おもわく。

「旧約聖書」

かつて、日本人は万物に神が宿っていると考え、八百万の神を信じていました。これと対極にあるのが一神教の思想です。一神教は古代、ユダヤ教で生じました。そしてユダヤ教を母胎にキリスト教が生まれ、その両方の影響を受けてイスラム教が成立します。つまり一神教について学ぶことは、世界の多くの人々の文化の根源を知ることにつながるのです。そこで5月の「100分de名著」では、「旧約聖書」を読み解くことで、一神教とは何かを考えます。
そもそも聖書とは何でしょうか。聖書には「旧約聖書」と「新約聖書」があります。「旧約」とは神との古い契約という意味で、「新約」とは、神との新しい契約という意味です。「旧約聖書」は、紀元前4~5世紀に成立しました。ユダヤ教にとってはこれだけが「聖書」です。一方「新約聖書」は、ユダヤ教を母胎に生まれたキリスト教が生み出した書物で、「旧約聖書」は「新約聖書」の前提という位置付けとなっています。
番組では、「旧約聖書」から、古代の中東における人々の営みや歴史を探ります。グローバル化が進み、異文化の理解が必要となっている今、西洋における「神」の概念の原型が、どのようにして形作られていったかを分析していきます。

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第1回 こうして“神”が誕生した

【放送時間】
2014年5月7日(水)午後11:00~11:25/Eテレ(教育)
【再放送】
2014年5月14日(水)午前5:30~5:55/Eテレ(教育)
2014年5月14日(水)午後0:25~0:50/Eテレ(教育)
※放送時間は変更される場合があります
【ゲスト講師】
加藤隆(千葉大学文学部教授)

旧約聖書ではまず、世界の創世について語られているが、そこから何が読み取れるのかをまず探る。さらに時代が下ると、ユダヤ人の祖先はエジプトで奴隷として暮らしていたとされている。彼らはヤーヴェという神を信じるモーセに率いられ、エジプトからの脱出を企てる。追っ手のエジプト軍が迫るが、海の水がひいて無事に渡ることが出来たという。この有名な物語が意味するものとは何なのだろうか。第1回では、戦乱が続く古代の中東で、当時の信仰とはどんなものだったのかを考える。

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第2回 人間は罪の状態にある

【放送時間】
2014年5月14日(水)午後11:00~11:25/Eテレ(教育)
【再放送】
2014年5月21日(水)午前5:30~5:55/Eテレ(教育)
2014年5月21日(水)午後0:25~0:50/Eテレ(教育)
※放送時間は変更される場合があります
【ゲスト講師】
加藤隆(千葉大学文学部教授)

国家を樹立したユダヤ人たちは、ソロモン王のもとで発展するが、国の安定と共に変化が起きた。人々はさらなる生活の向上を神に求めるようになり、ヤーヴェ以外の神も信じるようになった。ところがソロモンの死後、内紛により国が南北に分裂、さらには戦争に負けた北王国が滅びてしまう。こうした中、民族を守るはずのヤーヴェが、なぜ自分たちを守らなかったのか、という疑問が生じた。その時、人間は罪の状態にあるという新たな概念が芽生える。第2回では、罪の概念について考える。

名著、げすとこらむ。ゲスト講師:加藤隆「聖書を全体で理解しよう」
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第3回 聖書の成立

【放送時間】
2014年5月21日(水)午後11:00~11:25/Eテレ(教育)
【再放送】
2014年5月28日(水)午前5:30~5:55/Eテレ(教育)
2014年5月28日(水)午後0:25~0:50/Eテレ(教育)
※放送時間は変更される場合があります
【ゲスト講師】
加藤隆(千葉大学文学部教授)

戦乱が続く中、残っていた南王国も戦いに敗れて消滅。ユダヤ人たちは敵国の首都バビロンへ連行され捕囚となってしまった。しかし人々の多くは、出エジプトのよう出来事を神に期待し、信仰を守り続けた。こうした中、聖書の成立にあたり、ある重要な出来事があったと加藤隆教授は考えている。第3回では、旧約聖書が生まれた背景を学ぶと共に、そこに記された掟がどのような影響を与えたかを考える。

もっと「旧約聖書」
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第4回 沈黙は破られるのか

【放送時間】
2014年5月28日(水)午後11:00~11:25/Eテレ(教育)
【再放送】
2014年6月4日(水)午前5:30~5:55/Eテレ(教育)
2014年6月4日(水)午後0:25~0:50/Eテレ(教育)
※放送時間は変更される場合があります
【ゲスト講師】
加藤隆(千葉大学文学部教授)
【特別ゲスト】
姜尚中(聖学院大学学長)

バビロン捕囚が終わり、故郷に帰ることが出来たユダヤ人だが、かつてのように国家を樹立することはできなかった。しかしバビロンという大都会で暮らしたユダヤの人々は、かつてよりも知見を広め、知恵を深めることが出来た。こうした背景の中で生まれた物語のひとつが、有名な「ヨブ記」だ。そしてその後、キリスト教が誕生することになる。第4回では、ユダヤ人を襲った様々な苦難と、なかなか民を救おうとしない神について、当時の人々がどのように考えていたのかを探る。

NHKテレビテキスト「100分 de 名著」はこちら
○NHKテレビテキスト「100分 de 名著」
「旧約聖書」2014年5月
2014年 4月25日発売
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こぼれ話。

「旧約聖書」こぼれ話

ぼう大な分量の旧約聖書をわずか100分にまとめた今回のシリーズ、いかがでしたでしょうか。
こうした複数の執筆者によって、長い時間をかけて自然発生的に作られた文書は、解釈が大変です。
これは聖書のことというより、一般論ですが、こんなことがあります。
ある過去の出来事を、後の時代になってから、後世の思想や価値観に基づいて記した文書があったとします。その場合、その出来事があった当時の思想や価値観とは異なる解釈に基づいて記録したということなので、その出来事は、実は記録の通りではなかったのかもしれません。
すると執筆当時の思想で説明したくなりますが、執筆当時の価値観は、過去の出来事をきっかけに生まれたものなので、まず過去の出来事から説明しないと始まらない、というふうに、話がぐるぐる回り始めます。 しかしまとめないといけないので、どこまで言えるのか言えないのか、構成に苦労するというわけです。
難しくてわかりにくかった、という部分もあったかもしれませんが、この番組をきっかけにして、聖書についてより深く学んでいただければ幸いです。
6月は柳田国男の遠野物語。ちょっと怖い話も含めてお伝えします。どうかお楽しみに!

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