新型コロナ 5類へ移行で何が変わる?幅広い医療機関が診療、医療費は自己負担も

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新型コロナ 大型連休明けから5類へ

新型コロナウイルス オミクロン株 新型コロナウイルス オミクロン株(画像:国立感染症研究所)

新型コロナの感染症法上の扱いが2023年5月の大型連休明けから変わります。現在(2023年4月時点)は重症化リスクや感染力が高い結核やSARS(重症急性呼吸器症候群)などと同じ2類相当ですが、5月8日から季節性インフルエンザや梅毒、麻疹などと同じ5類へ移行します。

移行の背景には、ウイルスが変異して重症化率が低くなったこと、ワクチンや治療薬が普及してきたこと、もはや全く未知のウイルスではなくなってきたことなどがあります。これまでは政府の要請に基づいて一律の対策が行われてきましたが、これからはほかの5類の感染症と同様に個人や事業者がそれぞれ対策を選ぶことになります。

具体的に何が変わるのか、ポイントを見ていきましょう。

行動制限はなくなる

行動制限はなくなる

外出の自粛や施設の使用制限といった行動制限はなくなります。これまでは、死亡者や重症者を少なくするために、特別な法律によって私権の制限を含む強力な対策が行われてきました。しかし5類に移行するとこうした要請自体ができなくなります。

幅広い医療機関が診療

幅広い医療機関が診療

これまで発熱外来など特定の医療機関だけが新型コロナに対応してきました。しかし、これからは幅広い医療機関が受け入れるようになります。外来診療を行う医療機関は現在の42,000から64,000まで増やす計画です。これは季節性インフルエンザを診療する医療機関の数と同等です。またコロナで入院できる医療機関は3,000から8,000に増やす計画です。

しかし、これまでコロナを診ていなかった医療機関では、院内の感染対策などが難しいことも予想されます。これには国や自治体の支援が必要です。具体的には感染を防ぐ設備の整備、防護の用具の確保、診療方法の手引の作成や周知などです。

また、患者さんをどの医療機関が受け入れるかを、これまでは保健所が調整してきましたが、これからは多くの場合、医療機関が自ら行います。ただし当面は、行政による調整の枠組みも生かす場合もありそうです。
こうした対応によって、新型コロナを診療する医療機関は段階的に増えていくと考えらます。

医療費は自己負担も

医療費は自己負担も

新型コロナの医療費は、これまですべて公費負担でしたが、これからは自己負担も求められます。検査や外来の診療については、一般の病気と同じように保険診療の自己負担分を患者さんが支払うことになります。ただし、高額なコロナの治療薬については9月まで公費負担が継続されます。

入院については医療費や食事代が自己負担になります。ただし、高額療養費制度を適用した上で自己負担分を月に最大2万円補助する措置が9月まで講じられます。ホテルなどに入る宿泊療養の制度も終了する方向です。
なお10月以降は、感染状況などを見て公費負担の延長や縮小を判断します。

コロナが5類に移行したあと、一人ひとりの感染対策はどうしたらいいでしょう。

マスクは個人が判断

マスクは個人が判断

マスクは「個人の判断で」という指針を国がすでに3月に示しています。これまでのようにマスクの着用を一律に呼びかけることはありません。屋外でも屋内でも着用するかどうかは一人一人の判断に委ねられています。交通機関、ホテル、デパートなど大勢の人が集まる場所でも、マスクについては運営する側がそれぞれ個々に判断できます。また、学校でも着用を求めないことになりました。

ただし、これからも次のような場面ではマスクの着用が望ましいと考えられます。

  • 本人が発熱やせきなどの症状がある、または一緒に住んでいる人がコロナに感染しているとき。もし外出するなら、ほかの人にうつさないためにマスクの着用が勧められます。
  • 高齢者施設や医療機関に入るとき。感染リスクの高い人が多いため、マスクの着用が勧められます。

ワクチンはまず高齢者などに

ワクチンはまず高齢者などに

新型コロナのワクチンは、これまで多くの人に免疫をつけることを目的に、繰り返し接種が行われました。今後はリスクの高い人の重症化や死亡を防ぐことが主な目的になります。そこで高齢者や基礎疾患のある人を対象に、5月8日からと9月からの、合わせて2回、ワクチン接種が行われます。一般成人を対象にした接種は9月から行われます。

感染症とどう向き合う?

新型コロナ感染の波は今後も繰り返されることが予想されます。感染者が大きく増えれば重症者や死亡者も増えることになります。過剰な緊張感はいらないとしても、警戒を怠ってはなりません。新型コロナが今後、かぜのように常にある感染症になるのか、季節性を持つインフルエンザのようになるのかも、まだわかりません。また、今後、世界のどこかで新しいウイルスが出現する可能性もあります。

新型コロナの感染が続いた3年余りを振り返ると、日本は、高齢者つまりハイリスクの人がこれほど多いにもかかわらず、亡くなる人の割合は諸外国に比べれば低く、その点では、さまざまな人の努力が報われたのだと思います。

一方、日本では感染状況の把握や感染者の受け入れ調整などで、デジタル技術の活用が遅れていることがわかりました。また、医療体制では、人員や設備に十分な余裕が確保されていないために、緊急時には、ひっぱくしやすいと言えます。こうした課題は、緊急時になって取り組むのではなく、平時から改善しておく必要があります。

新しい病気への対応には、最初から正解はありません。新型コロナの体験で学んだことを生かしつつ、謙虚に冷静に対応していきたいものです。

この記事は以下の番組から作成しています

  • きょうの健康 放送
    ニュース 「新型コロナ 5類へ移行で何が変わる?」