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串間の都井岬の野生馬が大好き!新人監視員が見つけた“天職”

  • 2022年04月20日

宮崎を代表する景勝地・都井岬。その丘の上でのんびりと草をはみ穏やかに暮らす野生の馬は、皆さんご存じの「岬馬」です。日本の在来馬の姿を残す国の天然記念物でもあります。この岬馬を見守る監視員に2021年、およそ7年ぶりとなる新人が誕生しました。広大な岬を駆け回る新米監視員の奮闘の日々を取材しました。

7年ぶりの新人は初の女性監視員

野生馬監視員の渡邉木直さん。都井岬に初めて誕生した女性の監視員です。この仕事について1年。90頭ほどいるすべての馬のチェックを任されています。

野生馬監視員の渡邉木直さん
「群れのメンバーがみんないるかとか、けがをしている子がいないかとか今の時期は妊娠している馬が子どもを産んでいないかとかを見回っています」。

岬の広さは東京ドーム120個分。毎日、広大なエリアに点在する岬馬をあちこち探して様子を確認します。個体の数の変化はもちろん、フンに寄生虫がいないか、けがをしそうなものが周りにないか…。細やかな観察力が求められるといいます。

岬馬に一目惚れで急成長

今ではすっかり仕事も板についた渡邉さん。実は埼玉県の出身です。動物飼育員の養成学校を卒業し、4年前、観光で訪れた都井岬で目にした岬馬に一目ぼれ。串間への移住を決めました。

渡邉木直さん
「飼育されている馬と違って自由なんですよね。ボスの馬が自分の群れを守ったり、ここでしか見られないような馬同士の関係性を見られるのが面白いです。監視員は馬が見放題なので楽しいです」

指導にあたったのはこの道30年以上の大ベテラン・小田原博幸さんです。監視員の仕事を一から伝授。渡邉さんはたった1年で、小田原さんが太鼓判を押すほど急成長したといいます。

ベテラン視員の小田原博幸さん
「あらゆるところに行って馬を確認するんですよ。自分1人で山の中を歩いて行って。安心しています。任せても大丈夫」

待ちわびた春駒シーズン

そんな渡邉さんにとって楽しみな時期は、なんと言っても「春」です。雌馬が出産シーズンを迎え、「春駒」と呼ばれる子馬を産むのです。「春駒」の誕生を今か今かと心待ちにしてきた渡邉さん…。
3月、ついに待ちわびた日がやってきました。

2022年初めてとなる子馬の誕生です!体長80cmで元気なオスだということです。生まれてすぐに立ち上がる子馬。豊かな自然のなかでこんな愛らしい表情を目の前で見られるのは都井岬ならでは。

渡邉木直さん
「うれしいです。お母さんが華奢な子だったのでちょっと心配していたのですが、初日から元気に走り回っていました。まず一番に、元気に無事にみんな生きて、大きくなって欲しいですね」

岬馬への愛は深まるばかり…

渡邊さんの日誌

2022年は4月までに5頭の「春駒」が生まれ、すくすくと育っていますが、子馬たちがいつ、どこで、どの母馬から生まれたか1頭ごとに情報を記録にとるのも渡邊さんの仕事。渡邉さんの頭には岬にいる90頭の馬たちの情報がつまっているといいます。今では馬の性格やお互いの関係性もわかるようになり、岬馬への愛は深まるばかりです。

渡邉木直さん
「私が知っている中では一番楽しい仕事だと思います。ほんとに毎日楽しく、仕事というか、もう馬を見るのが好きなので半分趣味みたいな感じなんですけど、ほんとに楽しくやらせてもらっているのでこれからもずっと続けていきたいです」

インスタで馬たちの魅力発信

渡邊さんの岬馬への愛情を感じられるエピソードがもう一つ。実は仕事とは別に、趣味で撮った岬馬の写真をインスタグラムで紹介しています。

こんなおちゃめな顔など、なかなかみられない貴重な瞬間をアップしています。馬たちの愛らしい表情やしぐさの数々…。愛情を注ぎ続けてきた渡邊さんだからこそ撮れるものかもしれません。ただ、仕事では自然の厳しさに直面することもあります。子馬は毎年20頭ほど生まれますが、母馬の乳の出が悪かったり、雨に打たれて体が冷えたりして1歳までにおよそ3分の1が死んでしまうんです。手を差し伸べたくなるのですが、そうした現実も受け入れたうえで見守りを続けることが、生態系を維持する保護につながるんだそうです。まさに天職ともいえる仕事に巡り会った渡邉さん。これからも宮崎が誇る野生馬の世界を守り、魅力を発信し続けます。

 

  • 大須賀靖

    宮崎局・日南支局

    大須賀靖

    民間通報員として県南地域を取材

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