宮崎の焼酎はなぜ”20度”? その理由に迫る!
- 2023年12月21日
視聴者の疑問・質問に答える「てげ探!」いよいよ年の瀬、忘年会のシーズンということで、今回はこんな調査依頼に応えます。
さかな さん(宮崎市)
県外から転勤してきたのですが、宮崎の焼酎は20度ばかりでビックリ。理由を知りたいです。
県外だと25度の焼酎が一般的。なぜ20度の焼酎が宮崎には出回っているのか、「てげ探」してきました。
宮崎の焼酎はなぜ20度なの?(動画はこちら)
まずは宮崎市内の酒店から調査開始!
県内で造られる焼酎、およそ150銘柄を取り扱うこちらのお店。
売れる焼酎の"8割"が20度なのだそうです。
ほとんどが20度の焼酎を飲まれていると思います。20度だと、そのままロックで飲んだり、温めてそのまま飲めるというのがいいと思います。
店内には同じ銘柄でも度数が異なる焼酎がありました。
こちらは、えびの市にある明石酒造さんの明月という焼酎なんですが、20度で造っていて、もう一つ、同じ銘柄で25度がある。こちらは県外のお客さんや、25度を飲みたいお客さん向けに造っている。
確かに、「県内向けは20度」、「県外向けは25度」という違いがあるようです。
お酒のことなら”ニシタチ”で!
続いて訪れたのは、宮崎市の繁華街・ニシタチ。焼酎をこよなく愛する県民は、このことを知っているのでしょうか?
(番組ディレクター)
焼酎はよく飲みますか?
飲みます飲みます。
(番組ディレクター)
なぜ宮崎は20度なのかご存じですか?
よくわからないけど、ロックが飲みたいからじゃないですか?
(宮崎の人は他県より)5度分くらい肝臓が弱いんじゃないですか?笑。僕は3年間福岡にいたんですけど、その時は25度でした。
25度のお酒を飲んだ時は・・・
こんな顔だったんですけど、こっちの20度の酒を炭酸で割るときは・・・
こんな素晴らしい顔になりますね!
別のお店では。
直で飲めるところですよね、20度は軽いですから。あとは、うちのじいちゃんは、焼酎を燗つけで日本酒みたいに飲んだり、だから20度なんだって言ってた気がします。
宮崎の焼酎が20度なのは"飲み方に違い"に理由があるという人が多くいました。
焼酎メーカーに聞く 製造方法に違いは?
では、この20度の焼酎。作り方には違いがあるのでしょうか。都城市の酒造メーカーを訪ねました。
こちらは2次仕込みという工程でして、さつまいもと一次もろみ、霧島れっか水が合わさって8日間かけて発酵させる工程になります。
通常、仕込みから最低でも3、4か月かけ製品になるという焼酎。気になる「度数」は、いつ決まるのでしょうか?
蒸留したあと(原酒)は、37度ほどのアルコール度数なんですけど、これをお水で割って、度数を調整します。
実は、原酒を"水で割る"ことで焼酎の度数が調整されているんです。
原酒とお水がそれぞれのパイプを通って、1本のパイプに合わさっていきます。ここで水と焼酎が混ざって、アルコール度数が調整されたものが、うしろの大きなタンクにたまっていきます。
原酒にどのくらいの水を入れるかは、機械を使って、正確に調整されています。こちらの会社でも、「20度は県内向け」、「25度は県外向け」に出荷しているそうです。
では、なぜ「県内」に流通する焼酎は、20度がメインなのでしょうか。
密造酒対策として、酒税が安い20度が主流になっていて、今もその文化が残っているという認識です。
『密造酒』とは?謎の核心に迫る
ここで、『密造酒』という新たなキーワードが!
実はニシタチの調査でも・・・
『密造酒』の拠点が宮崎だったというので、そこから20度は宮崎だけ、みたいな。
沖縄からの移民の方が、20度の焼酎を造り出したと。
というわけで向かったのが、宮崎市の波島地区。
ここは戦時中、沖縄や奄美大島から疎開してきた人たちが多く住んでいる場所です。
この地区で、沖縄名物のサーターアンダギーを販売する金城君子さん。
亡くなった夫から密造酒の話を聞いたことがあると言います。
(夫は)疎開してきたんですよね。造ったらいけないのに、隠して田舎に売りに行って、生活していたみたいです。
道路工事で掘ってみたら、焼酎の甕(かめ)が出てきて、その中に焼酎が入っていて、あそこの道にあったから、みんなで分けて飲んだとか話していました。(生きるのに)みんな必死よ。
本来、酒作りには税務署の許可が必要ですが、この波島地区では、故郷に帰れず生活に苦しんだ人たちが、沖縄にもあった蒸留技術で密造酒を盛んに作っていました。
しかしあまりに盛んになり過ぎたため、許可を得てお酒を製造していた酒蔵の経営を圧迫するほどになりました。
そこで、対抗策を考えたのが、酒づくりの許可を行う税務署でした。
価格の安い”密造酒”に対抗するため、新税率を設定して、結果”密造酒”との価格差が減少して、”正規の”焼酎の流通量が増加したようです。
これまで「25度以下」で一律に定められていた酒税に「20度以下」という税率を新たに設け、正規の焼酎を安く販売できるようにしたのです。
加えて、宮崎には昔から、焼酎を”き”で飲む文化があったので、そのまま割らずに飲める20度の焼酎が定着したのではないでしょうか。
密造酒対策と県民の好みが奇しくもマッチして独自の”20度文化”が定着していった。これが、今回の調査結果です。
密造酒自体は、戦後すぐから日本全国で出回っていたそう。中でも宮崎は盛んで、大人だけで運ぶと人目につくから子供を使ってカムフラージュしてなんとか宮崎神宮駅まで運び、そこから九州一円に販売網を広げていた、との説もあるそうです。
宮崎ならではの焼酎文化は、「制約・制限」から生まれた。そんなウンチクを楽しみながら、この冬も、20度の焼酎に親しんではいかがでしょう。でも、飲みすぎにはご注意くださいね!笑