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群馬クレインサンダーズ 八村阿蓮 ルーキーシーズンの幕開け

  • 2022年10月26日

太田市に本拠地に置く群馬クレインサンダーズは、バスケットボール男子、Bリーグ・B1で2年目のシーズンを迎えました。今シーズンは積極的に補強を行い、フレッシュなメンバーで序盤、上々の滑り出しを見せています。
その“フレッシュマン”の1人が、ルーキーの八村阿蓮選手。開幕戦からデビューを果たし、兄でNBA=アメリカプロバスケットボールで活躍する塁選手に負けじと、存在感を示しています。
決意の「ルーキーシーズン」のスタート。プロでの第一歩は、自身のキャリアの中でも、ある大きな決断とともにありました。

(前橋放送局記者 中藤貴常/2022年9・10月取材)

同世代のトップランナー 兄は“ただの兄弟”

群馬クレインサンダーズ 八村阿蓮選手
「長いキャリアにしていくためにも、ルーキーシーズンでいかに結果を残すかというのは今後のキャリアに大きく影響するので、ことしは勝負の1年になると思います。ルーキーらしくフレッシュに、アグレッシブに頑張りたいです」

なみなみならぬ決意を語った、22歳の八村選手。
高校・大学ではチームの日本一に貢献したほか、世代別の日本代表にも選出されるなど、常に同世代でトップクラスの選手として注目されてきました。

〈チーム遍歴〉
富山県出身  
2016-18 宮城県・明成高校
2018-22 東海大学
2022-21 サンロッカーズ渋谷(特別指定選手)
2021-22 群馬クレインサンダーズ(特別指定選手)
2022-  群馬クレインサンダーズ(本契約)
〈日本代表歴〉
U-16、18、22日本代表

ただ、その中でもNBAで活躍する兄・塁選手と関連付けて見られることも少なくありませんでした。

八村阿蓮選手 ツイッターより

八村阿蓮選手
「仲のいい普通の兄弟です。プライベートなことも話しますし、今は遠くにいるのでたまにメールでやりとりもします。メディアではそう(兄と関連付けたほうが)言ったほうが分かりやすいということもあってそう言ってると思いますけど、同じ人間ではないので。ただの兄弟なので、そこは別というか、僕は僕だと思っています」。

「泰然自若」でプレーし、大学生だった去年12月、「特別指定選手」としてクレインサンダーズに加入。シーズン後に正式契約を勝ち取り念願のプロになりました。

パワーの源は“焼き肉”

取材中、そのパワーの源に触れました。大好物の焼き肉です。

中でも一番のお気に入りは「牛タン」。仲間の選手と舌鼓を打つ時間は数少ない、リラックスできる時です。

中藤記者

「八村選手はどんな人ですか?」

マリオ選手(練習生)

「とても明るいです。練習後でも音楽をガンガン流していていつも楽しそうです」

外食が多いという八村選手。近所のショッピングモールでパスタを食べたり、回転ずしを食べたりと、新天地・群馬での生活も楽しんでいます。

マリオ選手が書いた絵を見せてくれる八村選手

八村阿蓮選手
「一番好きな食べ物はロブスターですが、日本にはあまりないですね。なので、日本では焼き肉やステーキが特に好きです。休みの日はずっと家にいるので基本は映画見たりドラマ見たり、アニメ見たりという感じですかね」

プロの壁 下した決断は…

一方、コートでは厳しい現実に直面しています。

これまで持ち味として生かしてきた身長1メートル98センチ、体重102キロの体格も、プロでは珍しくありません。スピード、パワー、テクニック。どれをとっても学生時代との違いを感じています。

八村阿蓮選手
「もともとNBAでやっていた選手もいて“大きくて速くて強い”。そういう選手ばかりなので、大学とのフィジカル(体力)の差は強く感じました」

プロとして、どう生き残っていくのか。
出した答えは「ポジション変更」でした。

これまでのポジションは「パワーフォワード」や「センター」。
その名の通り「パワー」が必要なプレーが特徴です。

パワーフォワード・センター → ゴール下でのシュートやリバウンドが中心

主戦場は「ゴール下」ですが、八村選手の体格でも相手に劣る場合が少なくありません。

一方、変更後のポジション「スモールフォワード」の主戦場は広範囲。

スモールフォワード → 広範囲で多彩なプレー 

ゴール下まで一気に切れ込むスピードや、多彩なプレーが求められる一方で、体格がこのポジションとしては「大柄」というメリットがあります。

八村阿蓮選手
「世界レベルで見ると、ゴール下では僕の体格は小さいと思う。ただ、スモールフォワードで、100キロを超える日本人の選手は、ほとんどいないと思うので、逆にこの体格をアドバンテージとして使うことができる。フィジカルを生かしたドライブでゴールを狙っていきたい」

新たな武器 スリーポイントシュート

ポジションを変えるにあたり、八村選手は体作りから見直すことにしました。体脂肪を落として筋肉量を増やすことで、よりスピードに対応できる体に変えていきました。

さらに重視しているのがスリーポイントシュート
全体練習のあとには欠かさず残って練習を重ねてきました。

八村阿蓮選手
「持ち味がドライブだけだと、相手も警戒するポイントを絞れるのでディフェンスしやすくなります。コンスタントにスリーポイントシュートを決められるようになることで、相手もドライブとシュートの両方を警戒する必要が出てくるので、逆に得意のドライブも生きてくると考えています」

水野宏太ヘッドコーチ
「彼(八村選手)自身、ことしはポジション変更という大きなチャレンジがありますが、可能性は大いにあると思います。シュートもうまいですし、新たなポジションで逆に体格差を生かしたプレーができれば大きな武器になってくると思います」

“決意のシーズン”がスタート

10月1日、ついに開幕戦を迎えました。
これまでも特別指定選手としてはプレーはしてきましたが、「ルーキーシーズン」初戦ということで、気持ちの入り方も違っていました。
第1クオーター終盤、ついにデビューの時を迎えました。
スペースができるとボールを要求し、積極的にスリーポイントシュートを狙いました。
残念ながら決めることは出来ませんでしたが、その積極的な姿勢が相手のディフェンスを揺さぶりました。相手ディフェンスの脳裏に「外からのシュート」の選択肢を焼き付けたのです。

そして、第1クオーターの終了間際。
相手のディフェンスが「外」に注意を向けた一瞬の隙を突いて中に切り込み、パスをもらってから豪快なダンクシュート。開幕戦に集まったファンを沸かせました。

新たな「働き場」を見つけた八村選手。
一生に一度のルーキーシーズンを今後への大きな足がかりにする決意は十分です。

八村阿蓮選手
「スモールフォワードで、フィジカルからスリーポイントシュートまで、僕がトップだと言われるくらいのレベルまでいけなければ、ポジションを変更した意味がないと思っています。オフシーズンにしっかり準備してきたことを、試合で、コートの中で体現できるように頑張ります」

この原稿を書いている10月24日現在、クレイサンダーズは8試合で6勝2敗の東地区2位。八村選手も全試合に出場し、スリーポイントシュートを4割を超える高い確率で6本決めるなど、新たなポジションで結果を残しています。

八村選手は地道に練習を重ねて日本トップレベルのスモールフォワードを目指し、ゆくゆくは日本代表としてもプレーしていきたいと話していました。

  • 中藤貴常

    前橋放送局 記者

    中藤貴常

    警察・司法を担当後、現在は両毛広域支局で行政・スポーツなどを幅広く取材

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