブを使った。新型コロナからいち早く復帰してチームの流れを変えるピッチングをしたいと思っていた」

後続も抑えた青柳投手は８回１失点と好投。
“進化”を遂げた投球スタイルで貴重な１勝をチームにもらたしました。

この翌日もチームは勝利し、今シーズン初の２連勝。
先発の柱である青柳投手の復帰をきっかけに、阪神が苦境を抜け出せるか注目です。

（虎番記者：足立隆門）

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