第32回「日本賞」<2005年>最優秀番組

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番組部門 教育ジャーナルの部
東京都知事賞
番組名:私に話して
機関名:セサミ・ワークショップ、南アフリカ放送協会、クワスカスケーラ
国名:アメリカ、南アフリカ
番組内容
 「私に話して」は、2004年12月に、エイズについて率直に話し合おうと促す目的で始まったキャンペーン番組である。フォーマットはスタジオ・トークとVTRリポート。子どもたちと、その保護者との対話を促進し、病気についての知識を提供し、エイズの子どもたちに病気との共生の仕方を、健常児に感染から身を守ることを教えている。
 この回では、3家族が登場する。ビブ──エイズウィルスに感染した5人の子どもをもつ、38歳の母親。ツィエツィ──親をエイズで亡くし、17歳にして家族の長として弟たちの面倒をみることになった女性。ケリナ──エイズで2人の娘を亡くし、末娘を育てている母親。彼らに必要なもの、それは「対話」であった。
 VTRリポートでは、それぞれの家族を取材し、何に悩み、どんな対話を始めたのかを描写する。例えば、ケリナ。「母親は口うるさくなじってばかり」と不満を持つ末娘に対し、「死んだ姉たちと同じ道を歩ませたくない」と強く願う気持ちを表現しようと、対話を試みる。
 スタジオでは3家族が一堂に集まって意見を交わし、専門家であるソーシャルワーカーの話も聞き、皆で、エイズの受け止めかた、考え方を深めていく。
審査講評
 家族は、困難な状況を乗り越える名人であり、建設的に対話する方法を学習することによって、たいていは、よりよい関係を結ぶことができるものです。この番組は、家族の対話をどのように変化させられるかを、明確で、理解しやすくて、それでいてこれまで馴染み薄かったような洞察により提示しています。
 普段着感覚の率直な番組でありながら、“堂々とした対話”を試みようとする3つの別々の物語を通じて、現代の複雑な家族生活の肖像を編んでいるのです。
 この番組は、“私”が論じた諸問題に新たな光を当て、効果的で、実際的なアドバイスを提供しています。見ていて心地よく感じられる形式で、一般視聴者の心を掴みます。耳をかたむける必要のある家族に、いきいきとしたメッセージを伝えることを約束しています。
 ここに出てくるいろいろな問題は、とかく誇張して表現される傾向がありますが、この番組では、正確に、かつ冷静に、描写をしています。どこにでもある問題に対して、楽し気持ちにさせるように、手助けができるように、あたたかい視線を向けていることが印象的です。
制作者コメント
ナリア・ファロウキィ
プロデューサー


 エイズは、南アフリカの家族やコミュニティを恐々とさせましたが、この伝染病が地域中に広がっているという結果でさえ、「沈黙の文化」により語られることはありませんでした。この状態を打開すべく、さまざまなメディアを通し、国民に行動を喚起するキャンペーンが展開されました。その1つが、南アフリカ版セサミストリート「タカラニセサミ」です。「タカラニセサミ」は、このキャンペーンを組み込み、この病気の抱える重大な課題について、大人と子ども間のコミュニケーションを促進させようとしました。
 「私に話して」は、有効なコミュニケーション、協力、自尊心、他者への尊重を促そうとする「タカラニセサミ」の1時間の特別キャンペーン番組です。如何にエイズから身を守るか、実際に病気になった場合どうすればよいのか、その結果どうなるのか、などの知識を視聴者に提供しています。
 この番組は、感染した子どもや家族に大きな影響を与えました。リサーチによると、この番組をほんのちとでも見た親は、見る前と比較して、2倍も子どもとエイズの話をするようになったそうです。私たちは、この「私に話して」を通し、子どもたちにより高い可能性に達する機会を与えたい、と願っています。長く継続する変化をもたらすため、一歩一歩前に進んでいます。
 子どもにより良い世界を作ろうとする、私たちの努力に気づいてくださったNHKに感謝します。
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