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宮崎牛を世界へ!イスラム圏20億人の“ハラル”市場を開拓

  • 2022年10月06日

いま世界に20億人規模の巨大市場が注目されています。イスラム教徒を対象にした「ハラル」商品です。輸出拡大中の宮崎牛の新たな市場となるか、西都市に建設される「ハラール認証」の食肉処理施設肉を取材しました。

そもそも「ハラル」とは?

「ハラル」とは、アラビア語で「許されたもの」を意味し、イスラム教の戒律に基づいて処分された肉や「不浄なもの」とされる豚やアルコールを含まないものです。

「ハラル」は食品だけでなく、化粧品、歯磨き粉、ワクチン、女性の下着にまで広がっていて、イスラム教徒が多くを占めるインドネシアやマレーシア、中東諸国などが著しい経済成長を遂げる中で、巨大市場としての可能性が急拡大しています。

「ハラル」の適用範囲は「農場から食卓まで(Farm to Table)」に及び、この間のフードチェーンのすべてのプロセスで、ハラルであることが求められており、畜産業が盛んな宮崎では、この「ハラル」の要件を満たすのが長年の課題となっていました。

西都市に新設される食肉処理施設

施設を建設するのは昨年、西都市に設立された牛肉の加工会社「SEミート宮崎」で、新たな施設はイスラム教の戒律に従って牛肉を加工していることを示す「ハラール認証」の基準を県内で初めて満たすものになるということです。

県によると、昨年度の県産牛肉の輸出額は過去最高のおよそ69億円に上り、今回の施設の建設によって東南アジアや中東などイスラム教徒の多い国への輸出拡大が期待されるということです。食肉処理施設は再来年に操業を始める予定で、今後60人余りの新規の雇用を見込んでいます。

橋田和実(西都市長)
久しぶりの大型の企業立地の案件で非常に期待している。畜産業全体の活性化にもつながっていくと思うので支援をしていきたい。

有田米増(SEミート宮崎 社長)
ハラール対応の処理をして輸出することで農家の経営の安定につなげ、力を合わせて切磋琢磨しながら頑張っていきたい。

イスラム圏への挑戦

この食肉処理施設ができたことで、海外でも評価の高い宮崎牛をイスラム圏へ輸出できるようになります。そもそも食肉を輸出するには、相手国から許可を得るため衛生管理が厳格な施設で処理しなければならず、これまで宮崎県内には「ハラール認証」の基準を満たす施設がありませんでした。

宮崎では、輸出拡大を目指して国内でも最新鋭の食肉処理施設が都農町に建設され、3年前から稼働が始まっています。こちらは世界の中で見ても非常に厳しいEUの衛生管理基準を満たしているため、宮崎牛の輸出拡大に一役買ってきました。

しかし、この施設ではイスラム教徒が戒律で食べることが禁じられている豚肉の処理も行われているため「ハラール認証」の基準を満たすことは、ほぼ不可能だということです。つまり、同じ施設内で豚肉と牛肉の両方を処理していたら「ハラール認証」の基準を満たさなくなるということです。

今回取材した会社によると、それどころか、施設が養豚場から最低でも5キロは離れていなければならないという立地面の条件もあり、宮崎は養豚業も非常に盛んなため、この条件に引っ掛からない場所は少なく、施設の候補地選びに苦労したということです。

最終的には、県央部に位置し、高速道路のインターチェンジにも近くアクセスの良い場所が西都市内で見つかりました。国の補助も受けながら総工費43億円余りをかけて工事が進められ、年間1万2000頭の牛を処理できる施設になる予定です。

円安で追い風が吹くか

農林水産省によると「ハラール認証」の基準を満たす食肉処理施設は、現時点で稼働している所が全国で7か所、九州では熊本県内の1か所だけだということです。

こうした中、宮崎県産の牛肉の輸出量は年々増加しています。最近10年ほどで17倍以上に増えました。一方で、主な輸出先はアメリカや台湾、香港などに限られ、これをイスラム圏の国々にも広げることが課題となっていました。

有田米増(肉牛加工会社 社長)
これまでは「ハラール認証」の食肉処理をして海外に送ってくれないかというリクエストに応えられなかった。円安の追い風の中で輸出のオファーがいっぱい来ています。われわれが「ハラール認証」の食肉処理を行うことに自信を持っている。

世界のイスラム教徒の人口は20億人近いとされていますし「和牛」人気も高まっています。今回の施設の整備で、宮崎牛の海外市場の開拓がいっそう進み、宮崎牛の海外での評価が今以上に高まることを期待したいと思います。

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