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私たちが食品ロス削減に取り組む理由

年末に向けて大掃除をしていると、冷蔵庫の中で腐らせてしまった食材や、一度も開封することなく賞味期限が切れてしまった食べ物などが出てきませんか?

国内の食品ロス量は、年間約523万トン発生(2021年度推計値)しています。 そのうち約半分が一般家庭から出ています。

あるデータによると、家庭から出される生ごみのうち、手つかずの食品は約2割、そのうちの4分の1は賞味期限前に廃棄されていたのです。

意識していても、なかなか減らすことができない「食品ロス」。

私たちは、ことし石川県金沢市で行われた「食品ロス削減全国大会」を取材しました。そこには「食べ物を大切にする」ということに知恵と工夫を凝らした人たちの思い、そして食品ロスを削減するヒントがありました。

(「地球のミライ」取材班)

家庭で余っている食品を持ち寄る「フードドライブ」

2017年から開催されている「食品ロス削減全国大会」 。
まだ食べられるのに捨てられてしまう食品を減らすための取り組みを推進しようと毎年開催されています。

パネル展示では、全国各地の企業や団体で進められている食品ロスを減らすための対策について紹介されていました。

その会場内に設置されていたのは「フードドライブ」のスペース。あまり聞き慣れないことばではないでしょうか。

(フードドライブ 食品の持ち込み場所)

フードドライブとは、家庭で余っている食品を持ち寄って生活困窮者支援団体や子ども食堂、福祉施設等に寄付する活動のことです。

どんなものを持ち込めるかというと…回収する団体によって多少の差異がありますが、今回出展していたNPO法人「いしかわフードバンク・ネット」では、賞味期限が1か月以上残っている「未開封の」常温食品であればOKとのこと。

たとえば、
▼クッキー、チョコレート、スナック菓子などのお菓子類
▼ジャムや水煮缶など、缶詰やびん
▼お米、そばやうどんなどの乾麺
▼しょうゆ、カレールーなどの調味料
▼ラーメン、みそ汁などのインスタント食品
▼ジュース、水、インスタントコーヒーなどの飲料
▼のり、かつお節など、乾物
▼粉ミルク、栄養補助食品など
▼シャンプー、リンス、トイレットペーパーなどの日用品

アルコール類や冷凍冷蔵品、野菜などは受け付けてもらえませんが、幅広く引き取ってもらうことができます。

「そういえば、家にこれ余っているな…」と心当たりがある人もいるのではないでしょうか?

(食品を持ち込む人/写真提供:いしかわフードバンク・ネット)
担当者

人からいただいたお土産やお中元、お歳暮などで「ちょっとこれは好きじゃないな…」といった自分の好みではないものをいただくときもありますよね。そういうときは家にため込むのではなく「早めに出してください」、「寄贈してください」と呼びかけています。

この日は、午前11時~午後4時の5時間で約11キロの食品が集まりました。さっそく提携している子ども食堂や団体に寄付されるということです。

(インスタント食品や調味料などが持ち寄られた)

私もありますが、食べないと思いながらもついストックの棚に置きっぱなしにして、気づいたときには消費期限や賞味期限が切れていた経験もあるのではないでしょうか。

人からいただいたときに、「食べるのか」「食べないのか」を判断するだけでゴミにすることがなくなり、だれかの食事につながるかもしれません。年末に向けて大掃除をしているときに、ためていた食品を見直してみてはいかがでしょうか。

いしかわフードバンク・ネット 青海万里子さん

私たちの活動は食品ロスを減らすと同時に、食のセーフティーネットとしても機能します。だからこそこれは絶対になくしてはいけない仕組みだと思っています。

「捨てるドーナツはゼロ」 ママたちのアイデアから実現!

続いて私たちの目にとまったのが、カラフルな色合いがステキなドーナツ。金沢市内で保存料ゼロ無添加にこだわって手作りしているドーナツ屋さんです。

このお店の何がすごいかというと…

食材の調達から油の廃棄まですべて一貫して食品ロスやゴミが出ないような生産工程を実現しているというのです。

▼ドーナツの材料は地元の農家と提携して「規格外の野菜」を積極的に使用
▼ドーナツは袋のまま冷凍する技術を使って販売。冷凍で180日間保存できる
▼基本的には受注生産を徹底。それでも余ったドーナツは金沢市内の福祉施設に寄付
▼製造過程で形が崩れてしまったものはまとめてお得に販売
▼ドーナツを揚げた油は、専用の会社に引き取ってもらいタイヤや部品などに再利用

なぜここまで徹底することができたのでしょうか?代表の志賀さんに話を聞くと、「食品ロスを意識した」というよりも「結果的に食品ロスにつながった」といいます。

(代表取締役社長 志賀嘉子さん)
志賀さん

私たちの会社は全員女性で、お子さんがいるママさんを多く採用しています。ママさんたちって“もったいない意識”をものすごく極めているんです。たとえば、ナッツのドーナツを作っているときに鉄板に落ちたナッツを持ち帰るスタッフがいるんですね。「そんなカケラ、何に使うんですか?」と聞いたら「これでパウンドケーキを焼く」というんですよ。ほんの小さなことも見逃さない。もったいないから何かに使えないかって常に意見を出してくれるんです。

もちろん、当初からこんなに順調に事業が進展したわけではありません。志賀さんは「売り切る仕組み」を作るのが一番大変だったといいます。

ドーナツといえば「形が丸いもの」という印象が強いのか、出荷した売り場をのぞくと、やっぱり形の悪いものが売れ残っていたといいます。

志賀さん

手作りのため、形が均一にならないということはお客さんにも理解してもらうようにしていたんですが…

それでも残ってしまったものや生産段階でちぎれてしまったドーナツなどは、まとめてお得に販売。これも働くママさんたちのアイデアだといいます。

(左:かた崩れドーナツ)
志賀さん

オープンしてすぐの頃は、かた崩れして売れ残ったドーナツをご近所に一生懸命配っていたんですけど、やっぱり1週間もすると喜ばれなくなるという…(笑)どうにかしなきゃというときにスタッフが「詰め合わせになっていたら、私なんか買っちゃいますけどね」と言ってくれて、その発想からいまのスタイルができあがりました。

この日も会場でかた崩れドーナツの詰め合わせが販売されていました。通常5個入りで1000円ほどするものが、600円で購入できました。

志賀さんがしきりに口にしていたのは「もったいない」ということば。

使い終わった油ひとつとっても「もったいないから何かに再利用できないか」、野菜も農家さんが規格外で困っているというなら「もったいないから原材料に使おう」、ちょっとしたことに目を向けてみる、それが食品ロスをなくすきっかけになるのではないでしょうか。

大学生が作る「廃棄野菜のスープ」

会場内で「スープの試食あります」ということばにひかれて声をかけたのは、金沢大学に通う4年生の鳳えこさんと鳳わこさん(活動ネーム)です。

(左:鳳えこさん 右:鳳わこさん)

この日ふるまっていたのは「キャベツと里芋のクリームスープ」でした。

試食すると、キャベツの甘みが口いっぱいに広がる優しい味。余分な味付けをしておらず、野菜そのものの味が引き立っていました。

スープに使っていた野菜は、すべて農家から譲り受けた「規格外の野菜」だといいます。

(規格外のキャベツと里芋で作ったスープ)
えこさん

メニューを決めてから野菜を調達するのではなくて、手に入ったのがこの野菜だからこれにする。メニューや味付けはその時に決めています。

2人は「規格外の野菜」を使ったスープを学生に提供する活動をしています。

きっかけは、実家が農家のわこさんの素朴な疑問だったといいます。

わこさん

私の実家は淡路島で農家をしているんですけど、小さい頃からどんな形の野菜も食べていました。進学とともに金沢に来て、スーパーで野菜を買おうと思ったんです。そうしたら、全部キレイな形のものしか置いていなくて、なんで?って。私の家だと形が崩れていても食べていて…そこで聞いたり調べたりすると「規格外の野菜」は捨てられていることを知ったんです。

そこで考えついたのが、捨てられる野菜を使った料理をふだんなかなか野菜を食べる機会が少ない大学生に提供できないかというアイデアでした。

(割れたり形が崩れている野菜)

最初に取りかかったのは、規格外の野菜を譲ってくれる農家を探すことでした。「農家さんも捨てるぐらいだから、簡単に譲ってくれるだろう」と思っていたそうですが、現実は甘くありませんでした。

わこさん

壁がありましたね。『規格外の野菜をどうするんや』と言われて、ずっと、つっぱねられてばかりいましたね。

えこさん

たぶんみなさん、規格外の野菜なら安く買えたり、もらえたりするって考えていると思います。でも、もしそうなってしまったら規格内の本当にきれいな野菜の値段まで下がってしまうことになりかねないというのを農家さんは結構恐れているので、そういった面で簡単にいけばもらえるみたいな感じではないんですね。

2人は「まずは、野菜のことを教えてもらおう」と農家に足しげく通い、作業を手伝ったりしながら、少しずつ信頼を築いていったといいます。1年ほど継続して農業を学ばせてもらう中で、「君たちならいいかな」と言われ、ようやく野菜を譲ってもらうことができたそうです。

(お世話になっている農家さんと)

これまではイベントやお祭りのときに露店を出しながら活動を続けてきましたが、ことし10月からは学校の食堂で自分たちのスープを提供するお店を出店することになりました。

食堂は月曜日から金曜日まで営業。現在は朝5時に起きて、規格外の野菜の調達、献立作り、調理、販売まですべてを分担しながら行っています。

(1セット3皿で980円 すべて2人の手作り)

この取り組みは高く評価され、今回「食品ロス削減推進表彰審査委員会特別賞」を受賞しました。

今後の活動で実現していきたいことは?と聞くと…

えこさん

私たちの活動を知ってもらって、そのうえで「じゃあ自分たちには何ができるんだろう」と、たくさんの人が食品ロスについて考えてもらうようなきっかけをどんどん増やしていきたいなと思っています。

わこさん

私たちの活動に興味を持ってくれた人や、東京などいろいろな大学からも「こういう活動をしたいです」って声をかけてもらうことがあるんです。2人でできることには限界があるので、仲間を増やしていけたらいいなと思っています。

担当 地球のミライの
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