ライフセーバーが足りない! 新潟 柏崎で担い手増やす試み
- 2023年07月09日
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まもなく本格的な海水浴シーズンが到来します。海水浴を安全に楽しむために重要なのが海水浴場の監視員です。黄色と赤色の服を着たライフセーバーの人たちの仕事というイメージがあると思いますが、実はライフセーバーは慢性的な人手不足に悩まされています。その担い手を増やそうという県内の動きを取材しました。(新潟放送局 記者 猪飼蒼梧)
ライフセーバー 実は全国で担い手不足
こちらは日本全国の海水浴場のうちライフセーバーがいる海水浴場の割合です。1028か所ある海水浴場のうち239か所、率にして23%となっています。新潟県内の自治体に取材したところライフセーバーのいない海水浴場では警備会社に委託したり、地元のサーファーの人たちが救命に関する講習を受けたりと対応は様々です。
県内にも62の海水浴場がありますが、県内にあるクラブによりますとライフセーバーがいるのはおよそ10か所にとどまります。
新潟・柏崎でライフセーバーの資格講習
こうしたなか2023年6月、柏崎市の海水浴場で地元のライフセーバーのクラブによる講習会が開かれました。このクラブには毎年、地元の大学のライフセービング部の部員たちが参加し海水浴場の安全を守ってきました。
しかしここ数年は少子化による学生数の減少や新型コロナウイルスの影響で部活動が自粛されたことなどから、学生のメンバーが減っています。
講師を務めるのは池谷薫さん。20年以上前にこのクラブを設立し、活動を続けてきました。
柏崎ライフセービングクラブ 池谷薫さん
ライフセービングの資格を取る人の大多数が大学生や専門学校生なんですが、新型コロナウイルスの影響もあって活動が自粛となり、勧誘もできないような状況にありましたのでコロナ禍において壊滅的な状態にありました。コロナ禍の3年間を振り返るとOB(社会人)の方々の支えがあってなんとか夏を乗り切っていました。
毎日、海水浴場の現場で活動できるのはやはり学生しかいませんので学生の力がとても大きいです。安全に海水浴場を開放できるように優秀なライフセーバーを育てていきたい
講習では、救助の基礎を1から教えます。
制限時間内に合計600メートルを走って泳ぐ「ラン・スイム・ラン」に。
救助用のボードでに溺れた人を乗せ、浜まで引き上げる「ボードレスキュー」。
さらに心肺蘇生など基本的な救助技術を4日間かけて学びます。
今回も無事に全員がプログラムを終えライフセーバーとしてのスタートラインに立ちました。
受講生
ライフセーバーは人命救助という人の命に関わる職業なので、人の命を救うことの大切さを学ぶことができました。消防士を目指しているので今回学んだことを生かしていきたい。
受講生
人を救うことはとても大変だけど1人でも多くの命を救えるように、これからがんばっていきたいと思います。夏は柏崎市のライフセーバーとして活動をがんばりたい
講習の存在を知らない若者にも感心を持ってもらおうと、池谷さんはことし、初めての試みとして県内の専門学校に出向いて勧誘活動も行いました。
池谷薫さん
学生がどんどん減っている状態がありますので、どのようにライフセーバーを増やせるかということに頭を悩ませていました。若い学生には力になってほしいですし、ライフセービングを知ってもらうこと。それを行いつつライフセービング活動に少しでも協力してくれる方を増やしていこうと思います。こういった普及活動はライフセービング活動の原点でもあると思っています。
新潟県 ライフセービングクラブは4市のみ
柏崎での取材をきっかけにさらに調べてみると、県内でライフセービングクラブがあるのは新潟市、佐渡市、糸魚川市、そして柏崎市の4市だけであることもわかりました。普及にはまだまだ時間がかかるのが実情です。
担い手のすそ野を広げるために日本ライフセービング協会では小学校などへの訪問活動にも力を入れているということで、担当者は次のように話しています。
日本ライフセービング協会 佐藤事務局長
子どもたちに水辺の安全の知識だとか、自身の安全を守りながら海で楽しく遊ぶ方法を教える活動を積極的に行っています。こういうことをやっていくとライフセーバーになりたいという子どもたちも増えてくるし、子どもたち自身も事故に遭わないよう注意するようになります。子どもたちや地域の方々に「ライフセービング教室」を行うことは「水辺の事故を減らす」ことにつながるのです。
警察庁のまとめによれば去年1年間の全国の水難事故による死者・行方不明者は727人で、事故が起きた場所でみると海や河川が80%以上を占めています。監視員の体制を整えるだけでなく、一人ひとりが意識を高めることで事故を防ぎ、水のレジャーを安全に楽しんでもらえたらと思います。