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「トキ点描」命育む鳥 ―春―

大山文兄
  • 2023年05月22日

写真集はこちら → https://www.nhk.or.jp/niigata/toki/?cid=orjp-ala150

春のおとずれ
新潟県佐渡市の国仲平野では4月下旬から6月にかけて田植えが行われます。
ことしの冬は雪が多かったこともあり、春の訪れは例年以上に待ち遠しいものでした。

田起こし前の田んぼを真っ白に彩るタネツケバナとトキ

春を待ち望んでいるのは人間だけではありません。
田んぼのあぜにはカエルやカナヘビなどの生きものたちが姿をあらわし、草花が子孫を残そうと一斉に芽吹き開花します。

初々しい苗の葉先がまぶしいです

そして春は1年の中でトキの姿を見つけだすことが最も難しい季節でもあります。 

春から初夏は繁殖期
佐渡島には現在、500羽以上のトキが生息(2022年10月現在)しています。
春から初夏にかけては繁殖期のため、多くのトキたちは営巣林内の巣で、抱卵や子育てを行っています。
雄雌が卵を交代で温め、その合間にエサを食べ、巣の補修を行う忙しい毎日です。

巣材を持ち帰るトキですが、アフロヘアの様です

そのため単独での行動がほとんどで、灰色の生殖羽に変化したトキは見つけ出すのも一苦労です。 

春の花々とトキ
そんな難しい春の撮影ですが、佐渡に移住した3年前からトキと春の花々を一枚の写真に収めています。
相手は生きものですから思うような場所にとどまってくれません。
トキはサクラや桃の木などにはなかなか止まらないため、一枚に収めるためには飛行ルートでの張り込みしかありません。
行動を予想しその日の天候やさまざまな偶然が重なって撮影できた「トキとサクラ」の1枚は、2度と撮影することの出来ないお気に入りです。 

桜とコブシの花をバックにしたお気に入りです
藤の花とトキ

佐渡と自然
あでやかな花だけでなく、雑草と呼ばれるあぜの花々も重要な脇役です。
佐渡島のほとんどの水田のあぜでは除草剤が使われていません。
そのためあぜが青々とし、生きものたちの生息地やエサ場にもなっています。

あぜは大切な餌場です

草刈りはもちろん大変ですが、農家の方々の協力や苦労がなければこの景観とトキのエサ場を維持していくことは出来ません。 

トキは農作業の人たちや車両を見分けているそうです

トキの繁殖期も終盤にさしかかっていますが、私が観察を続けてきた2つの巣は、残念ながら天敵の「テン」にひなが食べられてしまいました。
飼育下とは違い、自然界の厳しさを毎年かみしめていますが、まだまだ抱卵中のトキたちもいます。ことしは何羽の幼鳥が無事に巣立ってくれるでしょうか。

桃の花ではなく、ピンク色の桜です
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