妊娠中のひどいむくみと頭痛
Aさん(37歳・女性)は妊娠9か月の頃、足がむくみはじめたといいます。
「足がひどくむくんで、いつもより大きくなっていると感じました」
通常、妊娠中の足のむくみは心配のいらないものです。妊娠中は血液の量が増えたりお腹が大きくなったりすることで下半身に血液がたまり、足にむくみが起こりやすくなるからです。
しかし、Aさんにあらわれた症状は、足のむくみだけではありませんでした。
指輪が外せないほど手がむくみ、さらにお腹もむくみはじめたのです。
そして症状はむくみ以外にも。
「軽い頭痛と、視界にチカチカ飛ぶようなものが見えた。なんだか変だなと思いました」
頭痛と目の症状も出始めたのです。
おかしいと感じながらも妊娠中の不調はある程度しかたがないと思っていたAさん。
妊婦健診の時に医師から「妊娠高血圧症候群」と診断されました。
妊娠高血圧症候群とは?
妊娠高血圧症候群とは、妊娠中に高血圧になり、さまざまな症状がおこる病態を総称したものです。妊婦の20人に1人が発症する可能性があるといわれています。
原因として考えられているのは、以下のようなメカニズムです。
妊娠中、お母さんの体から胎盤を通じて酸素や栄養の含まれた血液が赤ちゃんへ送られます。しかし、胎盤の血管に異常がおきると、赤ちゃんへの血液が十分に流れなくなります。このとき、胎盤から血流の増加を促すさまざまな物質が出されます。
それによって血圧が上昇すると考えられているのです。
重症化すると、お母さんには「けいれん」「意識障害」「脳卒中」などの症状、赤ちゃんには「発育不全」がおこる可能性があるため、注意が必要です。
妊娠高血圧症候群と診断されたAさんのチョイス
妊娠高血圧症候群と診断されたAさん。
Aさんのチョイスは入院するタイミングを早め、帝王切開で出産することでした。
妊娠高血圧症候群になった場合、血圧や体重を管理するため、入院を早めて出産に備えるのが基本的な対応です。さらに、Aさんは症状が重かったため、自然分娩は体への負担が大きいと判断され、帝王切開を勧められたのです。
Aさんは、帝王切開で無事に二人の女の子を出産。
手術後も順調に回復し元気な体で退院することができました。
「みんなに支えてもらっての妊娠出産だった。家族で過ごす時間はすごく幸せで、楽しいことがいっぱいです」