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高崎 東日本大震災から12年 つるしびなに込めた思い

  • 2023年03月08日

「ほっとぐんま630」でお伝えしている「菅原が行く、中谷が行く」。今回は高崎市で“つるしびな”作りをしている夫婦を訪ねました。宮城県出身の2人は、12年前に東日本大震災を経験しています。移り住んだ先の高崎で、被災前から行っていた“つるしびな”作りを続ける夫婦の思いを取材しました。
                 (前橋放送局キャスター中谷実夏/2023年3月取材)

震災で自宅が全壊 移住に後ろめたさ

高崎市でつるしびなの教室を開いている薗辺さん夫婦です。
妻の美和子さんが人形を、夫の祝夫さんがつるすための土台などを製作しています。

「私の背丈よりずっと高い!」

江戸時代から伝わる、つるしびな。当時はひな人形が高価で入手が難しく、その代わりに親族や地域の人が子どもの成長を祈り、小さな人形を作ってつるしたのが始まりです。

2人は仙台市に住んでいましたが、東日本大震災で被災し、自宅が全壊。
震災の翌年に息子さんの住んでいた高崎市に移住しました。

薗辺美和子さん
「後ろめたさがあった。(被災地の)みんなで約束して復興しようと思っていたのに、私たちだけぽっとこっちにきて、普通の生活ができる。ああ、申し訳ないな、みんな向こうで必死に頑張っているのにみたいなのもあって」

つるしびなが前を向くきっかけに

そんな複雑な思いを抱える中、震災前から行っていたつるしびなの教室を続けることが慣れない新生活に溶け込むきっかけとなりました。

薗辺美和子さん
「とにかく前に進まなきゃ、悲しんでばかりいたりとか悔やんでばかりいてもどうにもならないので。好きなことを夢中でやっていると、その瞬間だけでもつらいことを忘れたりするのでね。おかげで地元の人たちとも関われたりとか輪が広がっていったりしました」

その後、薗辺さんは毎年、桃の節句と3月11日に合わせて復興への思いを込めたつるしびなを飾っています。

「仙台の人たちもみんな徐々に徐々に復興してきているんで、『元気で住んでいるよ』『おうちも新しくしたよ』って聞くと、ああこっちの願いも届いたかなって気もあるし。まだまだ手のきくかぎり、目の見えるかぎり作っていきたいなって思っています」

この日も地域の人たちが見学に訪れていました。

訪れた人

「すごい数なんですよね、毎年なんですけど本当に感動します」

私もつるしびなの人形作りを体験させてもらいました。

「きょうはウサギさんを作りましょう」

型紙に生地を縫い付けてきます。生地は昔の着物に使われていたちりめんを使い、ひとつひとつのパーツを仕上げていくと徐々にうさぎの形に近づいていきました。

「できました!」

苦戦しつつも、ようやく完成。実はこの人形ひとつひとつに意味があります。
私が作ったうさぎは厄よけ。

えびはその形状から、年を経ても元気で長寿。

ナスは小さくても大願を成すという意味が込められています。

薗辺さんは、つるしびなを通して、ふるさとへの復興の思いはもちろん、移住後に支えてくれた群馬の人たちへ感謝の思いを伝えたいといいます。

薗辺美和子さん
「大変な思いしたのねとか優しいことばをかけてくださったりとか群馬の人は温かくていいなって。今はここに来てよかったと思えるようになったの。こっちの(群馬の)人たちと元気にみんなで進んでいきたいなと思っていますね」

  • 中谷実夏

    前橋放送局キャスター

    中谷実夏

    今年度からキャスター。夕方のニュース番組「ほっとぐんま630」を担当。群馬県に住むのは初めて。「楽しそう」、「気になる」場所に積極的に足を運ぶ

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