長崎市外海地区 潜伏キリシタンに愛された・・・ゆうこう
- 2024年02月09日
潜伏キリシタンにも愛された・・・長崎特有の香酸かんきつ
草の間から生え、伸びた枝にたくさんの実をつけたこちらの木。ゆずなどと同じ香酸かんきつの「ゆうこう」です。古くから長崎市内に生えていた木ですが、20年前に長崎市などの調査でこの地域だけの特有のかんきつ類であることがわかりました。
木は長崎市北西部の外海地区や南部の土井首地区に集中し、石垣や草むらに根を張り枝を伸ばしています。
ゆうこうを育て、広めようと活動してきた外海地区ゆうこう振興会の帯山安敏会長に生えている木を案内してもらいました。
こんな石垣の中に根を張って、百数十年も生き残っているんですよ。
そういって見せてくれたのは石垣から根を生やした力強さを感じるゆうこうの自生木。
「ゆうこう」が集中する地域はかつて弾圧から逃れるために身を隠していた潜伏キリシタンたちが多く住んでいた場所です。このため「ゆうこう」は潜伏キリシタンたちともつながりが深いのではないかと考えられています。
こういう厳しい環境の中で生き残ったのがまさに潜伏キリシタンがひそかに守り続けて生き残ったという共通するような木の生き様ですよね。
山とか石垣の中にしかそういうところにしか自生木は生えていないんです。
海辺の斜面にあり、200年以上にわたって潜伏キリシタンたちが暮らしてきた外海地区。
作家の遠藤周作が弾圧されたキリシタンを描いた小説『沈黙』の舞台にもなった場所です。この外海地区には自生している「ゆうこう」の木がおよそ100本残っていて、毎年寒くなると黄色い実をつけます。
会長が案内してくれた自生木の近くには十字架の墓石がありました。潜伏キリシタンの墓だといいます。
お墓の近くにゆうこうが百数十年も生き残っているというのはロマンも感じられます。
特産品を目指して
酸味の中に甘みもある果汁を特産品として生かしていく取り組みが、いま進んでいます。
長崎市鍛冶屋町のレストラン「ムッジーナ」のシェフ、鈴木貴之さんです。みずから「長崎スイーツ王子」と名乗り、地元の旬の食材を使ったデザートを提供しています。自身もクリスチャンである鈴木さんも、この「ゆうこう」に注目しています。
敬虔なクリスチャンの家族の中に生まれて、その背景と、ゆうこうがつながってほかの作られているシェフとかよりも思い入れがあるフルーツなんです。
鈴木さんが店で提供するスイーツは生地に「ゆうこう」の果汁と皮を加えたガトーショコラ。カットした実も添えました。実の下には果実をまるごとつかったジャムものせています。
香酸かんきつの中では香りがあまり強くない「ゆうこう」はお菓子との相性もいいといいます。
チョコレートの中に入った「ゆうこう」のほのかな香りと、ジャムのダイレクトなパンチの効いたおいしさが楽しめるということです。
長崎ゆうこうが持ってる歴史とかロマンとかそういったのをスイーツを通して見てもらって、食べてもらって、感じてもらったらいいかなと思っています。
さらに鈴木さんは「ゆうこう」の認知度を高めるため、毎年「ゆうこうスイーツフェスタ」を企画しています。ことしも長崎市内の17の店で開催されました。
また、地元の外海地区の人たちも「ゆうこう」を特産品にしようと商品開発に取り組んでいます。いまでは、地元の道の駅におよそ20種類の「ゆうこう」の商品が並ぶようになりました。
「ゆうこう」を使ったお菓子に、カステラ、もなか、かりんとうもあります。さらに甘酒にも「ゆうこう」の果汁を入れています。
道の駅「夕陽が丘そとめ」に来たら、ゆうこう商品が全部買えるという形に将来的にはやっていきたいです。
地元の歴史と共に育ってきた「ゆうこう」。
大切にしたいというこの地に住む人たちの思いが、いま「ゆうこう」に光をあてています。
ことしの「ゆうこうスイーツフェスタ」は長崎市内17の店で「ゆうこうのお菓子やドリンクなどが楽しめました。(2024年1月31日まで)来年以降も開催が予定されているということです。また「ゆうこう」の商品は長崎市外海地区にある道の駅「夕陽が丘そとめ」のほかに、長崎駅や長崎空港のお土産売場でも購入することができます。