ページの本文へ

ぐんまWEBリポート

  1. NHK前橋
  2. ぐんまWEBリポート
  3. 伊勢崎 「江戸小紋」 染め物の伝統文化を守る職人

伊勢崎 「江戸小紋」 染め物の伝統文化を守る職人

 

「ほっとぐんま630」でお伝えしている「菅原が行く、中谷が行く」。今回は、江戸時代から伝わる伝統的な染め物「江戸小紋」についての話題です。現在、伊勢崎市に工房を構え、伝統を守ろうと取り組む職人を取材しました。
                 (前橋放送局キャスター 中谷実夏/2023年1月取材)

こちらの反物に仕上げられた染め物が「江戸小紋」です。
一見、遠くから見ると無地のように見えますが…。

近づくと模様が見えてきます。
こまやかなデザインが特徴で、現在も着物などに用いられています。

これらを作った伊勢崎市出身の江戸小紋師、菊池宏美さんです。

菊池宏美さん

「江戸小紋はこういう型紙を使って染めるものだが、つぶつぶの穴が空いて柄が作られているが、これは三重県の鈴鹿市の白子というところに職人さんがいて、職人さんが掘られたものがここにあります」

この型紙自体も貴重で、菊池さんが三重県の型彫り職人の元まで行って買い集めたと言います。
型紙を使って、のりで生地に模様となる土台をつけていきます。

2つ点を目印にのりを重ねていくと‥。

模様がうまくつながり、境目もわからなくなっています。

26年ほど前から江戸小紋を作っている菊池さん。意外な背景がありました。
菊池さんは高校卒業後、早稲田大学に入学。その後はソニーに入社し、活躍していました。

菊池宏美さん

「めまぐるしくメディアが変わっていく中で、そこ(社内)にいるデザイナーの方に、この世の中で完成されたものはあるのかと聞いたら、『着物がそうじゃい?』と言われて。わたしの両親が呉服屋だったので、えっと思って」

そして、実家に帰省中に偶然通りかかった前橋市の呉服店で、後の師匠となる江戸小紋の第一人者である藍田正雄さんと知り合いました。

その後、29歳の時に会社を退職し、職人の世界へ。

菊池宏美さん

「先生はのちのちもうメーカーで勤めている人が修行するのは大変だから考えなさいと言ったというが、わたしはあしたから来なさいと聞こえたのですぐに迷いなく修行に入りました」

2011年に独立した菊池さん。独立から5年後には東京での個展などにも出展しました。

こちらは去年、公募展で賞を獲得した作品。特徴は水蒸気が立ち昇る様子を表現した「しま模様」。
菊池さんは、伝統を守る上で大事にしていることがあるといいます。

菊池宏美さん

「長く時間をかけて作られてきた技術に真摯(しんし)に向き合う、基礎を大切にする。一方、やはり今の生きている人たちに提供するものなので新しいものを作りたいという気持ちがあります」

そんな菊池さんがいま新たに挑戦しているのが、中柄という動きがあり華やかに見える模様に、従来の江戸小紋を組み合わせた作品です。

江戸小紋の魅力はどんなところにあるか、聞きました。

菊池宏美さん

「着る人が美しい、着姿が美しいなと思えるところですね。あとはどこまでもゴールがない、仕事としてはどこまでもゴールがない。通過点ではなくて長く残る仕事をしていると思って仕事をしています」

菊池さんは、「はじめて江戸小紋に触れた方がときめくような作品を作れたら」と話していました。
菊池さんの作品は前橋市の呉服店などで購入できるということです。

  • 中谷実夏

    前橋放送局キャスター

    中谷実夏

    今年度からキャスター。夕方のニュース番組「ほっとぐんま630」を担当。群馬県に住むのは初めて。「楽しそう」、「気になる」場所に積極的に足を運ぶ

ページトップに戻る