安中 秋間梅林を次の世代へ 梅に恋した女性の「決意」
- 2023年01月31日
安中市の地域おこし協力隊で、秋間梅林を拠点に活動している黛若葉(まゆずみ・わかば)さん。農家の高齢化や後継者不足などで、年々、梅林の維持・管理が厳しさを増すなか、梅林を次の世代に残そうと取り組んでいます。活動にかける思いを聞きました。
(前橋放送局アナウンサー 原口雅臣 /2023年1月取材)
梅のふるさと 秋間梅林
「秋間梅林にお邪魔するのは2回目なんですけど、きょうは、天気も良くて、暖かくて、梅もちらほら咲き始めていますね」
「すぐとなりで咲いているのは、実のならない花梅です。3月になると、梅林いっぱいに白と赤と両方の花が一気に咲いて、すごくきれいなんですよ」
安中市を代表する観光名所・秋間梅林。およそ50ヘクタールの斜面に、3万5000本もの梅が植えられています。
花の季節には大勢の観光客が訪れる梅林では、25軒の農家が、年間およそ60トンの梅を生産しています。
黛さんは高崎市出身。広告会社などを経て、おととし10月から、秋間梅林観光協会所属の地域おこし協力隊として、観光PRや梅の販路拡大などに取り組んでいます。
きっかけは双子の姉
「黛さんは、どういういきさつで、安中市の地域おこし協力隊に応募されたんですか?」
「双子の姉が、私より先に秋間梅林にかかわり始めて、今は、梅農家になっているんですけれども、姉から、農家が経営する食堂とか、梅もぎの人手が足りないからって声をかけられて、手伝いに行くようになって…」
「それがきっかけで梅農家の人たちとも知り合いになって、気がつけば、すっかり農家の人たちにほれ込んでいました」
「梅農家の皆さんのどんなところに引かれたんですか?」
「温かさですね。外から来る人を拒まないところがすごくうれしかったのと、『こんなことをやりたい』と言っても、『どんどんやっていいよ』と受け入れてくれて…」
「なんだか我が家のような、第2のふるさとみたいな感じがして。この場所をなんとかしなきゃいけないっていう気になりました」
高齢化と後継者不足を乗り越える
黛さんは、同僚の田村聖志(さとし)さんとともに、農家の指導を受けながら、梅の生産にも挑戦しています。任されたのは耕作放棄地だった場所です。冬の間は、毎日のように、伸びた枝のせん定を続けています。
「秋間地区では、80歳の方も現役でやられているのが現状です。『もう梅作りができないから、代わりにやってくれないか』という話は何件もいただいていて…」
「来年も同じメンバーで梅作りができるか分からない現状なんです。もしかしたら、入院される方もいるかもしれないし…。農家の高齢化は、緊急性の高い問題だと思っています」
「黛さんは、秋間梅林を何とかして存続させたいと強くおっしゃっていますよね。後継者がなかなかいないなか、美しい梅林を守るにはどうすればよいと考えていますか?」
「なぜ、後継者がいないのか、 多分、梅農家をやりたいと思う人がいないからだと思うんです。梅農家がみんなが憧れる職業になるためには、稼げる仕事にしていかなくちゃいけない」
「梅の加工を進めたり、一緒にやる仲間を集めて若手を育成したり、そうしたことに力を入れなくちゃいけないと思いますね」
秋間梅林に加工場を
「そのために、黛さんは何をしますか?」
「共同の加工場を作りたいですね。何とかして、その道筋をつけたいと思っています。いい梅、いわゆるA品は出荷ができるんですけれども、どうしてもB品が出てしまう…」
「梅ジュースを作る共同の加工場があれば、B品の青梅、生梅を一気に加工に回せて、それが売り上げとして農家に入ります」
「しかも、観光で来た人たちも加工品作りを体験できて、また来たくなると思うんですね。1回だけじゃなくて」
「『花を見るだけじゃなく、いろんな体験もできるんだよ』とPRできたら、私と同じように、秋間梅林を第二のふるさとだと思ってくれる人が出てくるかもしれません。そんな場所に変えていけたらと思っています」
黛さんは、3年間の地域おこし協力隊の任期が終わった後も、秋間梅林を支え続けたいと話していました。ぜひ、若い力で、秋間梅林を盛りたててほしいと思います。
秋間梅林祭 2月18日(土)~3月下旬
問い合わせ 安中市 観光経済課 027-382-1111(代)