第32回「日本賞」<2005年>最優秀番組

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番組部門 子ども番組の部
総務大臣賞
番組名:ともだち
機関名:モンゴル国営放送(MRTV)
国名:モンゴル
 
番組内容
 主人公の少年バタラは7才。家の隣に引っ越してきたオルギは16才で、体は大きく、生まれつきの障害で発達が遅れている。バタラは父親から「あんな子とは遊ぶな」と言われるが、気立てのよいオルギと出会うと、すぐ仲良しになった。
 しかし、体は大きいが幼いままのオルギは、近所の子どもたちには蔑まれ、いじめの対象になってしまう。いじめっ子からオルギを守ろうとするバタラ。しかし多勢に無勢、ある日バタラは、逆にみんなに取り囲まれてしまう。その時、いつも温厚で人の言いなりになっていたオルギが、我を忘れ、大きな体で相手の子に突進していく。
 この‘事件’がきっかけで粗暴だとの烙印を押されたオルギは、施設に引き取られる事になる。無理やり引き離されることになった2人。オルギを収容していく車に必死にしがみつくバタラだが、車は無情に走り去っていく。友情をテーマに、実話に基づいて制作された、素朴で力強い少年ドラマだ。
審査講評
 「ともだち」は、きわめて特異であり、教育的効果のある、幼児対象の番組です。2人の友達関係に焦点を当て、1人は幼い男の子、もう1人は知的障害をもつティーンエージャーです。プロデューサーは、とかく、このようなテーマを避けたり、甘く加工したりしがちですが、この番組のプロデューサーは、率直に、ありのままに、このテーマに取り組んでいます。
 優れた演技と、見る者に反省を促すような素晴しい物語から成り立つこのドラマのロケーションは、実際のモンゴルの村。2人の男の子の友情は、ほかの男の子たちの、障害をもつ子へのいじめ、あざけりを誘発してしまいます。
 視聴者は、両方の男の子に自分の気持ちを重ねます。最後に、ティーンエージャーの子はトラックに乗せられ、連れ去られ、そのことが見る者に、正義の欠落を感じさせます。この番組は、真の友情は年齢・能力を超越するのだということを示し、民族・階級・文化の問題を考えさせ、世界中の子どもたちとその家族に何かを訴えかける力を持っています。
制作者コメント
アリューンジャウガル・ロッサンセレン
プロデューサー


 この番組は事実に基づいて作られました。「ともだち」はシンプルな言葉ですが、私たちが思うよりはるかに多くのことを表しています。個人の世界に身を置きながら、人間は、友だちという、人と人との世界をつなぐ特別な関係を築き、思考や感情を分かち合います。大人は、なかなか子どもの「ともだち」に対する感情や真の友情というものを理解することができないようです。しかし、現実の世界で、子どもの友人関係には、信頼、理解、尊敬、友情が確かに存在していて、人生における大事なひとときを形作っているのです。
 このドラマには、全ての年齢の視聴者から良い反響がありました。一見すると単純なストーリー展開なのですが、その実、毎日の生活におけるとても大事なことを描写しているからです。バタラはドラマの主人公で、かわいそうなオルギが弱々しく攻撃されやすいこと、年下の子どもたちに無視され、蔑まれているという事実を理解せず、受け入れようともしていません。
 私たちの周囲には知的障害を持つ子どもたちが多くないため、健常者はそういう障害を抱える人を避けたり、自分の子どもを保護したりします。結果的に、そういった大人の心無い行動が、オルギのような不幸な子どもたちに対して「冷たい」環境を作ってしまうのです。
 私たちは、「ともだち」を通して、子どもたちに、愛の本質を知ってもらいたいと思いました。愛、尊敬、友情は、人生におけるさまざまなことから育まれます。大人は、子どもの中にある本質を大切に育て、評価してあげるべきなのです。
 私たちに与えられた名誉ある賞は、このドラマ制作に関わったアーティストたちにとって、大きな励みになることでしょう。ありがとうございました。
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