第32回「日本賞」<2005年>特別賞

特別賞
国際交流基金理事長賞
番組名:アメリカの来た道 マシー夫人事件
機関名:WGBH教育財団
国名:アメリカ
番組内容
 1931年、ハワイで白人女性が暴行される事件が起きた。容疑者として別件逮捕されたのは地元の5人の有色人種。後に彼らには犯行は行い得なかったとの調査報告が出されるが、「白人への暴行は見過ごせない」とする人種的偏見の中、容疑者の一人は、被害女性の母と夫などによって殺害される。100人にも登る.米国議員や米軍の圧力がハワイ州知事にむけてなされ、結局この私的な報復殺人は超法規的な無罪扱いとなる。
 これをきっかけに、ずっとくすぶっていたハワイの住民のアメリカへの反感は一層激化し、アメリカ側の白人優越主義もあらわになってくる。アメリカのいわば‘負の歴史’にしっかり目を向け、当時の人種差別的な体質と社会正義について深く考察を促す番組になっている。
審査講評
 主に白黒写真や新聞記事で構成された歴史番組は、大体において無味乾燥になりがちである。しかし、この番組は、優れた読み聞かせの技術により、最初から最後まで視聴者の興味をぐっとつかみ続けている。白人の犯した、ある殺人事件は、被害者が有色人種だったために、未解決に終わった。番組では、その事件を細かく研究し、専門的に編集することにより、それにまつわる事実を、率直にわかりやすく語り、植民地化、人種差別、白人主導権、二重道徳など、当時の背景を明らかにしている。刺激的な殺人罪の話だが、現代に生きる視聴者は、アメリカの歴史について多くの重要なことを学ぶことができる。犯罪者は一生涯罪を逃れることができたが、番組では、信憑性とエンターテインメント性をもって、具体的な真実をあらわにすることができた。この事実を露呈させたプロデューサーの功績を称えたい。
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