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平成23年度 第3回
視聴者のみなさまと語る会〜NHK経営委員とともに〜inとかち
(平成23年7月2日開催)

 

<会 合 の 概 要>

 「経営委員会による受信者意見聴取」の平成23年度第3回は、帯広放送局で実施し、「放送」「経営など全般」の2つのテーマで、公募による45人の視聴者の皆さまからご意見を伺った。

 

<会 合 の 名 称>

視聴者のみなさまと語る会〜NHK経営委員とともに〜inとかち

 

<会 合 日 時>

平成23年7月2日(土)午後2時から午後4時まで

 

<出  席  者>

〔経営委員〕

石 島 辰太郎(委員)

井 原 理 代(委員)

勝 又 英 子(委員)

浜 田 健一郎(委員)

〔執 行 部〕

石 田 研 一(理事)

木 田 幸 紀(理事)

堀 江 威 光(帯広放送局長)

〔視聴者〕

公募による視聴者45人

〔司 会〕

畠 山 智 之 アナウンサー

 

< 会    場 >

 帯広放送局 1階スタジオ

 

< 開 催 項 目 >

 以下のとおり進行した。

 

1 開会あいさつ

2 経営委員による説明

  協会の基本方針その他協会の運営に関する重要な事項について

3 意見の聴取

 (1) NHKの放送について

 (2) NHKの経営全般について

4 閉会あいさつ

 

 「視聴者のみなさまと語る会」終了後、「ネットワークニュース北海道が見つめた1年、これからの1年」と題して、登坂淳一アナウンサー・寺門亜衣子アナウンサーのトークショーを開催した。

 

<概要・反響・評価>

  • 公募の結果、はがき・ホームページを通じて計288人から参加申し込みがあり、無作為の抽選を行い、当選者80名に案内を送付した。その際、当選者の意見の把握と参加意思の確認のために事前アンケート調査を実施したところ、52人から回答・返送があり、47人が参加すると答えていた。当日は45人が来場、参加した。

  • 会合は、「放送」と「経営全般」の2つのテーマを設定し、進行した。震災時放送時のアナウンサーの体制、選挙報道、国際放送の役割、テレビとインターネットの特性の違い、23年度の受信料収入の見込みなど多岐にわたった。

  • 参加者全員のご意見を伺う時間がなかったため、終了後、意向収集のアンケート調査を行ったところ40人から回答があった。回答者は20代2人、30代13人、40代6人、50代3人、60代8人、70歳以上7人、未記入1人で、30代の参加が多かった。

  • 参加者の満足度については、「たいへん満足」あるいは「満足」と答えた人が83%、「ふつう」と答えた人が13%、「不満」あるいは「たいへん不満」と答えた人はいなかった。


◆協会の基本方針・重要事項を説明

 (浜田委員)

  • NHKの経営委員の浜田健一郎(ANA総合研究所 代表取締役社長)で ございます。平成22年6月に任命されました。私、若干、帯広には思い入れがあります。今般、3月にAIR DO(エア・ドゥ)の帯広―東京線が就航しましたが、AIR DOの経営再建のお手伝いをしていた関係で帯広にはいつか来たいと思っていました。それでは、経営委員会の役割について始めさせていただきます。
  • 経営委員会の役割は、放送法に明文化されており、NHKの経営の基本方針などの議決や、松本会長以下、NHK執行部の役員の業務の監督など、NHKの経営に対して重い責任を負っております。経営委員会の委員は、衆参両議院の同意を得て、内閣総理大臣より任命をされています。委員の選任に当たっては、教育、文化、科学、産業その他の各分野及び全国各地方が公平に代表されることを考慮しなければならないと放送法で定められています。経営委員の任期は3年で、再任されることもあります。また、経営委員の中から監査委員が任命され、経営委員会を含めた役員の職務の執行を監査しています。
  • 放送法には、私ども経営委員がその職務を果たすため、視聴者の皆さまのご意見を直接伺うことも定められています。本日は、皆さまからNHKに対する忌憚(きたん)のないご意見をお聞かせ願いたいと思っておりますが、その前に、この会合においては、経営委員が協会の基本方針や重要事項を説明することという定めもございますので、いま少しお時間をいただき、3か年経営計画と平成23年度収支予算、事業計画についてご説明します。
  • NHKでは、平成20年10月に平成21年度から23年度までの3か年計画を策定し、視聴者の皆さまに公表しました。この経営計画では、「いつでも、どこでも、もっと身近にNHK」をスローガンとして、2つの経営目標を立てました。1つ目の経営目標は、NHKへの接触者率を23年度末までに80%にすることです。2つ目の経営目標は、受信料の支払率を23年度末までに75%までに高めることです。
  • これらの目標を達成するために、9つの方針を掲げました。
    • 方針1 「視聴者のみなさまの信頼を高めるため組織風土改革に全力をあげます。」
    • 方針2 「日本の課題、地球規模の課題に真正面から向きあいます。」
    • 方針3 「放送・通信融合時代の新サービスで、公共放送の役割を果たします。」
    • 方針4 「地域を元気にするための拠点となります。」
    • 方針5 「日本を、そしてアジアを、世界に伝えます。」
    • 方針6 「円滑な完全デジタル化に向けて重点的に取り組みます。」
    • 方針7 「構造改革を推し進め効率的な体制で受信料の価値をより大きくします。」
    • 方針8 「受信料を公平に負担していただくための取り組みを強化します。」
    • 方針9 「環境経営に着実に取り組みます。」
    受信料の支払率は、不祥事へのご批判から、平成17年度には70%を下回りました。受信料をお支払いいただいている方が、お支払いいただいていない方に対して感じる不公平感を解消していくことは、公共放送を支える受信料制度を堅持していくために取り組まなければならない極めて重要な課題であると認識しております。
  • 今年1月に経営委員会で議決後、総務大臣に提出したNHKの平成23年度収支予算と事業計画の概要をご説明します。
    • 受信料収入など事業収入は、22年度予算比で140億円増となる6,926億円でした。番組制作など事業支出は、完全デジタル化対策を強化しつつ、経費の圧縮に努め、22年度予算に比べ38億円増の6,886億円に抑えました。具体的には、完全デジタル化対策のためにデジタル追加経費を34億円増額し、さらにデジタル移行に万全を期し、不測の事態に対応するために予備費を20億円増額しております。
      一方、あらゆる業務の点検を行い、その他の支出については極力圧縮して、対前年度マイナスに抑えました。これにより、収入から支出を差し引いた事業収支差金は、前年度の赤字から40億円の黒字となります。

    • 23年度の受信料収入は、22年度予算に比べて130億円増の過去最高となる6,680億円を計上しました。これにより、23年度末の受信料の支払率は経営計画どおりの75%の達成を目指します。

    • 衛星放送は、4月1日から3つのチャンネルを2つのチャンネルに再構築し、高画質のハイビジョン放送で個性を打ち出した新しいサービスを開始しました。また、地域の情報を全国へ向けて積極的に発信します。

    • パソコンや携帯端末などでも、NHKの確かな情報に接していただけるよう、取り組んでいます。インターネットで番組を有料配信するサー ビス「NHKオンデマンド」については、さらなる定着と利用者の拡大に向け、一層の充実を図っていきます。

    • 国際放送は、24時間英語ニュースを充実するとともに、地域の放送局が制作した番組を英語化するなど、日本とアジアの情報発信を強化します。

    • NHKでは、視聴者の皆さまの声を経営に生かすよう努めております。これからも皆さまの声を反映させて、経営改革を推進するとともに、人材育成の強化とコンプライアンスの徹底により、組織風土の改革を図ってまいります。

    • 業務別予算は事業支出の73%を国内放送及び国際放送の番組の制作と送出に充てています。

  • 本日、ここNHK帯広放送局にお集まりいただいた皆さまからいただくご意見・ご要望は、私ども経営委員会はもちろん、執行部とも共有して、今後のNHKの在り方に反映させてまいりたいと考えております。よろしくお願いいたします。

 

 

《視聴者の皆さまからのご意見とNHK側からの回答》

 

第1のテーマ:NHKの放送について

【会場参加者】
 東日本大震災のときのニュースでは1時間ごとにアナウンサーが交代で出ていたが出演回数の多いアナウンサーは明らかに顔が疲れ、声もかれているように感じた。緊急時の体制について教えてほしい。今回を機に改善されたことはあったのか。畠山アナウンサーにお尋ねしたい。

(畠山アナウンサー)
 震災報道のとき、アナウンサーが固定されていたというのは否めません。私も、武田真一アナウンサーもそうですし、登坂淳一アナウンサーも札幌から東京へ応援に来ました。野村正育アナウンサーも入りました。なぜ固定するかというと、過去の経験が非常に大きな力を発揮するからです。
 実は、放送に出ない場所には倍以上の人数のアナウンサーがいて、今どういう状況が起きているかをメモして、画面に出ているアナウンサー側に渡しています。まとめる人間はまとめる作業を続けた方が効率よく、放送を担う人間も出続けたほうが、かつて1時間前はこういう情報を伝えたということを知っていますから、伝えやすいという面があります。
 ただ、視聴者の皆さまに疲れた印象を与えているんだとすれば、検討していかなければいけないと思います。
 ここから先は個人の意見だと思って聞いてほしいのですが、伝える側は実は全く疲れていません。あのような状況下では、自分の一言で誰かの命が助かるのであれば、ずっと続けたいという気持ちです。伝えている情報の重みや、伝えたい気持ちがどんどん深まっていると、ぜひお感じいただきたいと思います。

(石田理事)
 私はもともと報道担当で、以前、緊急報道を担当しているテレビニュース部長もしていました。あれだけの大災害とか、あと台風災害のときは、アナウンサーは4〜5人、ニュースの編集責任者も4〜5人でチームを作って、交代で担当していきます。一方のチームが2時間放送を担当したあとは準備にまわり、もう一方のチームが次の2時間を担当する。ぐるぐると交代しながら、放送を続けます。重要なものの場合、「ニュース7」や「ニュースウオッチ9」、「おはよう日本」のキャスターなど、NHKの報道の中でも最も頼りになるアナウンサーが担当します。今回の場合、3日間放送を出し続けました。次に大きな災害があったときも、ふだんニュースを伝えているキャスターを中心にチームを組む体制になると思います。ふだんテレビに出ているキャスターたちが伝えるということが大事だと思っています。

【会場参加者】
 選挙の放送のときに開票ゼロなのに、NHKで早々と当確が出ることがある。出口調査やその他の調査で、確実性があって当確を打つのだと思うが、やはり疑問だ。また選挙のとき「選挙特報」としてあれほど長時間にわたって放送する理由はなにか。

(石田理事)
 テレビニュース部長の前に、政治部長をやっていました。開票ゼロ%で当確はおかしいのではないかというご意見はあります。一方で、投票が終わったら、なるべく早く結果を伝えてほしいという要請もあります。事前の情勢取材や世論調査でかなり大差があり、開票所で取材している出口調査などでも極めて大差がついている場合に限り、開票時間の夜8時に当確を打つことが多いのです。
 また、衆議院選挙の開票のとき、まずどの党が第一党になったのか伝えることは、次の総理大臣が誰になるかに直接つながってくることなので、投票した全国の何千万人の有権者のために大事なことだと思っています。
 長時間でないかというご意見もいただきます。国政選挙の場合は、すべての議席が決まるまで放送します。したがって、衆議院選挙とか参議院選挙の場合は長くなります。知事選とか市長選だと開票が早く、100%まで開票が終われば、その先は放送しないこともあり、選挙の種類によって異なります。

【会場参加者】
 NHKは親が見ていたので、私も子供のころから見ている。当時と今を比べると民放のような番組もあり、年配の人たちの抵抗もあると思うが「サラリーマンNEO」のような、見ていて楽しいバラエティー系の番組を今後も望む。北海道制作の番組として「アナブロ」もすごくおもしろいと思う。

(木田理事)
 NHKの放送で一番大事なことは、多様な番組があって、いろいろな方がご自分の楽しさを発見できるということだと思っています。
 調査の結果、ご高齢の方にはNHKの番組を押しなべてよく見ていただいています。その反面、10代、20代の人はテレビを見ること自体かなり減っています。30代から40代の方も年配の方に比べればかなり数が少ないというのがNHKの傾向です。
 多様な番組を皆さんにご提供するというのがNHKの使命ですので、20代、30代、40代の方にも楽しんでもらう番組作りをしようと特にこの5〜6年間は力を入れています。あえて今までのNHKにはない番組を作って、新しい魅力を作り出し、それを多様な世代の皆さんに届けたいという思いでやっております。

(浜田委員)
 私自身は、どちらかというと今までのNHKらしさを大切にしたい。そうはいっても、接触者率も重要だなと、そんな感じで、番組については見ております。

(石島委員)
 大学を運営している立場で申しますが、どんな番組でもある程度その中に時代背景を感じたり、考えたりできる要素が欲しいと思います。これは、従来、NHKの番組の中に継承されてきた大きな資産だと思います。そういう部分をできるだけ残しながら、表現の仕方などを工夫し、いろいろな世代に受け入れられるような形に改善していくべきだろうと考えています。

(井原委員)
 NHKらしい番組というのは、人生そのもの、あるいは社会の課題そのものに真正面から取り組んでいる番組だと思っています。私は常勤の委員になって、いろいろな現場へ行く機会があります。「のど自慢」の予選では、参加者が与えられた1分ほどの短い時間に自分のこれまでの人生を映して歌っておられる姿がとても心に残りました。人生の哀歓や社会の抱える課題をとにかく真正面からとらえていく。そこがNHKらしさではないかと感じます。

(勝又委員)
 公共放送の中でも若い人にも訴える番組はこれからもいろいろ開拓していく必要があると思います。NHKに求められているのは、見たあと心が温まるような番組、節度を持った番組であってほしいと思っています。

(堀江局長)
 さきほど「アナブロ」をおもしろく見てくださっているという話がありました。「アナブロ」は札幌局が中心になって作っています。東京だけでなくて、ローカルでも若い人たちに番組を見てもらいたいという思いはあり、さまざまな試みをしています。ローカルの番組では、いろいろな冒険ができる場合があります。
 帯広局では地元の大学や短大に通っている若い方と一緒に番組を作ったり、大学に行って放送の話をさせてもらったりということもやっています。

【会場参加者】
 私は福祉関係の仕事をしている。勤めている施設は高齢者が中心で、寝たきりの人も多い。入居者は、食事の時間やおやつの時間にテレビを見るのだが、みんなとても楽しみにしている。そうした時間帯に時代劇など高齢者向けの番組を増やしてほしい。夕方は子供向けの番組も多いが私は必要ないと思う。

(木田理事)
 たくさんのチャンネルがあれば、視聴者の皆さんのニーズを十分満たせるよう、何時から何時はこの層に向けてと編成できるのですが、現実は限られたチャンネルの中ですので、いろいろ苦心して決めています。
 デジタル放送が受信できる機器ですと、電子番組表から簡単に録画する機能のものも付いています。録画で番組をご覧になる方の割合が、この半年ぐらいでとても全国的に上がってきているのがNHKの世論調査でも分かっています。技術が発達していくと、ひょっとすると好きなときに好きな番組を録画ではなく、もっと簡単に見られる時代が来るかもしれません。

【会場参加者】
 地震がきたとき、ちょうどNHKでは国会の参議院の予算集中審議を放送していて、参議院が揺れている様子を見た。民放では報道番組をやっている時間で、仙台や岩手のあたりの沿岸部にも専属カメラマンがいるようで、かなり早い時間にいろいろな映像を見ることができた。NHKでは、大津波が来るという同じ画像ばかりだった。一番、NHKが困ったのは、仙台空港が使えなかったからヘリが飛ばなかったことだったのでは。やっぱりこういうときは民放だなと思った。
 選挙についての意見はさっき出たが、私は最後の一議席、一票までやってほしいと思う。また、NHKのいまの国会中継では少ないと思う。国会議員は、今日はテレビ中継があるから頑張らなければならないという意識があると思う。そういう緊張を絶えず与えるためにも国会中継をたくさんやってほしい。

(石田理事)
 NHKのヘリコプターは、東日本大震災の時、仙台空港から飛び立ちました。仙台空港には、NHKのヘリコプターがあり、カメラマンが常駐しているので、地震の直後、NHKのヘリコプターは飛び立つことができました。逆に民放のヘリコプターは1機も飛び立てないうちに、津波が来て、撮れなかったのです。名取川付近で津波が一つの筋となって襲ってくる映像は、NHKのヘリコプターが生で撮ったものです。その映像は日本だけなく、同時に世界中の放送局に流れました。
 国会中継についてNHKは、総理大臣の施政方針演説や代表質問、衆議院・参議院の予算委員会や、大震災の特別委員会などの質疑のうち総理大臣が出席するものについて、一定の方針を決めてきっちり国会中継で伝えることにしています。ご不満もあるかと思いますが、ご理解いただければと思います。

(畠山アナウンサー)
 私自身、震災のときに大津波警報が出ていると伝えていた人間の一人です。今、お話を伺って、なるほどと思ったことが1点あります。民放の場合、例えば家の中が揺れたり、放送局が揺れたり、照明ががたがた揺れる、そういう映像は、これから大変なことが起きるのではないかと、見る人にインパクトを与えたかもしれません。これからどうすれば、もっと多くの人たちの命を救う放送ができるのか、今後われわれも考えていきたいと思います。

(石田理事)
 今回の大震災では、例えば宮城県とか岩手県とかという単位でなくて、石巻や気仙沼などの地区ごとの生活情報や病院の情報など、被災者にとって大事なものをもっときめ細かく放送できなかったかというご指摘はあり、今後の課題です。放送は波の数が限られているので、どうしても県単位になります。今回の経験から言うと、もっとインターネットを使ってそういう情報が流せないかとか、それから地元のコミュニティFMがいろいろな形で放送を伝えているので、今後の災害放送にあたっては、市民とか被災者に役立つために、今のラジオとかテレビだけではなくて、ネットの活用について研究していきたいと思っております。

【会場参加者】
 多分、検討する時間はあまりないと思う。いまも各地で頻繁に地震が起きている。早い対応をお願いしたい。

(畠山アナウンサー)
 アナウンサーの間ではすぐに検討しました。「大津波警報が来る。高台に避難してください」と呼びかけたにもかかわらず避難しなかった方がいらしたのです。それは、私たちにとって忸怩(じくじ)たる思いです。どう言えばもっと逃げてくれたのか、叫んだほうがよかったのかなど、話し合いました。

(浜田委員)
 今の件について、経営委員会の立場から少し意見を述べさせていただきたいと思います。NHKは、災害対策基本法という法律で指定公共機関として定められた唯一の報道機関です。ですから、法律で大災害のときは災害情報を伝えなければならないとなっています。今、畠山アナウンサーから話がありましたが、日ごろから災害対応についての訓練をNHK内部ではよく行っています。私は交通機関に勤務していた者です。社内ではそれなりに訓練をやっていましたが、私どもが見ても、NHKの災害対応に対する訓練はかなり進んだものだと思います。NHKにとって最も大切なことは、公平・公正な信頼性の高い情報を提供し、皆さまに、安心・安全、そして満足していただける放送事業を確立することだと思います。

【会場参加者】
 地震の報道に関してだが、私の周りの人はほぼ全員NHKをずっと見ていた。語弊があるかもしれないが、民放は興味本位で見るには映像にインパクトがあった。しかし、より正確な情報を得るためにはNHKだと思った。アナウンサーも落ちついていて、つくづくニュースはNHKだと確信した。
 質問だが、民放では制作会社が番組を作っているようだが、NHKの場合はどうか。ニュースは別にしても、BSの紀行番組、たとえば「グレートサミッツ」のようなきっととてもお金がかかっているだろうと想像する番組は、NHK単独で作っているのか、制作会社が作っているのか。

(木田理事)
 NHKのニュースや番組の制作方法には、大きく3通りあります。1つ目は、NHK本体で制作する場合です。NHK職員が制作しますが、スタッフの中には外のディレクターやカメラマンが含まれることもあります。
 2つ目の種類は、NHKエンタープライズ、NHKエデュケーショナル、NHKグローバルメディアといった番組を作る能力を持った子会社が制作する場合です。広く言えばNHKグループで作っているようなものです。
 3つ目は、外部の制作会社に直接お願いして作るケースです。お願いするといっても、まず企画を出してもらって、その企画をいくらで制作すると提示してもらいます。それをわれわれで検討し、この金額でこんなに質の高い番組ができるのならお願いしますということで契約します。あくまでNHKの番組として出すわけですから、NHKの放送ルールにのっとっているか、番組上裏づけがとれているか、といったことをチェックします。
 BS1とかBSプレミアムは、どちらかというとNHKグループないしは外部のプロダクションが作っている割合が高いです。BSプレミアムの割合は、40〜50%ぐらいになります。BS1は、海外の放送局や制作会社が作った番組を買うこともあります。「世界のドキュメンタリー」などがそうです。

【会場参加者】
 経営9方針に「日本を、そしてアジアを、世界に伝えます」とあるが、日本を世界に対して発信するにあたって、どのように考えているのかをまず聞きたい。過去に日本とサウジアラビアのサッカーの試合があった際に、日本を紹介する番組をサウジアラビアで放送したと聞いた。その番組を見てサウジアラビアの人の間でとても日本に対する評価が上がったらしい。日本の放送局として、どういう発信をするのか教えてもらいたい。
 それから3つ目の経営方針に「取材・制作体制を強化します」とあるが事実をきちんと取材した上で、番組を作れる体制にあるのか。その取り組み方も併せて聞きたい。過去にあったウイグルやチベットでのニュースは、NHKでも放送したと思うが、見る人によってはチベット人が自分たちの意思で暴動を起こしたというように映ったと思う。一方的な取られ方をされない、中立な立場で番組を作れる体制になっているのか。

(石田理事)
 経営方針5番目の「日本を、そしてアジアを、世界に伝えます」というのは、国際放送を強化し、日本から世界に対して、日本がどういうことに関心があるとか、日本がどのような状況かということを世界の国に伝えたいということです。実際には、国際放送の1チャンネルを全部英語で出すようにして、世界に伝えるということ、それからできるだけ多くの国、多数の世帯に電波が届くようにしようということを中心に取り組みました。
 またアジアの取材拠点や人を増やし、取材強化をしました。今後は日本で何が起こったかということをもっと国際放送で世界に伝えていかなければならないと考えています。今回の大震災の後、福島の原発の問題があり、海外のかなり有力なメディアでも、ほとんど日本が壊滅しているというような状況で伝えられていたようなことがあったので、そういうことを払拭するためにも、日本から正しい情報を発信していかなければならないと思っています。
 世界の状況を見ると、国際放送の世界というのは、イギリスのBBCやアメリカのCNNなど、要するに英語圏の国が強くて、アメリカやヨーロッパの英語圏の国々が出している情報が、そのまま世界スタンダードになる傾向があります。そういう状況を受けて、フランスや中国や中東の各国の放送局が、国際放送についてここ数年、一段と力を入れてきています。フランスでも、日本円に換算して100億円以上の経費をかけて国際放送を強化しているそうです。NHKの国際放送の予算は全体で140億円ぐらいですが、経営資源をさらに配分し、一層国際放送に力を入れて、日本の現状を正しく伝えていきたいと思っています。
 先ほどのチベットの報道の件は、中国の中でもチベット辺りの情報は、取材記者がそこへ行くこと自体、難しい状況なので、そこで起こっている状況や事態をNHKも含めた世界の放送局が、全て正確に伝えられているのかどうかという点で、確かに不十分な点があるかと思います。もっと言えば、北朝鮮なんかについて言うと、本当に国内で何が起こっているのか、全く取材ができない状況です。ご指摘のとおり、国際放送や世界の情勢をきちんと伝えていかなければいけないと思うのですが、まだまだ不十分なところがあると考え、引き続き努力していかなければいけないと思っています。

(勝又委員)
 仕事柄、いろいろ海外とのおつき合いもありますが、ずっと言われ続けているのは、日本の発信能力が非常に弱いということです。経済情勢が悪いので、活字による情報がものすごく減っています。日本がどういう状況かを、海外の方が知る、ほぼ唯一と言っていいメディアが、NHKの国際放送ではないかと考えています。アニメやカルチャーも海外には進出していますが、日本の今の状況を伝える意味で、公共放送として国際放送を行うことは、非常に重要な役割です。
 先ほどの震災の報道について、石田理事から、NHKのニュースがすぐに海外の多くのニュースで取り上げられた話を紹介しました。通常は権利などの関係でそのまま放送するのは難しいのですが今回は各国で放送され、これらの映像は国際社会に大きなインパクトを与えました。日本が大変なことになっているというこの報道を見て、アメリカでも300億円近い募金があっという間に集まったり、今まで日本から援助金をもらっていたような国の人々が、何億円というお金を日本に出してくださっている。日本が国際社会とつながっているということを日本の人にも自覚させる事柄でした。また、今回の報道で、東北の人たちや日本全体がこの震災に対して向き合っている姿が世界に映像で紹介され、日本人の持つ節度や強さというものが、改めて見直されました。日本にいると必要ないと思われているかもしれないのですが、そういう意味でもNHKの国際放送は、重要な役割を担っているのではないかと思っています。

(石島委員)
 国際放送というのは、日本を世界に知ってもらうための放送ですが、では何のために知ってもらうのかというと、日本のプレゼンスを高め、最終的には、ある種の国益を高めていくのが目的であるのだと思うのです。あまり露骨に出ますと変な形になりますが、NHKの公平性という軸のもとで、できるだけそういうことを実現していくというのが、私は、国際放送の基本にあるべき、底辺にあるべきことではないかと考えております。

【会場参加者】
 先ほど石田理事は「北朝鮮なんか」という言い方をしたが、どうしてそういう差別的な言い方をしたのか。

(石田理事)
 取材のしづらいケースとして、チベットなどいくつかの地域や国には実際に記者がなかなか行けないことを伝えたかったのです。そういう具合にお聞きされたとしたら、取り下げさせていただきます。
 北朝鮮の場合で言うと、今、共同通信は支局員はいるけれども、NHKを含めていわゆるその他は支局員がいません。時々、外務大臣や総理大臣に記者が同行することがありますが、限られた内容しか取材できず、実際に北朝鮮の経済状態や政治の動向がどうなっているかについては、非常に取材がしづらくて、真実が伝わらないのです。そういう意味で、北朝鮮を例に挙げました。ご理解いただければと思います。

【会場参加者】
 民主主義でも社会主義でも、真実の報道をするのはなかなか難しいと思う。私は20代だけれども親の世代は、テレビや新聞の報道をそのまま信じていたと思うが、若い世代は、報道をそのまま信じることをしなくなってきているテレビ等の報道よりも、個人が配信するインターネットの情報のほうを若い人ほど信じていると思うが、この点をどう考えるか。

(石田理事)
 私は、ずっと記者として取材してきたので、その点は少し意見が違います。分からないことを調べて、その時点で分かっている範囲のことをきちんと書くのが取材です。確かめた上で取材するというのがジャーナリストの基本的な考えです。ある事象を捉えるときに震災のここの場面がこうなっているなど、そこにいる人のほうが正しい場合はもちろんありますけれども、全体として状況がどうだということを含めて伝えることが、ジャーナリズムの役割だと思っています。
 確かに、新聞にも、テレビの報道にも、誤った報道というのは過去いくつもあります。例えば松本のサリン事件で、当時、河野さんを警察が捜索したので、それをそのまま各報道機関は伝え、結局、最終的には警察の捜査も全くの間違いで、報道も間違っていました。そういういくつかの失敗や反省はありますけれども、その時々でできる限りの真実を伝える。先ほど浜田委員の言った公平・公正で、正確に、しかも迅速に伝えるということについては、いろいろ努めているつもりで、そのために全国各地の放送局に勤務する記者それぞれの教育、人材育成をどうするかということも含めて努力しているつもりです。
 伝えていることが偏っているのではないかとか、少し事実と違うのではないかとか、本当はもっと深い意味があるのではないかというご意見やご批判は真摯(しんし)に受けとめながら、よりよい報道ができるように努めていきたいと思っており、そういう姿勢で毎日の放送や報道に当たっているということをぜひご理解いただければと思います。

【会場参加者】
 それはわかるけれども、今までのやり方を根本的に変えないと無理なように思う。

(畠山アナウンサー)
 たとえば、インターネットで畠山智之という名前を検索してみてください。いろいろな情報が出ますが、書かれていることがすべて事実かというとそうではないと思います。ウィキペディアをご存じでしょうか。ウィキは、正確な情報を知っている人間が書き直していって、正しい辞書にしていこうというものです。事実を大勢の人が知っていれば、情報は正しくなっていきますが、情報を確たるものに仕上げていくためのメディアには、私はまだ達していないような気がします。今後、メディアはそれぞれの特徴を生かし、すみ分けが進んでいくのではという気がします。

【会場参加者】
 自分が言いたかったのは、真剣さが伝わってこないということだ。NHKのアナウンサーも結局は会社員なので、いくらその人が真剣でも上の人から「こうしろああしろ」と言われたら、逆らえないのではないか。

(畠山アナウンサー)
 NHKでは、そういうことはあまりないと思います。放送関係は、みんな会社組織ではありますが、一人一人がジャーナリストという気持ちを持って仕事に臨んでいます。

【会場参加者】
 これは違うと思ったことについては、自分で変えて報道したりするのか。

(畠山アナウンサー)
 違うと思った点は、相談して事実を取材します。石田理事は私が「ニュース7」を担当していたときの部長です。ニュースの項目を石田部長が決めて、こういう方向でいこうとなります。そのとき、もし私の取材したことと違えば、石田部長に確かめます。石田部長は自分の取材源の中で、事実かどうかを確認する。
 議論し、事実を確かめながら放送は作られています。

【会場参加者】
 私はかなり前からネットを使っているが、情報の正確さという点では、畠山さんに同感で、問題があると思っている。情報は、必ずそのソースを探すようにしている。まだインターネットの情報は危ないなと感じるからだ。
 民放のニュースをずっと見てきたが、アナウンサーの主観が結構強烈に入っていて、年をとるにつれて邪魔になってきた。
 NHKは非常に気持ちよく見ていられ、情報がすっきり入ってくるような感じがある。
 震災の話ばかりで申しわけないが、東電の会見をニュースで見ていて、もっと聞きたいと思っている途中で「東電の会見でした」と終わることが多いように思った。私は、ユーストリームを使って、会見を継続して見るようにしていたが、同じようにもっと見たいと思う人は多くいたと思う。今のデジタル技術で、1つのチャンネルを3つに分けられるのであれば、継続して会見を放送してほしい。
 ETVの「ネットワークで作る放射能汚染地図」というドキュメンタリー番組を見て、これは民放ではできない番組だと思った。民放は電力会社関係のスポンサーも多く、すごく難しいと思うが、ETVでやるのもかなり勇気が必要だったのではないかと思う。このままの路線でNHKには突き進んでほしいと思うし、本当にいい番組をこれからも作ってほしいと思う。

(石田理事)
 東電の会見では、ニュースの担当者が、もう主な話は出たのであとは細かい確認のやりとりになると判断し、一旦スタジオへ戻すというようなケースは実際にあります。一方、継続して見たいという方がいるのも事実です。放送のいいところは、同時に一斉に多数の人に伝えられることですが、電波には限りがあって、チャンネルが限定されます。だから放送が得意な分野と、インターネットの利点を生かした分野を仕分けて、メディアの特性を生かして伝えていければいいと思っています。
 ただ、実際、NHKはインターネットの使用については、放送法でいろいろな制限があってできないことも多いのです。ですから放送法を改正して、もっと自由にNHKもインターネットを利用できるようにしてほしいと、政府にお願いしています。
 ハイビジョンは、2つ、3つに分けて伝えることは可能ですが、分けると画質が悪くなったりするので、緊急で2つに割って放送することもありますが、普通はハイビジョン画像で放送しています。確かに、ご指摘の点は、これから先、完全デジタル化後の新たな放送や通信との連携の在り方の中で、NHKがよりよく放送を伝えていくためには、放送とインターネットの両方をうまい形で、使ってコンテンツを伝えられるようになればいいと考えています。

(木田理事)
 ETV特集「ネットワークで作る放射能汚染地図」は、大変、反響の大きい番組でした。その後、続編も同じく教育テレビで放送しましたけれども、こちらも反響がありました。まだまだ福島の問題が続きますので、さらに継続して番組をつくると聞いています。
 ただ、番組の制作には、非常に難しいことがありました。現在20キロ以内では、そこに住んでいらっしゃる方も退去しなければいけませんし、われわれ取材者も勝手には入れないのです。この「放射能汚染地図」ができたときは、まだ避難区域が小さかったので、ずいぶん近くまで行って測定するのが可能で、非常に生々しいドキュメントとして出来ています。基本的に法令を順守するというのが取材者としての取材倫理でもありますので、法律上、入ってはいけないところまで無理に入った取材はしていません。
 もっと真実に肉薄したドキュメンタリーを作りたい気持ちはありますが、現状の法令の中で取材活動しています。いろいろなハードルは高いけれども、NHKとしてはいろいろな番組を通して、この原発の問題について、多角的、継続的に取り組んでいきたいと考えています。

 

 

第2のテーマ:NHKの経営全般について

【会場参加者】
 23年度の収支予算と事業計画の受信料の収入について聞きたい。今から7、8年前に、ずいぶん、収入が落ちているが、これは職員の不祥事がかなり続いたことによっていわゆる受信料を払わない視聴者が多く出たことによる落ち込みだと思うが、職員の努力、経営努力によって、逐次、右肩上がりになってきて、大変望ましい状況になっている。しかし思いもよらない3月11日の東日本大震災の発生では、生活保護家庭がかなり増えたのではないか。受信料収入の推移の図を見ると、22年度の見込みが6,550億円で、23年度は130億円の上積みをして6,680億円という目標を立てているが、果たして予定どおりに見込めるのか聞きたい。

(石田理事)
 この図の中で、平成16年、17年に落ち込んでいるところは、ご指摘のとおり、職員の不祥事で受信料を払いたくないという厳しいご批判があり、下がったのは事実です。
 また、先ほど生活保護という話が出ましたが、受信料が免除となる生活保護世帯は、リーマンショックの後に景気が低迷したことに伴って増えています。この3か年計画を作ったときには、生活保護に伴う受信料の免除の方は、毎年4万人ぐらいずつ増えるのではないかと想定していたのですが、実際には17万人、18万人と増えたので、予想した額より、およそ200億円減収になり、かなり大きな影響を受けています。
 ただ一方で、完全デジタル化になるということで、衛星放送を受けられるテレビの受信者が増えていますので、今のところ収入は増えている状況です。
 今回、大震災が3月11日にありました。この23年度の予算を総務省に提出したのは1月です。当然のように、地震を想定していない中での提出です。3月の震災の後、総務大臣に認可をもらい、東北3県を含め多くの地域で、受信料の免除をしています。通常は、住宅の半壊や床上浸水ですと災害救助法の適用を受け2か月間免除としているのですが、それを今回6か月間に延ばして免除しています。その一方で、福島の原発の避難区域から出られている方の分は、そこでテレビを見ていないわけですから、そういう方の免除も増えると考えられます。阪神大震災のときも、半分の方は結局、元の場所に戻ることができなくて、受信料契約そのものがなくなったということがありました。福島の原発は、いつまで、どこまでこれが続くのかも分からないような状態なので、多分、100億円までいかないまでもそれに近い数十億円の減収になると思います。
 一方で、衛星放送の契約がかなり伸びていますので、何とか6,680億円という予算を確保できるよう努力しているところです。

(井原委員)
 経営委員会は、営業の詳細な状況について報告を毎月受け、的確な執行にさらに努力してほしいと執行部を監督する役割を果たしています。執行部と異なる役割を持った、いわゆる監督機能を大切な役割とするのが、経営委員会の務めであるし、また存在意義だと思っています。
 さきほどどのように番組制作をしているか、コストの無駄はないのかというご質問がありましたが、そういうときにも、できる限り番組趣旨を生かした番組制作をしつつ、きちんとしたコスト管理ができているのかを、経営委員の立場から聞いて検討しています。

【会場参加者】
 この各年度の事業計画というのは、毎年のものだと思うが、23年度については既にもう国会で承認されているのか。

(石田理事)
 今年1月に予算を総務大臣に提出して、3月に国会審議があり、今年の場合で言うと3月31日に参議院本会議で承認されて、国会で承認されました。4月1日から、今の予算、事業計画に基づいて事業を執行しています。

【会場参加者】
 各年度で赤字が出てきているが、この赤字額というのはどうやって補てんしているのか。

(石田理事)
 赤字になった場合には、繰越金を使うなどして補てんすることになるのですが、受信料が伸びたり、事業支出についても実際の執行にあたって節約して支出を抑えるなどして、決算としては21年度も22年度も黒字となりました。特に22年度は、予算の段階では61億円の赤字という予算を組みましたが、結果的には37億円の黒字となりました。

【会場参加者】
 配られた「いつでも、どこでも、もっと身近にNHK」の中の「今後の受信料体系の見直しについての考え方」に、「平成21、22年度について、収支は赤字を見込まざるを得ない状況だ、23年度までに受信料を引き下げることは困難であると判断した」と書いてある。なおかつ、「収支計画は3年間で示しているが、この基本構想はデジタル化後もにらみ5か年を見通す」とある。今、聞いた内容と矛盾しているような気がするが。

(石田理事)
 この文章は、平成20年の段階で経営委員会が議決した内容が書かれています。20年10月に議決して、21年度から3か年の執行について記しています。21年、22年は赤字になる予定でしたが、今、申し上げたように支出を圧縮し、増収に努めて、結果的に黒字になりました。

【会場参加者】
 受信料の徴収率を上げるというのは、大変喜ばしい。その一つの方法として、考えた提案がある。去年の暮れに、紅白歌合戦を見に行きたくて応募したが残念ながら落選になった。そこで思いついたのだが、抽選は東京で集中して行うのではなく、全国53局のNHKに、ある程度当選枠を配分して、各局で抽選後、応募が少なかったところは中央に集めて2回目の抽選するのはどうか。応募のときに受信契約のお客様番号を書いたがこれを各局でやるときも書くようにすると、受信料の徴収率が向上すると思う。

(石島委員)
 お気持ちは分かるのですが、そういう形を取ること自身が、いわば善意のようなものを前提にした公共放送を支えるという哲学と比べたときにどうなのかと思います。もちろん、いろいろなイベントへの参加に当たって、受信料の支払いを前提にさせていただいているというのもあります。そこら辺は、若干、微妙な問題がありますので、一つのアイデアとして伺いますが、また経営委員会の中でも議論していく必要があるかと考えます。

【会場参加者】
 テレビを買った時点で、今は、受信料を払わなければならないが、公共放送を見るか見ないか選択できるようにすることはできないのか。

(木田理事)
 放送法という法律があり、テレビ放送が受信できる方には払っていただくと定められています。いまは、パソコンや携帯、そのほかのツールでテレビが見られます。放送法のその条項は昭和25年にできたものです。今の時代にフィットしたもう少し違う考え方ができないのかという意見は、いろいろなところから出ています。
 選択するということになると、それを本当に公共放送と言っていいのか。いろいろな考え方があると思います。インターネット等々、情報の伝え方の変化ということもあわせて、この先、21世紀の公共放送がどうあるべきか、皆さんのご意見をこれからどんどんお聞きして、一緒に考えていければと思います。

(井原委員)
 公共放送というのは、国民の命や財産、また民主主義的な社会を守るために必要な情報をできるだけ正確に、公正に、公平に提供するための社会的インフラではないかと私は捉えています。社会的インフラですから、あまねく皆さまにという考え方で運営をしていますし、少し言い方を変えますと、受信料は、いわゆる対価サービスではなくて、国民の社会的なインフラ整備のためにご負担いただく一種の特別な負担金であると性格づけられるのではないかと私は考えています。

【会場参加者】
 ワンセグでNHKニュースを字幕ありにして見ていた時、ローカル放送に切りかわった途端、字幕が消えたのはどうしてか。これでは耳の不自由な方はローカルニュースの内容がわからないと思う。

(石田理事)
 現段階では字幕のある番組とない番組があります。字幕放送で一番問題になるのは、生放送の際に字幕を付けるのがとても大変だということです。例えば「ニュース7」や「おはよう日本」には、全て字幕が付いていますが、これにはオペレーターを配置して、打ち込みの作業を行っています。ところが急な事件や事故などの臨時ニュースの場合は、オペレーターがいないため、すぐに字幕放送ができない場合があります。今回の場合、ワンセグだから字幕が消えたのではなく、そもそも字幕のない番組だったということです。今回の震災のときも長時間にわたるため、すべてに字幕が付けきれなかったと思います。字幕放送を増やしてほしい、特に台風や地震など災害時は付けてほしいとの要望をいただきますので、徐々に増やしていますが、まだ十分でない状況です。
 NHKの技術研究所では、話している言葉を自動的に字幕に変える装置の研究も進めていて、先の大震災のときにも、その機械を使って、生放送に字幕を付けてみましたが、アナウンサーの言葉は、割と正しい言葉に変換できるのですが、記者や一般の方の話す言葉をその機械にかけても、完全な字幕にならないという状態でした。さらに研究が進み、変換が完全になれば、すべての番組に字幕は付けられることになります。
 ただ、テレビの場合、バラエティーなどで、一度に、2人、3人の人が同時にしゃべるようになると、うまく字幕が付かないという問題があります。そういう技術的な面と先ほどの体制の問題から、すべてに字幕が付いていないというのが実態です。

(木田理事)
 現在、字幕放送は、22年度末で全番組の60%ぐらいです。このあと6年ぐらいかけて、これを80数パーセントにします。皆さんがテレビを一番ご覧になりやすい時間帯の夜7時から12時ぐらいまでは、臨時ニュースなどを除き、100%近く、字幕放送を付けるように計画しています。

 

 

<経営委員のまとめ>

 

(井原委員)

 私が、帯広局に伺いますのは今年に入って2回目になります。前回は2月に伺いました。監査委員を務めておりますので、その一環で伺いましたが、そのときにお聞きしたことがずっと心に残っています。かつて帯広局の存続が問題になったときに「帯広からNHKの灯を消すな」という地元の皆さまのお声を支えにしてこの局は存続してきました。その後、小規模になったけれども常にその気持ちに応えるつもりで局を挙げて頑張っているということでした。ですからぜひ皆さまから直接ご意見やご要望を伺いたいと思っていました。温かいお励ましと同時に、厳しい叱正のご意見も併せて伺いましたこと、本当にありがたく思っています。
 とりわけニュース報道の、あるいは制作の正確さに努めよ、あるいは、放送と通信融合時代の中での公共放送の在り方を真摯(しんし)に考えよ、あるいは、これからどんどん必要となっていく国際放送を単に拡充するというより、その姿勢をきっちりと押さえて取り組め、あるいは、できれば好きなときに好きな番組が見られるような、そんな体制も欲しいと、いろいろなお声をいただきました。
 これらのお声やご意見は、今、とりわけありがたいものです。と申しますのも、現在、24年度から3か年の次期経営計画を検討し策定しなければいけない時期で、この秋には、それが決定されます。ネットとの融合が進む中で、公共放送、NHKの在り方をどうすべきなのか、決めていかなければいけない状況でございますので、今日いただきましたいろいろなご意見を大切にいたしまして、執行部、そして経営委員会で十分に議論をして、計画を作り、そして国民・視聴者の皆さまにお役に立つNHKになるよう努めてまいりたいと思っております。

 

 

 

<視聴者のみなさまと語る会inとかち>参加者当日アンケート

質問1:性別

男 性 女 性 未回答
8 31 1

質問2:年齢

10代 20代 30代 40代 50代 60代 70以上 未回答
0 2 13 6 3 8 7 1

質問3:今回のイベントを何でお知りになりましたか(複数回答)

放送 ホームページ 新聞広告等 知人から聞いて その他
15 14 14 7 1

質問4:今回のイベントに参加していかがでしたか

大変満足 満足 ふつう 不満 大変不満 未回答
21 12 5 0 0 2

質問5:一番印象に残ったコーナーはどこでしたか(複数回答)

経営計画ほか 放送について 経営など全般 トークショー 特になし 未回答
1 21 3 22 0 3

質問6:NHK経営委員会の仕事を知っていましたか

よく知っていた 知っていた 知らなかった その他 未回答
2 12 24 1 1

質問7:今回のイベントに参加して、NHK経営委員会の活動について理解が深まりましたか

理解が深まった 特に変わらない わからない その他 未回答
31 7 2 0 0

 

 

<アンケートに寄せられた主なご意見>

 

放送について

  • 北海道十勝のニュースの時間枠がもっと増えるといいと思う。
  • 「ネットワークニュース北海道」毎夕楽しみにしている。いろいろと取材の面で大変なこともあろうかと思うが、これからも期待する。
  • 一部の番組のキャスターのミニスカ姿は足を出しすぎではないか。衣装を考えて欲しい。「ニュース7」の武田さんはすごく頑張っていて、誠実さが伝わる。しかしニュースキャスターの中には声の聞きづらい人もいる。NHK地方局の番組もオンデマンドなどで見られるようにしてほしい。
  • 大河ドラマはNHKらしく重厚壮大なドラマであってほしい。
  • 公共放送の大変さと、国際放送の重要性を認識した。
  • 今日のような機会の参加し、放送の仕組みを知ることができて感謝のひとこと。

 

経営について

  • 我家は受信料を年払いにしている。子どもの教育費がかさむ中、きびしい状況。世帯の状況に合わせた料金も考慮して頂けたならと望む。
  • ワンセグ・携帯・カーナビ・テレビ一世帯の契約何台まで良いか。ケーブル契約書・NHK受信料割引メリットないのか。知りたかった。
  • 受信料の収入アップを見込むのであれば、必ずとるよう、お願いしたい。
  • NHKの中味がわかりとても良かった。
  • 私はNHKが大好きでTVはほとんどNHKだが、経営については今まで考えたことはなかった。大変勉強になった。

 

運営について

  • 札幌から参加した。本当に参加してよかった。これからもっとNHKを応援し視聴していこうと思った。
  • 執行部、経営委員会の皆さんの、よりよいNHKを目標にがんばっている姿勢に感謝している。登坂・寺門アナウンサーのトーク大変楽しかった。
  • 何も知識がないまま、この会に参加した。多くの意見を述べるには、時間が短かった。
  • 当日早目に会場につくと「受付時間になるまでその辺を歩いて来てください」と言われビックリした。そのような事は初めてで怒っている。
  • 会場が涼しかった。節電をうたっているのなら少し考えてはどうか。
  • 参加者方々の様々な意見を聞くことができて勉強になった。多くの方々が見ている証しだと思う。これからも多種多様性を持ちつつ、公正公平な放送を期待する。