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俳優・役所広司さん 新春にかける思い

ゆっくり息をして いい作品と出会う
  • 2024年01月01日

2023年、カンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞した長崎県・諫早市出身の俳優、役所広司さん。2024年に思うことは「残された時間でできるだけいい作品と出会えるように、ゆっくり息をする」。地元への思い、そして2024年の抱負などたっぷりお話を聞きました。

NHK長崎放送局 池田麻由美

おかえりなさい!役所広司さん

2023年12月、俳優の役所広司さんが地元の長崎県・諫早市に6年ぶりに帰ってきました。会場に詰めかけたのは市民約860人。地元出身の大スターを万雷の拍手で迎え、そのあたたかい歓迎は役所さんを感動させました。

観覧の応募が相次ぎ、抽せんの倍率はなんと5.4倍

役所広司さん
「(地元では)普通とは違う温かさを感じるものですよね。『おかえり』なんて言いながら拍手してもらって。ああいう出迎え方というのはどこでも経験できるものではないですし。そうやって迎えてくれた人たちの温かさというのは、僕たちのような仕事をしている人間にはすごいエネルギーになるんですね」

諫早市に帰ってきた理由は市民栄誉賞の授与式に出席するため。
2023年5月にカンヌ国際映画祭で最優秀男優賞に選ばれたことをたたえられての受賞でした。

役所広司さん
「市民栄誉賞という素晴らしく責任ある賞をもらうと自分の故郷を傷つけるようなことはできないなと。また帰ってこられるように今後も頑張りたいと思います」

“毎日を満足できる人は豊かな人生が過ごせる”

役所さんと主演映画のポスター

役所さんがカンヌ国際映画祭の最優秀男優賞に選ばれたのは映画「PERFECT DAYS」。公共トイレの清掃員「平山」を演じ、慎ましくも充実した日常を表現しました。

役所広司さん
「平山という役は一瞬一瞬、過ぎ去っていくものも見逃さない。それで心が豊かになっていくような生き方をしている。自分の与えられたものに関して満足できる人ですよね。毎日を満足できる人っていうのは豊かな人生が過ごせるんじゃないかと思いました。
大都市に暮らしている人々が結構なスピード感のある生活をしなければいけない中で、平山の生き方やゆったりした時間の過ごし方もいいんじゃないかなと、映画を観た人は思ってくれるんじゃないかという感じがします」

与えられたものに満足できる生き方が忙しく過ぎる現代の中で豊かな人生を送るヒントではないかと話す役所さん。分かっていてもなかなか難しいと、演じた本人もはにかんでいました。

役所広司さん
「僕なんかは『今日はあれもできない。これもできない。あれもしたかった。これもしたかった』って後悔をすることが毎日の繰り返しになっています」

地元・諫早は“家族のような街”

高校卒業後に離れた地元・諫早。久しぶりに帰ってくると、幼少期の思い出が詰まった豊かな自然が役所さんを出迎えました。

本明川

役所広司さん
「思い出の場所は諫早の真ん中に流れている本明川ですね。そこは子供の頃から遊び場所でもあったり、お祭りのある場所であったり、精霊流しをした場所であったり。今回ふっと見たら、昔よりもさらに綺麗な川になっているなと思いました」

豊かな自然と温かい人たちが待つ地元は、役所さんにとって家族のような存在。これからも自分の原点となった長崎の人たちに喜んでもらえるような仕事がしたいと語りました。

役所広司さん
「諫早は家族とか友人たち、親戚たちとかほとんどの人がどこかでつながっているような街ですからね。うちに帰ってきたような街ですね。やっぱり諌早の人はのんびりしていて心優しい人が多いと僕はずっと思っています。久しぶりに帰ってきてもやっぱりそれを感じますね。
長崎出身者として長崎の人たちが元気が出るような活動をしていきたい。長崎の人たちにエネルギーをもらって仕事をしているわけですから、そういう意味では長崎出身というものを背負って仕事もやっていきたいと思います」

 去った若者が戻って来られる映画業界に

 

2023年は新型コロナによって中断していた仕事が動き出し、映画業界にとって再出発の年になりました。一方かつてない打撃を受けた業界が今後どうあるべきか。胸の内を明かしてくれました。

役所広司さん
「2023年というのはコロナが明けてやっと動き出して。僕たちの業界もその前の3年間は撮影が中止になったり、延期になったり、上映がストップしたりとか。映画作りに夢を見た若者たちも仕事がなくなって。結局夢を断念してほかの職業に行ったスタッフの仲間もいますけど。去っていった人たちが映画作りや業界にまた戻ってこようという気持ちになるような環境づくりも、残った者はしなきゃいけないとつくづく思いましたね」

 

その上で、よりよい作品が生まれるためには業界を支えるシステムが必要だと考えています。

役所広司さん
「パンデミックですべてが中断してしまった間『我々の仕事って何の補償もないんだな』とつくづく感じましたね。そういう時になんとか持ちこたえられるようなシステムができると、映画業界やエンターテイメント業界に素晴らしい才能が集まるんじゃないかなと思います」

 

2024年 ゆっくり息をして いい作品に出会えるように

映画やドラマにと目まぐるしい日々を送った2023年。2024年はデビューから45年を迎えます。抱負は、肩の力を抜いた自分らしい1年にすることです。

役所広司さん
「2023年がちょっと慌ただしかったので1回ちょっとゆっくり息をして。無理をしないように、自分のペースを見つけて。気持ちを落ち着けて先の仕事に進んでいきたいと思います。これから僕はそんなにたくさんの仕事ができる年齢ではないので残された時間でできるだけいい作品と出会えるように、ある意味、自由になる時間を自分で作って。本当にいい作品と出会うために時間を空けておくということも大事だと思っています」

 

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