人手不足にあえぐ長崎県の旅館業
- 2024年02月27日
コロナ禍からの回復で長崎県内でも旅館の客足は戻りつつあるが一方で人手不足という新たな問題が長崎の旅館業に影を落としています。その現状を取材しました。
(NHK長崎・松本麻郁)
長崎県雲仙市の小浜温泉にある老舗旅館です。
「いらっしゃいませ。チェックインでよろしいですか」
受け付けを済ませた客は自分たちで荷物を部屋まで運びます。かつては仲居が運んでいた客の荷物。5年前からサービスを取りやめました。その景には旅館の人手不足があります。
「以前は、やはり一組一組に係が担当で付いてお荷物をお部屋までご案内をしながらっていうスタイルをとっていたんですけれどもやはり、その間、人手が足りなくなって」
島原半島の西側にある雲仙市の小浜温泉。およそ1.5キロの通りに15軒ほどの旅館やホテルが建ち並んでいます。
草野春奈さんがおかみを務めるこちらの旅館は創業350年余り。
これまで、仲居が付きっきりで客をもてなすサービスを売りにしてきました。しかし、このところ旅館で働く人の確保は難しくなっています。
草野さんは、この旅館で、いまの客の数をもてなすためにはあと3人ほどの従業員が必要だと考えています。
チラシを配り、従業員を募集していますが、思うように人を増やすことはできていません。
「やっぱり労働環境であるとか、肉体的な負担であるとかっていうところが関わっているのかな と。自分も働いていてそういう実感があったので」
去年、時給を引き上げ、条件によっては最低賃金より300円高く支払うことにしましたが、それでも思うような採用には至っていません。
こうした人手不足の状況は、いま、長崎県内のホテル・旅館業界で広がっています。
旅館の仲居など接客や給仕の仕事について求職者1人に何件の新規求人があったのか、その推移を示したグラフです。コロナ禍からの回復に伴って、このところ倍率は右肩上がりで、昨年度は3点66倍。仕事を求めている人1人に対し4件近い求人がある売り手市場となっています。
さまざまな業界で賃上げが広がるなか、夜勤が多く休みも不規則な仲居などの仕事は避けられている
のではないかと分析されています。
草野さんの旅館でも客に選ばれる旅館であり続けながら、人手不足をどう補っていくのか、さまざまな検討を行ってきました。そして、旅館の形を大きく変える決断をしました。
「全室、海側でオーシャンビューのお部屋です」
客室の数を55室から24室に減らしたうえ、すべての部屋にベッドを入れました。夜、従業員が客室に布団を敷きに行く作業をなくすためです。
さらに、部屋の形もすべて統一。こうすることで、掃除をするスタッフの効率を上げられるようにしました。
さらに、これまで客室で出していた食事はレストランに来てもらって提供する形に変えました。
かつては客が食事をする間、それぞれの客室と厨房を、最低、5往復しなければならなかった従業員の仕事を大幅に減らすことができたといいます。
「折り合いをつけながら、よりご満足いただけるような着地点というのを常に探しながらより良いサービスっていうのを求めている状況です。私たちは、やはり、この先、長く続けていくために、どんなふうに楽しんでいただくのかっていうのを常に考えていかなければいけない」
人手不足にあえぐ旅館業をどうしていけばいいのか?。専門家はー。
「観光っていうのは要はよその地域にもっていけないもの。持って行けないというのは地域の歴史や文化なのでやっぱり地域が一丸となって行政なんかもしっかり中に入りながら、地域の方向性を定めて支援を行っていくという必要があると思います」
長崎労働局でもホテル・旅館業の人手不足を受けた対策を進めていて、2024年3月には長崎県・佐世保市で宿泊業者14社が参加し、県内で初めての大規模な就職面談会を開くことを決めています。