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人口世界一インド出身経営者 新潟の米菓メーカーで手腕発揮

ジュネジャ・レカ・ラジュ会長
  • 2023年07月28日

国際機関のことしの推計で人口が世界で最も多くなったインド。世界的な企業では、そのインド出身の経営者が次々に生まれ存在感を高めています。実はここ新潟の米菓メーカーにも手腕を発揮するインド出身の経営者がいます。米菓の国内消費が伸び悩むなか世界を相手にした「グローバル企業」への転換を目指す姿を取材しました。(新潟放送局記者 米田亘)

放送した動画はこちら

日本生活約40年の「日本通」

新潟発の日本の伝統的な米菓を世界80億人に届けたい。

新潟の米菓大手のトップ、ジュネジャ・レカ・ラジュ会長です。

インドの大学で「発酵学」を学んだあと1984年、研究をリードしていた日本に留学。

その後、日本の食品メーカーでの食品開発や大手製薬会社の経営に携わったジュネジャさん。グローバル化を目指す前会長の目に止まり2022年6月に会長に就任しました。

昨期の海外事業の売り上げは前期比で1.5倍に増加。手腕を発揮しています。

アメリカ出身の社員 
アメリカでは亀田製菓はまだあまり知られていませんが、商品には大きなビジネスの可能性があると思います。

インド出身の社員 
インドにもアメリカにも米菓は確かにあります。ですが、私たちはその概念を変えようと思っています。

ジュネジャ会長
CEOと思わず友だちだと思ってどんなことでも相談してください。

社員食堂でひじきの煮物や焼き鮭を食べる会長

日本に暮らしておよそ40年になるジュネジャ会長。

ジュネジャ会長
会社でも家でも7~8割は和食ですね。カレーも嫌いじゃないですけど。

日々多忙なジュネジャさん。社員と積極的にコミュニケーションを取り必要な心構えを伝えようとしています。

ジュネジャ会長
本当に学ぶことがたくさんあると思いますし、先輩たちから学ぶことも大切ですし。でも指示待ちの人間になってほしくないんですよ。せっかくいろんなものを学んできている。大学もそうですし。だから自分のカラーを出して。

社員の男性
非常に気さくで、フレンドリーで。ユーモアにあふれる方だと感じています。

社員の女性
とても話しかけやすい雰囲気があって、距離が身近なところが良いところ。

ジュネジャ会長
作ることも売ることも、世界に出ることもみんな社員。社員が考えて、社員が動かなければ何も出来ない。できるだけ距離を短くしてもっとコミュニケーションをとらないといけない。

会社の特色を出した海外戦略

海外展開を目指すジュネジャ会長。その背景には米菓業界を取り巻く現状があります。

総務省の家計調査によれば2人以上の世帯が去年1年間に「せんべい」にかけた金額は平均して5948円と、過去20年ほどほぼ横ばいの状態が続いています。
さらに購買層は国内の中高年が中心とみられ、いかに新たな顧客をつかむかが課題になっています。

そこでジュネジャ会長がまず取り組んだのが独自に開発した商品の「輸出」です。

こちらは世界で初めて会社が商品化した「コメ由来の乳酸菌」です。会社では、長年の研究によって腸を整える作用や肌のうるおいを維持する効果が確認できたとしています。

これまでは健康食品の原料向けに食品メーカーなどに乳酸菌の販売をしていましたが、取り引き先はほぼ国内のみでした。

そこで会長は2022年、アイルランドの食品メーカーとの間でこの乳酸菌の販売に関する契約を締結。新たな事業の柱に育てようとしています。

ジュネジャ会長
せっかくすばらしい機能性がある菌を持っているので、日本だけではもったいないと思っています。だから世界中の人に届けたい。

一方、メインとなる食品開発の分野でも海外進出を強化します。

いま環境問題や健康志向の高まりを背景に世界で注目されているのが、大豆など植物由来の食品「プラントベースドフード」、いわゆる「代替肉」です。

今後は大豆ではなくコメを使うことで、アレルギー源がなく多様な文化や宗教にも配慮した商品を開発し、新たな市場を開拓したいと考えています。

ジュネジャ会長
お肉を食べる国がプラントベースドフードを食べる。とくに若いビーガン(動物由来の食品を避ける人)がものすごく増えている。特に女性。こういう事業は絶対将来的に大きくなる。

さらに世界に受け入れられる商品開発を加速させるため、2023年7月に専門の部署を新設しました。

集まったのは海外での駐在経験のある開発や設備部門の社員たち。

「(米菓の)食感は特有なものがあって(海外に)受け入れられると思っている」
「アメリカにはいろんな人がいるから。健康に食べたい人もいるし別に気にしない人もいる」
「でも可能性はある?」
「可能性はあると思う」
「アメリカンシナモンテイストなんてありかも」

この部署では、今後3年以内に新商品を海外でテスト販売することにしています。

ジュネジャ会長
コメの力はみんなまだ分かっていないんですね。ただご飯を食べるだけではなくていろんな食感を作って、いろんな形を作って、それが日本らしい商品になる。日本人ってやっぱり器用ですね。

会社を「グローバルな食品メーカー」に生まれ変わらせようと意気込むジュネジャ会長。

今後も海外展開を強化し、国内米菓以外の売り上げ比率を現在の30%から、2030年には50%ほどに
引き上げる計画だということで、会長は世界で成功するためにインドと日本、2つの国の特徴を組み合わせることがカギになると言います。

ジュネジャ会長
戦略を作るとか前に進めていくことはインドの方は非常にアグレッシブですけど、ものをきちんと最後まで完成させることは日本人がすごいですね。ちょっとリスクはあると思うんですけど、アグレッシブに仕組みを作って(日本企業も)世界に出るべき。自分の経験は強み弱み両方あると思うんですけど、よいところを生かして世界で唯一無二のグローバルフードカンパニーになりたい。少しでも役に立ちたいなと思います。

  • 米田亘

    新潟放送局 記者

    米田亘

    平成28年入局。札幌放送局、釧路放送局を経て、新潟放送局3年目。一次産業を中心とした経済取材を担当。

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