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東京電力・柏崎刈羽原発 ”運転禁止命令”が解除

再稼働めぐる手続き再開へ 焦点は地元同意
  • 2023年12月28日

 

テロ対策上の問題が相次ぎ、2021年に事実上運転を禁止する命令が出されていた柏崎刈羽原子力発電所について、原子力規制委員会は27日、自律的な改善が見込める状態であることが確認できたとして、命令を解除しました。今後、再稼働をめぐる手続きが再開されることになり、地元の同意が焦点となります。これまでの動きと今後の見通しをまとめました。
(新潟放送局 取材班)

”自律的な改善見込める” 2年8か月ぶり命令解除

東京電力 柏崎刈羽原子力発電所

柏崎刈羽原発ではおととし、他人のIDカードを使った中央制御室への不正入室や、外部からの侵入を検知する複数の設備の故障といったテロ対策上の重大な問題が相次いで見つかり、原子力規制委員会は東京電力に対し、事実上運転を禁止する命令を出しました。

一般の原発を運営する電力会社に、運転を禁止する命令が出されたのは初めてでした。

その後、事務局の原子力規制庁が東京電力による再発防止の取り組みなどを検査してきた結果、12月、提出された報告書案では「自律的に改善できる仕組みが定着しつつある」と評価され、これを受けて規制委員会は現地調査や東京電力の社長との面談を行い改善状況を確認してきました。

27日開かれた会合で規制委員会は報告書案を了承し、自律的な改善が見込める状態であることが確認できたとして命令を解除することを全会一致で決めました。このあと規制庁の担当者が東京電力の幹部を呼んで決定を通知し、命令は正式に解除されました。命令の解除は2年8か月ぶりです。

規制委員会の山中委員長は次のように述べました。

山中委員長
慎重の上に慎重を重ねて十分時間をかけて検査してきました。検査結果は適切なものだったと考えている。福島第一原発事故の教訓を踏まえると継続的に安全性、セキュリティの向上を図っていくのは事業者の責任なので、お墨付きを与えたつもりはない。ゼロからのスタートでこれからも改善していってほしい。

また命令の解除を受け、東京電力の小早川社長は。

小早川社長
あくまでスタートラインに戻ったに過ぎないということを肝に銘じ、安全性や核物質防護の改善に引き続き努めてまいります。これまでの行政処分が解除されたということで(再稼働に関する)プロセスはこれからになると考えている。安全対策に加えて地元からのご信頼・ご理解というのが不可欠、ベースになると考えているので、そこについてはしっかりと、発電所の改善の姿を私も先頭に立ってお伝えしていく。

新潟県民の反応は

地元・新潟県内ではさまざまな声が聞かれました。
新潟市では原発の安全性やエネルギー面に関する声が。

事故が起きた場合の人間に対する危険が非常に心配。

安全面は不安なところがあるがほかでも稼働しているのだからどうしようもないのでは。日本のエネルギー事情を考えれば。

やっぱり原発があることで街にとってプラスになっている部分がないわけではない。県と言っても新潟市と柏崎市では温度差があると思うし難しい。

原発で作る電力のほぼすべてが首都圏で消費されることに、不満の声も。

新潟を越えて関東の方に供給すること自体が(不満)。なぜ新潟が危険を負わないといけないのか。

原発が立地する柏崎市では。

去年みたいな大雪になった場合逃げられますか。それが一番(不安)です。

中小企業など電力を大量に使うところは大きいと思う。柏崎市は経済が落ち込んでいるんでしょ。経営的によくなるメリットは大きいと思う。

原発をめぐり複雑な思いを抱く地元の人もいます。
柏崎市内の飲食店で60年以上働いてきた渡部徹さんです。 

原発が次々に建設されていたおよそ30年前、市内は活気に満ちていたといいます。

渡部さん
すごかったですね。活気がありましたよ。原発が稼働していたときはね、本当にすごかったですよ。いまはダメです、本当に死んでます、寂しいくらい。

当時、渡部さんの飲食店も連日、多くの人でにぎわっていたといいます。

渡部さん
客は来るしさ、クラブやって寿司の店をやったでしょ。毎日のように満員だもん。それがなくなっちゃったからね。柏崎が活気づくには(原発が)必要だったですね。

しかし12年前の原発事故を目の当たりにし、原発が近くにあることに不安を感じるようになりました。

渡部さん
現実に福島(の事故)があったから、柏崎もおっかないなと思った。いつこうなるかわからないからね(原発が)ある以上は。絶対に大丈夫とは限らない。

ただ、地元のためには再稼働は必要ではないかと感じています。

渡部さん
根本的には反対だった、事故があった場合のことを考えると。柏崎は原発でもっていたから。稼働していれば、お客さんも来るしね。柏崎のためにもいい。

今後の焦点は地元の同意

原子力発電所について、地元の受け止めは複雑で一概に賛成、反対と言い切ることはできない、そうした胸の内を感じます。県内でも原発に近い地域とそうでない地域とで感じ方には温度差もあります。
命令を解除した原子力規制委員会自身も引き続き改善措置の推進を求める立場で、県民のなかにも東京電力が本当に変わったのかどうか見極めたいという人は少なくないと思います。

そして再稼働の前には、地元の合意形成という極めて重要なプロセスがあります。

東京電力は柏崎刈羽原発が立地する新潟県と柏崎市、それに刈羽村に再稼働への理解を求めるとみられ県などは同意するかどうか判断することになります。

新潟県の花角知事は再稼働について議論を進め、公聴会などで意見を聞いたうえで最終的に県民の意思を確認する方針です。

議論を進める材料として花角知事が挙げている項目です。

▼まず県が行った福島第一原発の事故に関する、いわゆる「3つの検証」の結果。これはことし9月に県がとりまとめを終えています。▼そして27日に結論が出た原子力規制委員会の追加検査の結果。▼さらに、これから結論が出されるのが、県が設置した技術委員会での柏崎刈羽原発の安全対策の確認と▼原発で重大な事故が起きた際の避難をめぐる国などの対応。

このほかにも▼原発が立地していることによる県全体の経済効果の試算も議論の材料にする考えです。
このうち経済効果の試算は年度内に終える予定で、そのほかについてもまとまりしだい県民に説明する方針です。

花角知事 再稼働について判断示し「信を問う」

花角知事は最終的に県民の意思を確認する方針で、その方法について「信を問う」としてきました。

この点について知事は27日の会見で次のように述べて、知事選挙も選択肢の1つとして県民の意思を確認する考えを改めて強調しました。

花角知事
「信を問う」ということばの持つ意味は字義通りではいろんなことが考えられるが、普通の感覚では存在をかけるというような意味合いが強いんじゃないですかねと申し上げたことがあると思う。存在をかけるというのはいろんなやり方があると思う。選挙(という選択肢)も、もちろんあると思う。

再稼働にあたって国は安全性の確保を前提に進めるとしていますが、事故が起きた福島では復興は道半ばで、ひとたび大きな事故が起きればその影響は甚大です。

27日の命令解除を受けて県内では今後、再稼働をめぐる議論が本格化します。県の技術委員会などで交わされる原発の安全対策の確認や避難についての議論を踏まえ、花角知事がどのような判断を示すのかが大きな焦点になります。

  • 阿部智己

    新潟放送局 記者

    阿部智己

    2008年入局 福井局 札幌局 報道局科学文化部を経て新潟局に赴任。原子力取材などを担当

  • 伊藤 奨

    新潟放送局 記者

    伊藤 奨

    2016年入局。福井局、仙台局を経て2023年から新潟局。長岡支局で原発や中越地震からの復興などを取材。

  • 豊田光司

    新潟放送局 記者

    豊田光司

    2017年入局。大阪局を経て2020年から新潟局に。スポーツや文化などを担当。私も一緒に羽ばたきたい。

  • 草野大貴

    新潟放送局 記者

    草野大貴

    徳島局から2022年8月に新潟局に赴任。現在は県政を担当。この取材で初めてゴルフ場へ。同行のカメラマンからゴルフを始めるよう勧められ、いま迷っている。

  • 油布彩那

    新潟放送局 記者

    油布彩那

    2019年入局
    新潟生活5年目。
    行政や拉致問題の取材を担当。

  • 野尻陽菜

    新潟放送局 記者

    野尻陽菜

    2020年入局。2022年8月より長岡支局。柏崎市の満蒙開拓団の歴史など、戦争や原子力発電所などをテーマに取材。

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