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平成22年度 第6回
視聴者のみなさまと語る会〜NHK経営委員とともに〜in秋田
(平成22年10月30日開催)

 

<会 合 の 概 要>

 「経営委員会による受信者意見聴取」の平成22年度第6回は、秋田放送局で実施し、「放送」と「経営全般」2つのテーマで、公募による47人の視聴者の皆さまからご意見を伺った。

 

<会 合 の 名 称>

視聴者のみなさまと語る会〜NHK経営委員とともに〜in秋田

 

<会 合 日 時>

平成22年10月30日(土) 午後2時から午後4時15分まで

 

<出  席  者>

〔経営委員〕

石 島 辰太郎(委員)

大 滝 精 一(委員)

北 原 健 児(委員)

〔執 行 部〕

金 田  新 (専務理事)

今 井  環 (理事)

大 槻  悟 (秋田放送局長)

〔視聴者〕

公募による視聴者47人

〔司 会〕

内 藤 啓 史 アナウンサー

 

< 会    場 >

 秋田放送局 第1スタジオ

 

< 開 催 項 目 >

 以下のとおり進行した。

 

1 開会あいさつ

2 経営委員による説明

  協会の基本方針その他協会の運営に関する重要な事項について

3 意見の聴取

 (1) NHKの放送について

 (2) NHKの経営全般について

4 閉会あいさつ

 

 「視聴者のみなさまと語る会」終了後、制作局の大友啓史ディレクターによる「『大河ドラマ“龍馬伝”』の制作秘話」と題した講演会を開催した。

 

<概要・反響・評価>

  • 公募の結果、はがき・ホームページを通じて計63人の参加申し込みがあった。会場の収容力の範囲内であることや、できるだけ多くの視聴者の方々にご来場いただきたいということから全員に案内を送付した。その際、参加者の意見の把握と参加意思の確認のために事前アンケート調査を実施したところ、47人から回答・返送があり、42人が参加すると答えていた。当日は、47人が来場・参加した。

  • 会合は、「放送」と「経営全般」の2つのテーマを設定し、進行した。秋田における公開番組へのご意見、報道に関するご意見、NHKワールドなどの国際放送や料理番組などのテキストに関するご意見やご要望、受信料に関するご質問など、テーマは多岐にわたった。

  • 参加者全員の意見を伺う時間がなかったため、終了後、意向収集のアンケート調査を行ったところ47人から回答があった。回答者は、20代1人、30代5人、40代8人、50代8人、60代11人、70歳以上14人であった。

  • 参加者の満足度については、「たいへん満足」あるいは「満足」と答えた人が77%、「ふつう」と答えた人が9%、「不満」あるいは「たいへん不満」と答えた人はおらず、未回答は15%であった。

 


◆協会の基本方針・重要事項を説明

 (大滝委員)

  • 経営委員会の役割は、放送法に明文化されており、NHKの経営の基本方針などの議決や、NHK執行部の職務の執行監督などNHKの経営に対して重い責任を負っています。また、経営委員の中から監査委員が任命され、監査委員会は経営委員会を含む役員の職務執行を監査します。
  • 経営委員がその責務、重責を果たし、権限を正しく行使するために、視聴者の皆さまのご意見を直接伺うことも放送法に定められています。
  • NHKでは、平成20年10月に平成21年度から23年度の3か年経営計画を策定し、公表しました。この経営計画では、「いつでも、どこでも、もっと身近にNHK」をスローガンとして、NHKと視聴者の皆さまをつなぐ2つの経営目標を立てました。
    1つ目は、「NHKへの接触者率を23年度末までに80%にすること」です。
    2つ目は、「受信料の支払率を23年度末までに75%、25年度末までに78%まで高めること」です。

    この2つの経営目標を実現に向けて、具体的な9つの経営方針を立てました。
    • 方針1 「視聴者のみなさまの信頼を高めるため組織風土改革に全力をあげます。」
    • 方針2 「日本の課題、地球規模の課題に真正面から向きあいます。」
    • 方針3 「放送・通信融合時代の新サービスで公共放送の役割を果たします。」
    • 方針4 「地域を元気にするための拠点となります。」
    • 方針5 「日本を、そしてアジアを、世界に伝えます。」
    • 方針6 「円滑な完全デジタル化に向けて重点的に取り組みます。」
    • 方針7 「構造改革を推し進め効率的な体制で受信料の価値をより大きくします。」
    • 方針8 「受信料を公平に負担していただくための取り組みを強化します。」
    • 方針9 「環境経営に着実に取り組みます。」

これら2つの経営目標、9つの経営方針を着実に遂行することで、平成24年度から受信料収入の10%を視聴者の皆さまに還元できる収支の構造を構築することをお約束しています。

  • 平成22年度事業収入は6,786億円で、このうち受信料収入は6,550億円で、21年度予算に対し、60億円の増を見込んでいます。番組制作費などの事業支出は、6,847億円で、収入から支出を差し引いた事業収支差金は61億円不足の赤字予算です。これは、地上テレビ放送の完全デジタル化のための追加経費などの影響によるもので、赤字分については、これまでの繰越金を充当します。
    地上テレビ放送の完全デジタル化に向けた設備の整備や放送会館等の整備のための建設費は790億円です。

  • 22年度末の受信料支払率は、73.4%を目指しています。
  • 来年2011年に迫った地上テレビ放送の完全デジタル化に向けた取り組みを継続して行い、地域、防災、福祉などの問題について、視聴者の皆さまとともに考え、ともに作る番組やイベントに取り組んでいます。

    また、テレビを軸としながらも、インターネットや携帯端末などへも公共放送としての確かな情報や魅力的なコンテンツをお届けします。一昨年12月にスタートしたNHKオンデマンドについても一層の充実を図ります。
  • 国際放送による情報発信を強化し、受信環境を整備して、22年度末までに世界の1億3000万世帯で受信可能となるよう取り組みを進めています。
  • 視聴者の皆さまの声を反映し、経営改革にも取り組んでいます。
  • 今年度は3か年経営計画の2年目として、計画を達成するための取り組みを確実に進める重要な年です。経営委員会としても執行部とともにそれぞれの役割を全力で果たしていきたいと考えています。本日みなさまからいただくご意見、ご要望は、経営委員会はもちろん執行部とも共有し、今後のNHKのあり方に反映させたいと思っています。

 

 

《視聴者の皆さまからのご意見とNHK側からの回答》

 

第1のテーマ:NHKの放送について

 

【会場参加者】
 私は今年還暦を迎えました。NHKとともに歩んできた世代だと思います。子どものころ「ジェスチャー」や「お笑い三人組」「事件記者」をよく見ていました。「事件記者」の影響か、新聞記者になった友人が多いです。子どもにとってテレビの影響は大きかったと思います。最近は社会的背景が変わったからでしょうか、子どもたちの世代はあまりテレビを見なくなりました。
 NHKにお願いしたいのは、経営方針の2にある「日本の課題、地球規模の課題に真正面から向きあいます」という報道・ジャーナリズムの項目です。先に無罪判決を受けた厚生労働省元局長の件で、NHKはどのような報道をしたのか、また、それをどう総括するのかをお聞きしたいです。
 また、あの報道の際、NHKのニュース番組と民放にはそれぞれ特定の弁護士がたびたび出演していました。NHKの視点はどこにあって、どんな理由で選ばれているのかも教えてください。

【会場参加者】
 地上デジタルがようやく私の地域でも見られるようになりました。しかし、私どもの山間部にあるNHKの共同受信施設が古くなっていくのに伴い、ときどき修理が必要で維持管理費が年々増加していきます。鮮明な映像・音声の放映に、同軸線でなく光ファイバーなどの通信網を構築してほしいです。

【会場参加者】
 先日、羽後町西馬音内で「のど自慢」を収録していただき、ありがとうございます。羽後町は西馬音内盆踊りがとても有名ですが、放送後にたくさんの方から反響がありました。このような収録の機会を秋田県でもっと増やしてほしいです。

(大滝委員)
 さきほどの厚生労働省元局長の報道についてのご意見ですが、経営委員会はしっかりとした見識を持って、NHKの報道やジャーナリズムのあり方に問題点とか至らない点があればチェックすべきだというご意見として私としては受けとめました。どういう方にご出演いただきコメントしてもらうのかなど個別の問題については、立場上、答えられませんが、報道やジャーナリズムのあり方については、きちんと見守っていきたいと思います。

(今井理事)
 貴重なご意見をありがとうございます。この事件に関しましては、私たちも反省しなければいけない部分があろうかと思います。
 えてして日本の刑事事件の場合、逮捕され、送検され、起訴されると、有罪率が非常に高いのが実情です。被告人の場合でも、無罪になることを前提として考えなければいけない部分もあるのですが、これまでマスコミ全体として有罪を前提にする傾向があったと思います。
 最終的に無罪になった事件が、ここのところ相次いでいます。報道のあり方というのも変えなければいけないと思います。
 今回このことを受けて、NHKでは報道局に委員会をつくり、個々のケースに応じた判断を下し、丁寧に扱っていこうという方針に変えました。

(金田専務理事)
 共同受信施設に関するご意見がありましたが、NHKはあまねく電波をお届けするということが義務づけられています。地上デジタルの電波は、鉄塔から電波を出し、98%の世帯をカバーし、残り1.5%の世帯は辺地共聴で、さらに残り0.5%の世帯は、BS放送の一部を利用して地上放送をお届けするような仕組みを考えています。
 現在、97.6%、推定でおよそ4,837万世帯について対応ができています。辺地共聴は1.5%のうち、現在1.3%程度の段階です。さきほど光ファイバーなどの通信網をとのご意見がありましたが、NTTにそういう仕組みがあり各地で採用されています。NHKは、地デジの辺地共聴など支援のプログラムは持っていますが、インターネットや電話については、NHKの範囲からは外れる部分となることをご理解ください。

(大槻局長)
 羽後町の「のど自慢」は体育館をお借りして実施しました。体育館なので、水曜日からNHKの技術職員が入り、町の方と協力してセッティングしました。大変なご支援をいただき、大成功で終えられたと思っています。
 羽後町については祭りだけでなく、美少女キャラでまちおこしの話題も含め、去年、何度か放送しました。いろいろな地域にある“秋田のちから”を広く発信していくのが秋田放送局の使命だと思っています。

【会場参加者】
 魅力のある番組づくりをして視聴者を呼び込むことが大事だと思います。過去にはNHKらしいヒット番組がいくつも生まれました。ドラマでは「おしん」、ラジオでは「君の名は」、ドキュメンタリーでは「プロジェクトX」です。おもしろければ皆さんが見てくれます。ヒット番組についての考え方を聞かせてください。

【会場参加者】
 深夜のラジオについてお尋ねします。NHKラジオ第1の番組が、ときどきFMに切り替わります。夜の暗い中、チャンネルの波長を合わせるのはたいへんです。何とかFMに切り替えなくてもよいようにしてほしいです。

【会場参加者】
 国会議員が柔道の現役引退の記者会見を行ったときの報道についてお尋ねします。他局の放送では隣にいた国会議員も映していたのですが、NHKは映さないようにしていたように思います。それはなぜでしょう。また、タコのパウルくんが死んだというニュースをNHKで放送していましたが、そういうニュースは民放だけで十分です。NHKには他に放送していただきたいニュースがもっとあります。

(大滝委員)
 NHKらしい番組というのは、実は経営委員会でも常に議論をしていることです。視聴者からは、番組のつくり方や登場人物の起用の仕方などNHKらしくないというようなご批判もよくいただいています。
 やはりNHKらしいという点からいうと、深く掘り下げた報道とか、時間をかけた丁寧な番組とか、いろいろな論点や視点をきちんと踏まえた番組などだと思います。それを視聴者のみな様にどうお伝えしたらいいかということについても、いろいろな議論をしています。

(今井理事)
 ヒット番組に関するご質問がありましたが、番組制作者は、いつもヒットさせたいという思いで制作しています。結果としてヒットする場合と、そうでない場合があります。「プロジェクトX」は最初それほど話題にならなかったのですが、徐々に人気が出てきました。「ゲゲゲの女房」もスタート時はそれほど視聴率が高くありませんでしたが、次第に上がっていきました。
 視聴率というのは結果として見るべきものと思いますが、やはり多くの方に見ていただいたほうが、制作する側としてもうれしいです。
 3か年計画の目標に接触者率80%を目標として掲げていますが、若い人たちにもぜひ番組を見てもらいたいと思います。頭を痛めながら、いろいろな世代をターゲットにした番組づくりで、幅広い年代層の皆さまにご覧いただきたいと考えています。
 また、国会議員の報道の件ですが、意識的に隣りの議員を映さないようにしたのではというご質問でしたが、そこまでは多分考えなかったかと思います。基本的には、選手引退の記者会見なので、本人を撮影するという姿勢であったことは間違いありません。それから、タコのパウルくんの件ですが、話題になったことや人々の関心を呼んだことは、ニュースとして扱うこともあります。ご理解いただければと思います。

(大槻局長)
 「ラジオ深夜便」のラジオ第1からFM放送への切り替えの件だと思いますが、放送機器の補修が必要になるため、ときどきラジオ第1はお休みになり、FMでお聞きくださいということになります。夜にラジオのダイヤルを合わせ直すのはたいへんなことだと思いますが、ラジオの放送機器の補修も非常に重要ですので、ご理解いただければと思います。
 付け加えますと、秋田県には大潟村にラジオ第2の大きな送信所があります。実は東日本一帯をカバーするような、非常に重要なラジオ放送所です。大規模火災など一朝事あった時には、、災害情報もお伝えします。秋田放送局がその補修も定期的に行っています。ぜひご理解いただけますとありがたいです。

【会場参加者】
 たくさんという言葉についての意見です。私が中学生のときに先生に、たくさんという言葉は人間には使わないと教わりました。広辞苑にも、たくさんという言葉は、ぞんざいな言葉遣いであると書いてありました。公共放送として、正しい言葉遣いをするようお願いします。
 もう一つです。現在、消費税は国の方針で内税になっていますが、物価が上がったとか下がったという放送の中で、消費税分を小さく書いたある店舗が紹介されていました。それで、友達が店に行って安いと思ってレジに行ったら消費税を合わせて計算され高かった。そういうところを放送しなくてもいいのではないかと思いました。
 放送する場合のやっぱり心構えだとか、少し教育していただければありがたいと思います。

【会場参加者】
 私はユーチューブやネットで情報を得ることが多いですが、最近、ネットなどで、報道は偏向していると言われています。10月に尖閣諸島の中国政府の態度に反対する集会やデモが各地で行われました。秋田市や東京でも行われました。21日は秋田市民会館に900人が集まったとのことです。10月2日のデモは渋谷のNHK横の公園で行ったらしいですが、各報道機関とも一切報道しませんでした。NHKに問い合わせたところ、ニュースに何を選ぶかというのは編集者に任せられているという返答でした。私は報道機関というものは、大きな事件あるいは出来事があったときは、それをそのまま報道するのが正しい報道姿勢ではないかと思います。たとえば政府の通貨介入があったとき、NHKの「ニュースウオッチ9」の一番初めのニュースは韓国の歌手の来日の話題でした。なぜそれが一番大事なニュースなのでしょうか。
 さらにうかがいたいのは、NHKはかつて放送終了前に、日本の国旗と君が代を放送していました。今もやっているのかを教えてください。

(内藤アナウンサー)
 言葉遣いについてのご質問がありましたので、一言申し上げます。正しい日本語、規範となる言葉遣いをするように、もちろん部内では若手を教育しています。しかし、ご指摘のあった「たくさん」という言葉については、私も初めて広辞苑にぞんざいな言葉遣いと書かれていたと知り勉強になりました。

(北原委員)
 私は、読売新聞社で長い間、政治担当の記者をやっていました。その後、日本テレビで10年ほど仕事をし、このたびNHKの経営委員になりました。新聞・テレビのニュースの価値基準は、ニュースとして報道するに値するかどうかであり、特定の予断と偏見を持って編集しているわけではありません。
 中国で行われたデモと日本で行われたデモの根本的な違いは、中国の場合、もしかしたら逮捕されるかもしれないという身の危険を冒して行動に出ているのです。日本の場合は、かなり表現の自由が保障されていますので、ニュースとしての価値の大・小、重い・軽いは当然あります。中国で行われたデモは、私の解釈ですけれども、複雑な要因があります。日本に対して抗議・アピールをしている側面と同時に、中国の今の政治体制に対する批判、行動というものを多分に含んでいるわけです。そういう意味を持ったデモですから、大きく報道されることは当然であると考えています。

(今井理事)
 「おはよう日本」、正時ごとのニュース、「ニュース7」、「ニュースウオッチ9」などには、それぞれ編集責任者がいて、相談をしながらニュースのオーダーを決め、どのようなニュースを取り上げるかを決めています。ですから、個人的な好みや、誰かに言われて決めるということはまずありません。ただ、先ほどご意見がありました「ニュースウオッチ9」の通貨介入ですが、ニュース番組なので、一つの出来事を深く掘り下げて、紹介することもしています。
 また、日本国内では毎日のようにいろんなところでデモが行われています。霞ヶ関では毎日のように行われていて、警視庁管内だけで年間何百もの集会やデモの届け出があると聞いています。
 尖閣諸島の問題については、例えば「日曜討論」やそのほかのニュース番組でいろんな意見を取り上げるようにしていますし、10月16日に東京で行われた抗議デモは、夜のニュースで取り上げました。なぜなら日本国内の動きに対抗する形で中国が反応し、外務省報道官が日本のデモについて触れ、注目されることもあったからです。
 日の丸、君が代は、現在も放送をしています。例えば総合テレビでは、番組編成の区切りの午前4時15分前のコールサインを出す際に、日の丸を出しています。補修のために一旦電波を休止するときと放送再開時は日の丸と君が代を放送しています。

【会場参加者】
 番組を制作する際、どの年代をターゲットにしているのか教えてください。民放は若い年代向けのテレビ番組が多いような気がします。NHKの場合はどうでしょうか。

【会場参加者】
 ここ数年、NHKの番組は、民放と同じで半年ぐらいで終了する番組が多いように感じます。その理由を教えてください。

(石島委員)
 NHKは皆さんの受信料によって成立している事業体です。したがって、ある世代、ある年代に向けてというとらえ方はしないというのが、恐らくNHKの基本的なところだと思っております。
 その中で、非常に品格がないこととか避けますし、どこかの世代を切り捨てるとかはあり得ない。それが公共の考え方だとは思います。

(大滝委員)
 例えば、幼児は「おかあさんといっしょ」などをはじめとして、NHKの番組をたくさん見ていますが、その後NHKから離れていきます。20代や30代の半ばくらいになり、再びNHKの視聴者として戻ってきてくださるかというと、今はそういう状況にはありません。いろいろな理由があると思います。
 あまねく世代の皆さんに見ていただける番組作りをしているのですが、ある特定のテーマの中で、ふだんNHKを見ない人をも引きつけていく努力も現状では欠かせません。また、インターネットを通じた番組視聴なども、非常に重要な課題です。
 単純に視聴率を獲得するのではなく、ひとりでも多くの人々にご視聴いただきたいという思いで番組制作していることをご理解いただきたいと思います。

(今井理事)
 「紅白歌合戦」のように幅広い世代に見ていただける番組ばかりではありません。たとえばある番組は30代、40代の女性に見てもらいたいという意識で作るなど、特定の年代をターゲットにする場合もあります。
 来年4月に、衛星放送が3波から2波になります。現在、総合テレビ、教育テレビ、BS1、BS2の4つの波がそれぞれ特徴を出せるように、議論しているところです。
 さきほど半年で終わる番組が多いとのご意見がありましたが、半年放送して再開する番組もあります。例えば「サラリーマンNEO」「プロフェッショナル」や「ブラタモリ」などです。このような番組は半年間アイデアをためて集中的に制作し、半年間放送するというようなスタイルになります。今後も一旦終わったと思った番組も翌年復活するケースが出てくるかと思います。ぜひご理解していただければと思います。

 

 

第2のテーマ:NHKの経営全般について

【会場参加者】
 受信料についてお尋ねします。病院の1部屋であったり、病室のベッドごとにテレビがありました。受信料はどうなっているのかを教えてください。また、各家庭にテレビが3、4台ある世帯と、1台しかない世帯の受信料の料金が同じなのは不公平だと思います。
 また、いまの時代、ワンセグ受信などでNHK放送を見ている方も増えてきていると思います。そういう人たちの受信料の負担というのはどうなっているのでしょうか。また、海外でNHKの番組を見ている外国の方からも受信料を徴収しているのかどうかも教えてください。
 また、料理や園芸番組を見ていますと最後にテキストでもお楽しみくださいと言っています。別会社であるNHK出版のような民間会社の出す本をNHKの放送時間中に宣伝できるのがとても不思議です。本には民間の広告もたくさん掲載されていて料金が高いです。もっと安くならないのでしょうか。

【会場参加者】
 ホームページから、何度かメールでNHKに要望を送ったのですが、ただ受け付けましたというメッセージが出るだけで、それに対する返事がありません。また、要望に対するQ&Aなどをまとめて閲覧できるとよいと思います。

(金田専務理事)
 病院やホテルの場合、事業所等となりますので、受信機の設置場所ごと、つまり病室ごとにいただくというのが基本です。ただ、入院患者の方がテレビを持ち込まれた場合、ご自宅ですでに受信契約をしていただいているなら、新たに受信契約の必要はなく、受信料も追加で頂戴することはありません。
 台数についてご質問がありましたが、テレビを設置したことに伴って契約義務が生じ、NHKと契約していただいて、お支払いいただくというのが今の仕組みで、世帯契約という現在の契約のやり方でお願いしています。
 ワンセグもコンピューターで受信機能を持っているものも受信機としての扱いになります。ただし、すでに世帯契約をしていただいていれば、受信料をさらに払っていただく必要はありません。
 また、放送法第3条2の第3号で、テキストを出すことは、NHKの業務の一つと位置づけられています。出版業界の編集や流通ノウハウを獲得する必要もあり、昭和6年に日本放送出版協会ができました。本文は受信料で賄い、そのほかは日本放送出版協会(=NHK出版)の売り上げによって賄っているという構造です。コストダウンについては、ご指摘のようにまだ高いというご意見もありますので、さらに一層努力していきます。
 22年度事業支出の中に国際放送費という項目があります。18言語によるラジオ放送や、外国人向けの英語版のテレビ国際放送と邦人向けの日本語版のテレビ国際放送がそれにあたります。これも放送法に規定されていて、基本的には受信料で賄っています。日本語版は日本で放送したものを再編集してお届けしていますが、実費部分であるケーブルや衛星の費用の一部や編集費用の一部については視聴者からお金をいただいています。一方、英語版は基本的には無料です。この放送は、国内ではポッドキャストやNHKのホームページの国際放送のサイトでもご覧いただけます。

(大槻局長)
 秋田放送局には、電話とメールで1日およそ30から40のご質問やご要望を頂戴しています。要望に対して、それを公開してはどうかとのご指摘ですが、どのような形ならできるのか、今後検討させていただきたいと思います。メールで頂戴したご質問やご意見には返事をするのが基本です。できていないことがありましたらおわびいたします。

(石島委員)
 国際放送に国内の受信料をあてているのではないかというご指摘がありましたが、国際放送は、日本を海外に知ってもらうのに非常に重要な役割を担っていると思います。ぜひご理解をいただければと思います。

(大滝委員)
 国際放送は、東京だけでなく、地方の抱える課題やニュース、日本文化の紹介など実はかなり広範囲のテーマを取り上げ、放送しています。地方を広く世界の人たちに知っていただくという意味でも、非常に重要な役割を果たしています。

(金田専務理事)
 国際放送は、全体で190億円ぐらいを使っています。これは法律で必須の業務です。外国人のための外国語による国際放送と、それから外国の日本人のための国際放送、二本立てということです。
 各国とも国際放送をすごく強化しています。BBCなどは、一昨年の例ですと500億を超えるような交付金が出ています。中国の国際放送では、かなり手厚くいろんなことをやっています。NHKの場合は35億円ですが、それ以外は受信料で賄っています。我々としては、辛うじて英語で頑張ってるというところです。ぜひご理解をいただければと思います。

【会場参加者】
 秋田にはなかなか公開収録の番組が来ません。たまに応募することができても、なかなか当選しません。受信料を払っている人にだけが抽選に参加できるようにするのはどうでしょうか。

【会場参加者】
 受信料の支払率アップの具体策や今後どのように徴収していくのかを聞かせてください。さらに3年後に75%、5年後に78%という数字が掲げられていますが、この妥当性や数字の根拠を教えてください。

【会場参加者】
 去年、秋田放送局の隣のビルでNHKラジオの公開収録があり、あるコーナーに出演しましたが、リハーサル含めて一日中いなければなりませんでした。その間私の車を駐車場に止めていましたが、駐車料金は出せないと言われました。そのビルの駐車代は非常に高額です。こうした予算はぜひ確保してほしいと思います。
 それから、子どもが下宿した場合、受信料は割引になるのか教えてください。

(金田専務理事)
 東京以外で実施する公開収録の番組本数を増やそうとしています。一昨年は670、去年は684、そして今年は828本です。受信料をお支払いいただいている方限定で募集するスタイルをこの数年取り入れていますが、すでに「歌謡コンサート」や「紅白歌合戦」は受信料をお支払いいただいている方を限定にしています。「おかあさんといっしょ」の出演なども、受信料をお支払いいただいている方だけ会員登録できるNHKネットクラブのプレミアム会員がお申し込みいただけます。
 先日来日したフランスの上院議員が、欧州のように義務化や罰則が法制化されていない状況からすると、日本の受信料制度と支払率72.9%という数字に驚いていました。しかし、100%目指して努力するというのが基本線です。
 不祥事が起きたときには、一時69%前後まで落ちましたが、努力して今の72.9%まで戻りました。経営計画の3年後である来年は、75%対策を織り込んでいます。その次の78%については、来年、議論することになろうかと思います。最近では民事手続という訴訟の手続も踏みながら、公平負担を目指していきたいと考えています。
 また、下宿生の受信料でご質問がありましたが、学生の方、単身赴任の方など同一生計で離れて暮らすご家族の受信料は、2契約目を半額とさせていただいています。よろしくお願いいたします。

(大槻局長)
 お申し込みをいただいてもなかなか当たらなくて本当に申しわけありません。大館市で開催した「歌の散歩道」は6倍以上の方のお申し込みがありました。
 駐車代のことでもご意見を頂戴しました。ご出演いただき、ありがとうございました。基本的には部内でも相談した上で必要な予算を確保していきたいと思っています。

【会場参加者】
 対談形式の番組でときどきはっきり聞き取れない場合があります。聞き取れるかどうかを確認してから本番にのせてもらいたいです。また、途中で寝てしまうこともあるので、対談形式の番組では話した内容を最後に要約していただくとありがたいです。
 アナログ放送を見ていますが、テレビ画面にアナログ停波に関するメッセージが出て、非常にうるさく感じます。いまの技術でもう少しあか抜けたものにして、画面を見やすくしてほしいです。

【会場参加者】
 NHKを考えることは自分を考えることだというふうに思います。先ほどNHKは、4つの波でそれぞれの特徴を出すと言っていました。それを選ぶのはわれわれ視聴者です。選ぶ目をわれわれが持てるかどうかが大切なのです。NHKにばっかり文句を言っていても仕方ない、われわれも賢くならないといけないのだと痛感しました。
 今晩、総合テレビで「無縁社会」という番組が放送されます。一家そろってテレビを見るような縁を大事にしていた時代から、それをうっとうしいと感じて、人々が個人主義になった結果、無縁社会が生まれました。この番組は今日の「語る会」とテーマもつながっていると思うので、ぜひ見るつもりです。これからは地方分権の時代です。ぜひ地方局に予算をたくさんつけて、地方局が充実することを望みます。

【会場参加者】
 テレビ受信機を持ってる人は受信料を払わなきゃいけないということですが、NHKは見たくない場合どうしたらいいんでしょう。その場合、しょうがないけど払わなきゃいけないという不満が出てきます。それに対してはどうお考えなのでしょうか。
 また、韓国では受信料ははるかに安く、2,500ウォン、円に換算すると181円だそうです(当時)。電気料金と一緒に徴収するので不払いはないそうです。広告収入も認められていて、広告収入の比重を全体の20%にとどめるという法案が検討されているそうで、2,500ウォンから3,500ウォンにまで値上げされるということです。日本の場合、地上契約で月額1,345円、衛星契約は2,290円です。NHKも受信料だけでなく、自分たちで少し金儲けしようと思ってもいいのではないでしょうか。

(今井理事)
 聞き取りにくいというご意見がありましたけれども、当然、制作者は編集やテストをしてから放送しています。できる限りクリアな音でお届けできるように現場に伝えます。
 要約を最後につけたらどうか、とのご要望でしたが時間の制約もあると思うので実際にできるかどうか検討してみます。

(金田専務理事)
 来年の7月24日にアナログ放送が終了することは法律で決まっています。今年3月29日から、アナログ放送の上下に黒い帯が出ています。これは横幅の広いデジタル画面をアナログ画面に合わせているためです。アナログ停波を皆さんに知っていただくため、その黒い帯部分にメッセージを出しています。ご不満があることも十分理解していますがご理解をいただければと思います。

(大滝委員)
 さきほどの「無縁社会」へのご意見と地方局の充実へのご意見は、非常に関連性が強いと思います。地域の人間関係や新しい絆を次の世代に引き継いでいくのは非常に重要だと思うからです。地方局の充実や世界への発信は非常に大事だと思っています。私自身も東北地域の代表としての意味合いもあり、経営委員としての重要な役割だと認識しております。

(大槻局長)
 人や予算などの限られた経営資源を使って最大限に効果を出すということがわれわれの使命だと思っています。いろんなご意見を寄せていただいて、参考にさせていただきながら、取り組んでいきたいと思っています。

(今井理事)
 経営方針の中に「日本の課題、地球規模の課題に真正面から向きあいます」という項目があります。これを受けて報道局に「あすの日本プロジェクト」というものを作り、日本の抱える課題や絆、少子高齢化の問題から、日本の財政、安全保障などさまざまな課題を取材しています。「無縁社会」もその一環です。12月には続編を放送したいとも思っています。ぜひご期待ください。

(金田専務理事)
 地方局の充実を目指して地方局の予算を増やしています。東北では「おいしい東北」の費用に充てたと聞いています。その中の「おいしい闘技場」という番組が非常に好評で、四国との対抗戦や中国局との対抗戦を番組にしたと聞いています。

(大滝委員)
 受信料のあり方、受信料体系についてのご意見がありましたが、NHKだけの意思では、受信料体系を変えることはできません。国会を初めとして、新しい法律などを受けてということになります。また、NHKでは当然、放送と通信の融合について話し合っています。
 執行部でも受信料制度等専門調査会を作って、具体的にどういう対応があり得るのかなど検討を進めているところです。

 

 

<経営委員のまとめ>

 

(石島委員)

 皆さんとお話できることを楽しみにして来ました。たびたび放送と通信の融合に関するお話しが出ましたが、実は最も根本的な、公共性とは何かという問題とも絡んでくると感じています。ネットはネットの分野で大きな問題を抱えています。通信は基本的にはマンツーマンですが放送はたくさんの人たちが共有するものです。NHKのような歴史ある公共放送が今後どのように取り組んでいくのかが、非常に大きな問題になるだろうと考えています。

 

(大滝委員)

 個々の番組について、報道姿勢、アナウンサーの言葉の使い方などのご意見ありがとうございました。一番印象に残ったのは地方放送局へのご期待の高さで、それに対してきちんとした対応をさらに推進していければと思っています。
 公共放送はいま転換点に来ていると認識しています。今までと同じことを続けていくのは、いろんな意味でむずかしくなりつつあり、何年か先を見通しながら、公共放送のあり方を具体的に進めていくという時点に差しかかっているのだと思います。

 

(北原委員)

 この6月に経営委員になりました。「語る会」に参加したのも初めてです。相当厳しいご叱正を受けるのではと思っていましたが、秋田の方はやさしいです。私が仮にそちら側に座っていたら、もっと厳しいことをNHKに注文します。読売新聞でおよそ40年、日本テレビで10年近く仕事をしてきました。民間は厳しいです。受信料収入6,500億円で、もっといい番組が作れます。1万1,000人の人数が本当に必要なのかというのが、NHKに問われている根本的な問題だと思います。次回機会があったらもっと厳しいご叱正をいただけると、NHKのさらなる発展と向上につながっていくと思います。今日はどうもありがとうございました。

 

 

<視聴者のみなさまと語る会in秋田>参加者当日アンケート

質問1:性別

男 性 女 性 不 明
22 22 3

質問2:年齢

  10代 20代 30代 40代 50代 60代 70歳以上 不明
男性 0 0 1 6 3 4 6 0
女性 0 1 4 2 4 5 7 0
不明 0 0 0 0 1 2 1 0

質問3:今回のイベントを何でお知りになりましたか(複数回答)

①放送 ホームページ ③新聞広告等 ④知人から聞いて ⑤その他
23 4 13 6 5

質問4:今回のイベントに参加していかがでしたか

①大変満足 ②満足 ③ふつう ④不満 ⑤大変不満 未回答
12 24 9 0 0 15

質問5:一番印象に残ったコーナーはどこでしたか(複数回答)

①経営計画ほか ②放送について ③経営など全般 ④講演会(龍馬伝) 未回答
1 16 12 21 8

質問6:NHK経営委員会の仕事を知っていましたか

①よく知っていた 知っていた ③知らなかった ④その他 未回答
0 16 29 0 2

質問7:今回のイベントに参加して、NHK経営委員会の活動について理解が深まりましたか

①理解が深まった ②特に変わらない ③わからない ④その他 未回答
34 4 1 3 5

 

 

<アンケートに寄せられた主なご意見>

 

放送について

  • 幅広い年代に向けて番組を作る苦労を知った。
  • 県外出身のアナウンサーが多いせいか、地名の読み間違えが多い。しっかりチェックをしてほしい。
  • 小さい頃から父の影響でNHKを見て育った。自分の小1の娘もNHKが好きだ。「ひるまえこまち」「ニュースこまち」 「ダーウィンがきた」「大河ドラマ 龍馬伝」などよく見ている。いろいろな意見があると思うががんばってほしい。
  • NHKは渋谷だけではない。秋田でもいろんなことをやってほしい。
  • 国会中継を初日から最後の日まで放送してほしい。

 

経営について

  • 改めてNHKが多岐にわたって活動していることを感じた。
  • NHKと視聴者の関係を考える上で、貴重な時間となった。賢い視聴者が、賢いNHKを作る・・・。そんな印象を持った。
  • NHKの放送・通信融合時代の取り組みに期待する。
  • 受信料の支払い率は、罰則を強化して90%ぐらいをめざすべきだ。NHKにはいい番組がある。

 

運営について

  • 大河ドラマの話が聞きたくて応募したが、NHKがこれほど充実した放送、経営のために努力していることを知ることができ、大きな収穫になった。
  • 今まではNHKをまったく見なかった。興味もあまりなかったが、せっかく受信料を納めているのだからNHKをもっと利用していこうと思った。
  • 登壇者の話がやや長いと感じた。一般参加者の意見をもっと聞きたかった。
  • この会を通して、NHKと自分の距離感がぐっと近くなった。
  • バラエティーに富んだ参加者からの意見や質問にとてもわかりやすく答えていて、さすがNHKと感じた。
  • 差しさわりのない返答にすこし不満が残った。もっとストレートに答えてほしい。
  • 会場の雰囲気に押され、発言できなかった。民放を意識しすぎて、品位を失うことのないようにしてほしい。