第32回「日本賞」<2005年>特別賞

特別賞
前田賞
番組名:ミラーイメージ 第6回 親
機関名:カタルニア・テレビ
国名:スペイン
番組内容
 プロデューサーが、若い人たちにビデオカメラを渡し、「3週間、150時間以上、日常を記録して。」とたのむ。若者は自分自身も周囲の人も、そのカメラに収める。制作者チームは、若者たちがそのように撮影したビデオを集めて、テーマごとに分類する。プロデューサーからの撮影時の指示はただ1つ。「自然にありのままに」。何を撮るのか、いつ撮るのか、については、すべて本人任せである。若者の日常が新鮮に映し出され、飾り気のない、ありのままの感情であふれたシリーズ番組である。
 この回のテーマは「親」。障害を持った女性は、ベッドの上での着替えを手伝ってくれる母親と自分の姿をうつしながら、親からのプライバシーがなかなか保てないと語る。若い男性は、父親と毎月のように食事にでかけるんだと、歩きながらカメラに向かって喋り、父親に会いに行く。
 映し出される話題や行動は日常的。カメラを自分に向けて喋る時に上半身裸であるなど、若者が飾らない姿で本音を喋る。この番組シリーズは、カタルニアで、最高視聴率を記録した。
審査講評
 この番組を見て、来るべき世代の制作者が駆使するような技術、文法、言語がうまく活用されていると感じました。若者が撮影した自分自身の姿や発言、親の発言の映像が、15〜24歳の若者たちの生活、規範、考えを、より新鮮で洞察に満ちたものにしています。この番組は、10代の子どもたちと親の関係が、私たちが考えているより、もっと複雑なものだということを解らせてくれました。それを可能にしたのが、若者の撮影した物語を“織り交ぜる”手法です。1つ1つのストーリーはシンプルですが、それらの映像の積み重ねが考え抜かれて編集されているために、家族関係を力強く知的に映し出しています。この番組は、若い世代はもとより、その上の世代に対しても教育的であると言えます。親たちは番組を見て、子どもたちの、表面に出ない本当の気持ちを知るでしょう。そして、考えたり、会話をしたりする空間を持つことになるのです。会話といっても、実際に話すか話さないかは別ですが。同様に、若者にとっては、「私って誰?」と自分自身に問いかけるよい機会となっています。
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