NHK経営計画 2024-2026年度

01今、NHKに求められていること

究極の使命は、「健全な民主主義の発達に資する」こと(放送法第1条) 今、日本の公共放送(メディア)NHKに何が求められているのか

公共放送(メディア)をとりまく環境が大きく変化しています。

自然災害の激甚化が進むなか、視聴者・国民のみなさまの命と暮らしを守る緊急報道の重要性はこれまで以上に増しています。また、デジタル化の加速は社会の利便性を高めた一方、フェイクニュースのまん延で社会の混乱を招くなど、負の側面が課題となっています。“正確で信頼できる情報”への期待は、一層高まっています。

世界では、ロシアによるウクライナ侵攻をめぐって、政府から独立して公平公正な報道等を行い、「健全な民主主義の発達に資する」という公共放送の役割が再認識されています。

公共放送であるNHKも、情報空間の健全性を確保することで、平和で豊かに暮らせる社会を実現し、民主主義の発展に寄与することが求められています。

こうした経営環境のなかで、NHKは次の3か年において、2つの基軸をもとに公共放送の役割を果たしていきます。

ひとつは「情報空間の参照点」を提供することです。インターネット上で不確かな情報があふれるなか、視聴者・国民のみなさまにとっての “よりどころ” となる、正確で信頼できる社会の基本的な情報を提供したいと考えています。

もうひとつは「信頼できる多元性確保」に貢献することです。民主主義の基盤である多角的な視点を確保するために、情報空間において、伝統メディアが競い合いそれぞれの信頼性を高めることに寄与したいと考えています。

  • 「情報空間の参照点」の提供 信頼できる基本的な情報を提供すること
  • 「信頼できる多元性確保」への貢献 民主主義の基盤である多角的な視点

経営計画の全体像

今、NHKが目指すべきこと

緊急報道から大型国際コンテンツまで ~多様なコンテンツによる公共的価値の創造~(コンテンツ戦略 6つの柱)

情報空間全体の多元性確保への貢献

事業構造改革と新規領域創造

「信頼」されるNHKの組織運営へ

02今、NHKがめざすべきこと

適切な資源管理とテクノロジーの力で、
コンテンツの“質・量”を確保
世界的インフレ、厳しい財政状況のなかでも、
1割値下げした受信料額を堅持

放送、デジタル、展開。
すべてはコンテンツ起点で考える~メディア(波)は削減し、コンテンツに集中(衛星、ラジオを整理) /
先端テクノロジーの活用でコンテンツ制作環境を高度化~

03緊急報道から大型国際コンテンツまで ~多様なコンテンツによる公共的価値の創造~

コンテンツ戦略 6つの柱

それぞれに目標を持って、
視聴者・国民の「公共的価値」を実現

  1. デジタルと放送が連携して
    災害時になくてはならない命綱に

    自然災害の頻発・激甚化に対し、強みや特性を生かして
    「命と暮らしを守る」報道を深化

    • 「災害情報マップ」の展開
    • データジャーナリズムの進化
    • 「情報棟」新システムの有効活用
  2. “フェイク”の時代だからこそ
    顔の見える信頼のジャーナリズム

    フェイクニュース、フィルターバブル等の課題に
    世界の報道機関等と連携して対応

    • 取材過程の見える報道の展開
    • 他の報道機関とも連携
  3. 民主主義の一翼を担い
    平和で持続可能な世界の構築に貢献

    情報空間の健全性を確保し、
    持続可能な社会を目指す

    • 世界の“今”を正しく理解するための情報の多様性
    • 「 安全保障」「 SDGs」「 脱炭素」など世界的課題の解決
  4. 世界で輝く
    良質な教育・幼児子どもコンテンツ

    子どもから大人まで世代に合わせた
    学びに役立つ
    教育コンテンツを開発

    • Eテレの今日的役割を明確化
    • 新キャラクターを開発しグローバル展開への挑戦
  5. 未来を見つめ 人生を豊かにする
    教養・エンターテインメント

    放送100年を迎えたメディアとして
    アーカイブスも活用して“人間の未来”を後押し

    • 大型教養ドキュメンタリーの展開
    • 大河ドラマ「べらぼう」を軸に、日本文化を強く発信
    • NHKが保有する映像資産を最大限活用
  6. 幅広いジャンルと地域情報で
    多様性・多元性の実現

    これぞNHKという人気定時番組の開発

    • ユニバーサルサービスの強化
    • 全国ネットワークを生かした効率的で質の高いコンテンツ
地域
  • 厳しい財政状況のなかでも、価値の源泉である、取材・制作の基盤的資源へ投資
  • 災害対応、地域取材を基軸に、一律化することなく、それぞれの地域に合った形態でサービスを展開していく

(参考)経年実施の「地域指標調査」から各地の地域問題に対する意識は、ここ数年で「風水害」「安全保障」「教育」などが相対的に上昇

NHKの地域サービスへの期待は、災害対応と地域取材が核

国際

国際発信(フロー)

  • 戦略的に強化してきたニュース・情報発信を、今日的な問題・関心のもと、再強化
  • 視聴環境の変化に合わせ、デジタルもフル活用

分断、民主主義の危機が進むなか、
国際発信を再強化し「日本の視座」を発信

国際展開(ストック)

  • 各国で浸透するOTT ほか、コンテンツの流通革命
    に合わせ、戦略的に制作・展開の可能性を探る
    →結果、副次収入増等にも貢献
  • 米国ハリウッド等との本格協業による社会派ドラマ
  • 黎明期の名作も含めた“NHKアニメ”の多面展開等

世界各国で多様な消費をされるコンテンツ市場で、
「日本の視座」を発信

※インターネットを通じて提供されるコンテンツ配信サービス

04情報空間全体の多元性確保への貢献

基幹となる二元体制維持

(予算規模:600億円)~将来の受信料負担の軽減に貢献~

ネットワーク効率化に向けた取り組み (共同利用型モデルの導入、持続可能な代替手段の検討等)

  • 経済合理性を大前提に、民放と協調して
    積極的に対応していく

メディア産業全体のために

(予算規模:100億円)~地域を含むメディア産業全体の多元性確保に貢献~

情報空間の健全性確保への貢献 (外部連携による取り組み)

  • オリジネーター・プロファイル技術研究組合への参加
  • Trusted News Initiativeへの参加 等

外部との協調・連携

  • “共存共栄”のための外部制作比率の確保(衛星)
  • 取引について、より透明化し、公正性の確保を推進
    (人権とビジネスの観点も含めて)
  • 業界全体の底上げの取り組み 等

※「NHK経営計画(2021-2023年度)※「2023年1月修正」において、当中期経営計画期間に支出するものとして算定し、経営委員会が議決したもの

05事業構造改革と新規領域創造を同時に進める経営改革

事業支出改革

  • コンテンツの総量削減、設備投資の大幅削減等により、
    収支改善 (△1,000億円削減の実現)
  • コンテンツDXの推進、クラウド時代のワークフロー
    見直し等で実現
  • メディアの整理・削減(衛星1波・音声1波を削減)

受信料収入

  • 公平負担の徹底を図るため、視聴者との接点(デジタル・書面・対面・外部団体等)を開発・拡大し、契約申し出・支払いの利便性やNHKへの理解を高める、時代に即した「新たな営業アプローチ」を推進

支払率は現在の水準を維持する

副次収入等、受信料外収入の拡大検討

  • コンテンツの流通革命に合わせ戦略的に制作・展開
    →海外展開等の効果としての副次収入増を図る
  • 関連団体からの受取配当金増加

06「信頼」がすべての源 視聴者・国民から「信頼」されるNHKの組織運営へ

「信頼」をつくり出す現場マネジメント経営

高い専門性に基づく現場力の強化

  • 一人ひとりをプロフェッショナルとして尊重し、専門性を伸長する人事ポリシーの徹底
    (「人事制度改革」の「検証と発展」)
  • ダイバーシティ確保も含め、多様な価値を生み出せる人材を育成する
  • 専門性を発揮できる“内制力”を保持し、情報空間体に「信頼」できる情報を提供することを支える
    • 今日的な観点から基本に立ち戻った育成等の徹底
    • 高い水準の専門性を維持・強化できる仕組みの構築 等

経営マネジメント ~説明可能・アカウンタブルな経営の徹底~

全体方針 ~グループ全体を通じて~

  • 経営の意思決定プロセスを明確化し、 透明性向上を図る
  • ルール順守を徹底する組織風土の定着
  • 多様な理念、目標を多面的に提示し、PDCAを回していく

経営委員会・監査委員会によるガバナンス

  • 内部統制強化の一環として、すべての稟議書の査閲など監査委員会の機能充実を図る
  • 協会・関連団体の運営、業務、財産に関する重要な内容に対し、とくに「ガバナンス」の観点から、経営委員会が、執行部と審議・検討する定期的な会議体を設置
  • 経営委員会がより幅広く意見を集め、多元性の確保など、ガバナンスに生かす取り組みを強化