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「NHK経営計画2024-2026年度」 経営委員長・会長記者会見

 

2024年1月9日(火) 森下委員長、稲葉会長

 

【森下経営委員長】

 本日はお集りいただき、ありがとうございます。はじめに、今回の能登半島地震で亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された皆さまには心よりお見舞いを申し上げます。
 「NHK経営計画(2024-2026年度)(案)」について、2023年10月11日から11月9日までの間ご意見を募集したところ、474件のご意見をいただきました。厚く御礼を申し上げます。
 経営委員会では、皆さまからいただいたご意見を真摯に受けとめ、検討してきました。そのうえで、本日、経営委員会は、「NHK経営計画(2024-2026年度)」と「令和6年度 収支予算、事業計画及び資金計画」を議決しました。
 いただいたご意見、および、ご意見に対するNHKの考え方は、NHK経営委員会のホームページにも掲載します。
 議決にあたり、経営委員会として次のように申し上げました。
 本日、経営委員会は、NHK経営計画(2024-2026年度)と経営計画の初年度となる「令和6年度 収支予算、事業計画及び資金計画」を全員一致で議決しました。
 経営委員会では、次期中期経営計画について、昨年5月より審議・検討を重ねてきました。
 10月10日の経営委員会に執行部から、NHK経営計画(2024-2026年度)(案)の提案を受け、意見募集に付すことを決定しました。
 経営委員会が実施した意見募集には、474件の幅広いご意見が寄せられ、経営委員会はこれらのご意見を真摯に受けとめ、検討してきました。
 ご意見については、経営委員会での検討と並行して、監査委員会、および、執行部に対しても検討を求めました。
 経営計画案では、公共放送・公共メディアとして、昨年10月からの受信料の1割値下げに伴って大幅に減収となる中で、信頼できる基本的な情報を提供するとともに、適切な資源管理と、デジタル技術の活用により、コンテンツの“質・量”を確保し、厳しいインフレ、財政状況にもかかわらず、1,000億円規模の事業支出の削減を行うことにしています。
 本日、執行部から提案された経営計画案には、意見募集でいただいた、コンテンツ管理など、経営計画案に掲げた事項について、具体的な説明を求めるご意見や、地域向け番組の質・量を充実すべきというご意見を考慮した結果、視聴者・国民のみなさまにとってより丁寧で分かりやすくするための説明の付記や、地域を含むメディア産業全体の多元性確保への貢献という記載が明記されました。
 また、経営委員会、および、監査委員会としても、経営計画案に、「経営委員会・監査委員会によるガバナンス」として掲げたとおり、NHKのガバナンス強化に積極的に取り組むことを宣言しています。
 さらに、経営計画の初年度となる「令和6年度 収支予算、事業計画及び資金計画」については、経営計画案に基づいた事業運営を実施することを打ち出し、減収傾向の中で、事業構造改革と新規領域の創造を同時に進める具体的な計画となっています。
 以上のことから、経営委員会として、NHK経営計画(2024-2026年度)は、今後3年間の中期経営計画として妥当と判断し、「令和6年度 収支予算、事業計画及び資金計画」も経営計画の初年度の予算・事業計画として妥当と判断し、議決することとしました。
 ただ、2027年度に収支均衡を達成するためには、経営計画に掲げた各施策を確実に実行しなければなりません。
 そもそも、NHKで働く一人ひとりが、公共放送・公共メディアに携わる者として高い倫理観を持ち、重い社会的責任を負っていることを意識しなければなりません。
 執行部には、こうした基本的な姿勢に基づいて職員とのコミュニケーションと人材育成を行いながら、計画を確実に進めていただくことをお願いします。
 また、経営計画の実現には、経営委員会が、経営に関する必要な情報を適切なタイミングで得ることが重要ですので、経営計画に掲げたとおり、執行部に対して情報提供の拡充を求めます。
 特に、経営委員会としても、大幅な減収のなか、事業収入については注視していますので、受信料収入の増減に影響を与える事象が発生した場合は、すみやかに報告していただくことと、将来的な受信料制度の在り方の研究、有料インターネット活用業務勘定の繰越欠損金の解消後の対応、戦略的な副次収入の増加策等の検討を進めることをお願いします。
 意見募集でも多くのご意見をいただいたように、視聴者・国民のみなさまの関心も高いインターネット活用業務について、経営計画では、現行制度に基づいた計画を掲げていますが、現在、有識者会議などで、必須業務化の検討が進められているように、放送法が改正される場合は、速やかに経営委員会に報告していただき、必要により、経営計画の修正など、適切な対応をお願いします。
 経営委員会としても、引き続き執行部とともに議論し、真摯に取り組む所存です。私からは以上です。

 

【稲葉会長】

 まず元日に発生した能登半島地震で亡くなられた方々に、心からお悔やみを申し上げるとともに、被災された方々にお見舞いを申し上げます。NHKとしては、引き続き被災された方々の役に立つとともに、1日も早い復旧・復興に貢献できるよう、全局態勢で災害報道を行っていきたいと思っております。
 本日議決いただきました次期中期経営計画と新年度予算・事業計画案では、放送法で求められております民主主義の健全な発展に資するため、ひいては日本はもとより、世界を含めて人々が平和で豊かに暮らせる社会の実現にNHKとしてもしっかり貢献していくために、次の3か年で取り組むことをしっかりと具体化できたのではないかと思っております。
 イギリスのBBCや韓国のKBSといった世界の公共放送では、受信料制度改革などに伴う収入の減少により、やりくりに苦慮しているところが多いと承知していますが、私たちの計画は最も貴重な財産である人材にかける資源はこれまでどおり確保しながら、番組やコンテンツの質と量はしっかり維持していくという、世界的に見ても例を見ない、独創的なものとなっていると思います。
 受信料の1割値下げによって1,000億円規模の事業支出の削減を伴いますが、この計画と予算案はNHK全体として、その規模が縮小していく、あるいは小さくなっていくというものでは決してなく、むしろさまざまな形で、新しい公共的価値を創造していく、そうした工夫を織り込んだ、非常に意欲的なものだというふうに受けとめていただきたいと思います。
 もちろんそれだけに、簡単に実現できるものではないと思います。特に、より確かで深い情報を知りたいとか、もっと日常が豊かになる番組が見たいという視聴者・国民の高い期待に、正面から応えていくことは簡単なことではないと思いますが、だからこそ役職員全員が日々たゆまぬ研鑽を積み、その創造性や生産性を一層発揮・向上させていくことによって、この計画や予算事業計画を着実に実行していきたいと思います。私からは以上です。

 

 

【以下、質疑応答】

Q.森下委員長に伺う。改めて2026年度までの中期経営計画を踏まえて、受けとめは。

A.(森下経営委員長) 今回の事業計画では、受信料の値下げによる1,000億円規模の大幅な減収ということは、財務上、非常に大きな影響を受けます。先ほど会長からもありましたように、各分野で相当の努力をして経費削減をしないと実現できないということだと思います。ただ、経費を削減するだけではなくて、新しい時代に向けて、新しい技術を取り入れて、付加価値をつけていくということも大事になってきます。特に、コンテンツの質と量をさらに高めていくということが計画のポイントにもなっています。経費を削減する一方で、内容を充実させるという非常に難しい課題に取り組んでいくということです。この計画自体は非常に意欲的な計画だと、経営委員会としても評価をしています。同時に、昨今のいろいろなことがありますので、経営委員会としてもガバナンスの強化を掲げています。特に、業務執行にあたって、ガバナンスを強化していくことを今回大きな柱に立てているということです。

 

Q.稲葉会長に伺う。今回の経営計画は災害報道が1つの柱になっているが、元日に能登半島地震が発生した。今回の地震報道について、ここまでの受け止めと、今後の見通しは。

A.(稲葉会長) 今回の地震は元日の夕方の発災ということで、時間的には難しい時間でしたが、直ちに緊急報道を開始しました。それから大津波警報などの発表を受けて、放送で速やかに避難を繰り返し呼びかけるなど、発災直後からしっかりと報道ができたのではないかと受け止めています。一方で、経営計画でも経営の基軸として掲げている情報空間の参照点の提供、放送やインターネットなど情報空間のなかでNHKが頼りにされる存在になりたいということについても、早速インターネット上でフェイクニュースなどが現れていて、発見したら直ちにそれはおかしい、フェイクであるとお伝えし、さらにNHKから正しい情報を上書きするように提供する。そういうこともできたのではないかと思います。このあたりは現場でも意識して取り組んでいると思います。いずれにしても単に放送に携わっている、取材に携わっているスタッフだけではなく、技術的なスタッフ、あるいはルーチンの関係のスタッフなどがしっかり頑張ってくれていて、それで今日まで災害報道がしっかり貫徹できたのではないかと思います。引き続き全局態勢で、被災された方たちのお役に立つ、あるいは被災された方を心配されている方々のためにも報道を続け、1日も早い復旧・復興に貢献できるようにしていきたいと考えています。

 

Q.中期経営計画のパブリックコメントに前会長からの意見が記載されている。前会長からこういった形で意見が出されるのは異例のことだと思うが、その点について経営委員長と会長の所感を。

A.(森下経営委員長) 経営委員会としては、視聴者の皆さまからいただいたご意見について、全て確認させていただいて、真摯に対応しています。今後もできるだけ、透明性があり、説明責任のある対応をしていこうということです。

A.(稲葉会長) いくつか論点があるようですが、特に経営改革などが止まっているのではないかという批判に対しては、具体的に何を指しているのかよく分かりません。私が会長に就任したときから、私の役割は「改革の検証と発展」だと申し上げていて、そこから先、いろいろな改革を実行する都度、記者会見等でご紹介し、ご理解をいただけているのではないかと思います。いずれにしても改革を否定するとか、止めるといったことは一切思っていないので、このようなコメントは大変残念に思っています。

 

Q.稲葉会長に伺う。今回の能登半島地震、そして2日に起きた羽田空港での日航機の衝突事故の報道において何か新たな取り組みはあったのか。

A.(稲葉会長) こういう災害報道などを経験しながら、NHKとしては一つ一つ見直すべき点、より改良すべき点というのを見つけながらやっているということです。今回、能登半島地震で言えば、例えば停電などがあって、単にテレビやラジオを放送すれば届くかというと、そうではありません。そのような折にはインターネットを活用してインターネットラジオというような形で視聴者の皆さんに届けるとか、そういう新しい試みをやっていかないといけないと思っています。もちろん、発生直後の津波からの避難を呼びかける際に、アナウンサーが単に「避難してください」という呼びかけではなくて「避難すること」という厳しい表現で促すというものも、これまでいろいろ考えて、やったほうがいいということで行った工夫の1つです。今後ともそのようなことについて、大事なことがあればどんどん応用していきたいと思っています。

A.(井上副会長) 少し補足します。大津波警報の発令から、避難の呼びかけ、そのあとの報道について、終夜で続けてきた上で、そのあとも現地の状況やスタジオからの解説などを随時、臨時ニュースの枠を使って継続的に、今に至るまでやってきています。それから先ほど会長も申し上げたように、今回、避難の呼びかけについては、東日本大震災の教訓を得てアナウンス室で何回も検討し訓練も続けて、とにかく人命優先だということで強い呼びかけを行ったこと。それからデジタルを駆使して、孤立した地域の状況などについてきめ細かな情報を発信していることです。また、2日の夜には羽田空港の事故が重なりましたけども、これについても拡大ニュースを放送している途中でしたので、羽田空港の空港カメラをウォッチしていた編集責任者が、まだ状況はよくつかめていなかったのですが、即座に空港の映像に切り替えて、まさに同時進行で事故の状況を伝え続けたということで、これも非常に迅速な対応だったと考えています。

 

Q.中期経営計画のパブリックコメントで前会長のコメントが載っているが、「えん罪デッチ上げ事件」という強い意見表明がある点と、「内部監査制度の無力化に経営トップが関与した」という2点の意見について、会長の見解は。

A.(稲葉会長) 稟議書の問題は、ある種のでっち上げだというご意見ですけれども、放送法を所管する当時の総務大臣が、「そのまま進めていれば放送法に抵触することになった。その前に是正したので問題はなかった」という見解を示されていまして、私はそれに尽きると思っています。内部監査については、この問題が覚知された時から、法務部にこの問題について検討するように指示しました。法務部からは早い段階で、放っておけば放送法に抵触する問題になりかねないという見解が示され、その時に私は内部監査室に会長特命監査を命じたわけです。これは規則によって、命ずることができるのは会長一人です。そういう法務部見解が示されている中で、一体なぜこんなことが起こったのかを解明してほしい、その際、内部の各所の専門家たちと意見交換しながら、事実関係に誤りがないように留意しながら、室長の責任で見解をまとめてほしいと指示しました。そのとおりのプロセスで仕上がったと思います。(昨年)5月15日の理事会議事録で示されているように、問題の違法性に対する見解が示されたと同時に、内部監査からは何でこういうことが起こったかということに関して、関係者のリスクに対する認識が甘かったということと、関係者間のコミュニケーションが全体的に不足していた、そういう2つの報告があったということです。内部監査の報告内容等について、監査委員会にチェックしていただきましたが、全く正当である、適正であるとご判断されています。

 

Q.報告書がある程度できたものに関して修正を加えたということはないのか。

A.(稲葉会長) 報告書の中にいろいろ盛り込むべき事実関係があったら、事前に各所からアドバイスをもらって正確なものにしてほしいということです。そこで出てきた結論については、法務部の見解と違法性に対する見解とは平仄が合っているので、その内部監査報告ができる過程で、全然関係ないところから介入があったとは思えません。

 

Q.NHKのこの問題に対する答えとしては、これは最後の答えという捉え方でよいか。

A.(稲葉会長) 全くその通りです。

 

Q.この件について経営委員長にも伺いたい。

A.(森下経営委員長) 監査委員会でもチェックをされています。

 

Q.今回の地震で、NHKや民放の中継局が被害を受け、一部の地域で停波したが、中期経営計画に掲げている中継局の民放との共用について、今後の方針に変更などはないか。

A.(稲葉会長) それは全くありません。むしろこういうことに備えて多元的に民放なりNHKなりが、それぞれしっかりした経営のもとで情報をきちんと皆さんに提供していく、そういう意義はなおのこと高まっていくので、民放とNHKの協力関係は、今後ともきちんとやっていかないといけないと認識しています。

 

Q.一部の地域で停波してしまったことについて、どう受け止めているか。

A.(稲葉会長) 確かに大変残念に思っています。現場でもこういう事態に備えるべくいろいろな手だてを打ったにもかかわらず、例えば非常用電源のための備えが足りなくなり、それに対して補給が続かないという不幸なことが続いたわけです。それはこれから課題だと思いますし、そういう時のために、例えばインターネットで補完的に情報を提供する重要性がいよいよ増していると認識しました。民放との協力もそういう意味で、よりよい協力のあり方があるのではないかと思います。

 

Q.東日本大震災以来の大津波警報の発令で、アナウンサーが強く、早く逃げてくださいと呼びかけたが、今回は、何が通常の津波警報への対応と異なっていたのか。

A.(稲葉会長) 今回、気象庁から大津波警報が出た中で、そういうアナウンスをすべきだと現場で判断ができたのではないかと思います。日頃の訓練のたまものではないかと思っています。

A.(井上副会長) 発災直後に災害対策本部を設置し、その日のうちに3回会合を開きました。大津波警報・津波警報を人命優先で伝える一方で地震の現況も伝えなければいけませんし、日本海側に広く注意報が出たので、それぞれの地域での報道も必要だったということで、今回はオペレーション的にも相当大変でしたが、毎回情報を共有しながら、こうした時の報道はどうあるべきかと、新しい試みも含めて対応しているところです。ご存じのように地上波の中継局が民放も含めて相当ズタズタになっており、しかも能登半島はケーブルテレビのケーブル網も各地で断線しているということで、新しい試みの1つとして、今日の午後6時から石川県域のローカル放送を含むニュースを、BS103チャンネルを使って放送していくことを決定しました。いろんなやり方をこれからも模索していきたいと考えています。ネットもNHKプラスで石川県域分を発信しているのですが、ネットの環境もまだまだ不安定なので、ありとあらゆる伝送路を使って、NHKの報道を伝えていきたいと考えています。

以上