「トキ点描」命育む鳥 ―夏―
- 2023年08月15日
トキの写真集は コチラ
「幼鳥の巣立ち数が減少」
忙しかった春の田植えが終わり、トキの撮影で一番楽しい季節が6月から7月にかけての巣立ちのシーズンです。
毎年この時期になると、ことし生まれた幼鳥たちが次々と営巣林から巣立ち、田んぼのあぜや止まり木で愛らしい姿を見せてくれます。
しかし今年は、天敵の「テン」による捕食などの影響のためか、繁殖が次々と中止となり、私が日々撮影している地域でも巣立ちした幼鳥は3羽だけでした。
環境省が6月に発表した繁殖結果の実測データによりますと、今年は過去最高となる115ペアが営巣を行ったにもかかわらず、幼鳥の巣立ちに成功したのはわずか16ペアで、巣立ちした幼鳥の数も昨年より17羽少ない34羽にとどまりました。
繁殖結果には様々な要因が影響しており、ただいま鋭意、取材中です。
詳しくはNHK総合で秋に放送予定の自然番組「ダーウィンが来た!」の中でご紹介する予定です。
もうしばらくお待ちください。
「夏のトキたち」
ことしの夏は農作業にも影響が出るほどの猛暑が続きましたが、トキたちは暑さの中でどんな生活をしていると思いますか?
夏場はエサが豊富なため、早朝の短時間で満腹となったトキは暑い日中は、ねぐらなどの木陰で休んでいることが多いのです。
トキは人間のように汗をかいての体温調整ができません。
そのため体温を下げるためくちばしを半開きにし、のどを大きく動かすことで体温調整を行っています。
ちょうど犬が暑い日に「ハアハア」息をしているような感じです。
「トキの恩返し」
佐渡の水田では月に一度、草刈りを行います。
夏場の草刈りは暑くてつらい作業ですが、きれいに刈られたあぜの上は、トキや里山の生きものたちにとって大切なエサ場になっています。
そのあぜを歩いていると、トキからのプレゼントに出会うことがあります。
それは抜け落ちたトキの羽です。
トキは繁殖期が近づく1月中旬ごろから、首周辺の皮膚から剥がれ落ちる黒い物質を自らの羽にこすりつけ、せっかくの美しい羽を灰色に変化させます。
この羽が夏になると徐々に抜け替わり、まるで草刈りへのお礼のように、あぜに羽を落としていきます。
すべての羽が抜け替わるのは9月中旬頃ですが、朝夕の草刈りでは涼やかな風が吹き抜け、猛暑の中にも秋の足音が聞こえるようになりました。
トキの羽が最も美しく見える季節はもうそこまできています。