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ニセコ町発グローブ誕生!手も心もあたたまって

  • 2023年12月14日

こんにちは!「ほっとニュース道央いぶりDAYひだか」道央担当リポーター、坂井里紗です。そろそろ本格的な冬がやってきます。今回伺ったのは、ニセコ町。スキーやスノーボードなど、冬のアクティビティのイメージが強いのではないでしょうか。今回はそんなニセコ町の地域ブランドにしようと、「スノーグローブ」を作っている方に会ってきましたよ!「きらびやかな冬の置物」ではありませんよ!冬用の手袋です。

今期の営業をスタートしたばかりの町内のスキー場。多くの観光客や地元の人が楽しむ中、颯爽と現れたのが、鎌田諭さんです。とにかく、スキーが大好き!!(だじゃれじゃないですよ)3年前、地域おこし協力隊としてやってきました。

ニセコグローブ製作所 鎌田諭さん
「『生活の中でスキーがしたい』と思って、実現できるのがニセコかなと。もう最高ですよ。午前中スキーを1、2時間滑って、それから手袋の仕事というような毎日ですね。まずスキーをしないと気持ちが乗ってこなくてですね。ものづくりに影響するかな。」

鎌田さんが作っているのは、スキーなどで使う手袋=スノーグローブ。一人ひとりに合わせたオーダーメイドで作っています。使う人の手の大きさはもちろん、どのように使うのかなどを考えて皮の厚さや縫い方などを工夫しています。素材はエゾシカの皮。表面がなめらかで肌触りがふんわりしています。北海道らしさを取り入れようと考えました。

鎌田諭さん
「シカ皮は、すごく軽くてやわらかいのが特徴です。思ったよりもしなやかさがあるので、分厚い皮でも十分曲げ伸ばしがしやすくて、その分長持ちするのかもしれないですね。野生動物の皮なので、表面に傷があったり、色むらが激しかったりもありますが、強度に問題ない所を使えば、それが1つのデザインに。作るときは、使う人の顔を思い浮かべて。特にニセコ町の方だと『あの人のために作っているんだな』『あの人の物だったらここを少し工夫しておいてあげようかな』とか。顔が見えるのはやりがいがありますね。」

小さいころからものづくりが好きだったという鎌田さん。社会人になり、東京のメーカーに勤めました。

鎌田諭さん
「開発業務も担当していて、『新しいものを作る』『お客さんに提案していく』ということが面白いなと。小さい製品でもいいから、自分で作って自分で提案をしてお客さんと密にコミュニケーションをとりながらものづくりをするという姿に憧れを抱きました。」

ものづくりをするなら「大好きなスキーに関わるもの」。幼少期は、出身地の秋田県でスキーに親しみ、大学で北海道にやってきて「スキー部」に入部。ニセコにも合宿で訪れていたといいます。社会人になっても、毎週末スキー三昧。スキー愛が伝わります。

鎌田諭さん
「『大好きなスキーをしながらものづくりがしたい』というのもあったのですが、ニセコにはスキーやスノーボードに関係するいろんなプロフェッショナルな方がいらっしゃるんですよね。そういった人たちの意見を取り入れながら商品開発していける、恵まれたところなんじゃないかなと思って。小さく自分のミシンひとつでも開始できるような、スキーグローブであれば、ひとつずつ一歩ずつものづくりできそうだなと思ってニセコでスキーグローブを作ろうと思いました。」

地域おこし協力隊として働くかたわら、独学でグローブを作り始めた鎌田さん。「雪のプロフェッショナル」=「ニセコ町の人たち」の声を製作に生かすため、自ら使用している人に会いに行っているといいます。この日は、スキー場のパトロールをしている武田風太さんのもとへ。

鎌田さん
「いい感じですね。すごい使い込んだ感があって。パトロールの仕事なので、人の10倍は使いますもんね。」
ニセコビレッジスキーリゾート スキーパトロール副隊長 武田風太さん
「そうですね。でもいい味が出て、今一番のお気に入りですね。ほかの皮だとあまり柔らかくしすぎちゃうとすぐぼろぼろになったりするんですけど、なかなか優秀かなと。皮の素材がいい感じです。」

昨シーズンからグローブを使っている武田さんのグローブを見せていただきました。長時間、寒い外にいるパトロール隊を支えるグローブは、縫う糸が内側ではなく外側「外縫い」になっていました。

武田風太さん
「外縫いにしてもらうことで、自分でもちょっとしたメンテナンスがしやすいし、手先の作業に影響してくるので、外縫いをお願いしています。ロープを結ぶような細かい動きもあるので、指先の感覚はすごい大事。器用にできるように作ってもらって、すごく助かってますね。」

鎌田さんを「まじめを絵にかいたような方でとてもスキーが好きな人」と笑顔で語る武田さん。グローブを「手袋ではなく、ほぼ手です!」と話してくれました。

武田風太さん
「天気のいい日も悪い日も年間120日以上、グローブを使って仕事をするので、すごく大事な存在です。怪我をした人を助けるときも、お客さんよりギリギリの状態になれないんですよね。傷の処置になれば手先がちゃんと動く状態じゃなきゃいけないので、暖かさもかなり重要です。鎌田さんのグローブは非常に使いやすいですね。皮もしなやかで、耐久性もあり、非常に暖かいです。できたグローブが、私がオーダーしたことよりさらによくなっていて『やっぱりわかっているな』って。地元の物で地元の方が地元の人たちと一緒に作り上げるグローブはすごく魅力的なので、応援していきたいと思います。」

さらにこんな使い方をする方も。雪の多いニセコ町の日常に欠かせない「除雪」です。役場に勤める松澤一郎さんが、普段の使い方を再現して教えてくれました。

ニセコ町役場 松澤一郎さん
「車にこびりついた氷を手袋のまま結構ガリガリ削ったりとかしています。だいたいニセコだと、2日に1回は除雪があるので、ほぼ毎日ですね。雪の降ってないときはスキーに行くので、冬は皆勤賞です。何度もミーティングをして、いいグローブを作ってもらいました。ニセコらしい暮らしの中で、スキーがあって除雪があって…生活の道具ですね。」

実は松澤さん、鎌田さんが協力隊員になったころ一緒に働いていたといいます。鎌田さんがニセコ町に来て最初に「ニセコ町でグローブを作ります」と宣言をしたのも松澤さんだったといいます。「鎌ちゃん」と呼ばれていて、仲の良さが伝わってきました。

松澤一郎さん
「僕が面接をしました。そのときから『エゾシカの皮でグローブを作りたい』と。ずいぶん立派な方だなと思いました。ちゃんと計画を作って、着実に進んでいく方だなというのと、いつもニコニコしていて、人当たりもよい方です。ニセコで暮らしていく中で必要な道具なので今後も作ってもらいたいし、僕が鎌田さんを支えたり、鎌田さんが僕を支えたり、お互いサポートできるいい関係でいられればなと思います。」

ニセコ町の人たちが身近に感じられる「地域ブランド」を目指す鎌田さん。雪に関わる全ての人に使ってもらいたいと話しています。

鎌田諭さん
「『ニセコの人たちが作り上げるグローブ』だと思っています。ニセコには、普段からスキーやスノーボードに親しんでいる方もいれば、仕事にされている方もいますし、住んでいれば雪かきがアクティビティみたいなもんですから。雪と密接に関わってらっしゃる方がいっぱいいるので、そういった人たちの声や思いを乗せていけたら、本当の意味での『地域ブランド』になっていくのかなと思います。『愛着のわくグローブになってくれますように』と思って作りこんでいますので、愛していただきたいです。町で見かけたら「かまちゃん!」みたいな、身近な手袋屋さんになりたいですね。」

取材後記

鎌田さんのグローブは今シーズンから本格販売です。ほぼ一年前から鎌田さんのグローブに注目していて、ぜひ鎌田さんにお話を伺いたいと思っていました。今回、縁があって実際にお会いして、鎌田さんはイメージ通りとてもやさしく、丁寧で堅実な方でした!それはグローブも暖かいわけです。スキーパトロールの武田さんや役場の松澤さんに鎌田さんの人柄などを伺うと、うれしそうに照れながら「ありがとうございます」と言っていたのも印象的でした。取材中、一軒家の2階を借りて作ったという工房に伺うと、たくさんの「手」が…!いや、鎌田さんが作ったグローブが!それを見ながら自分だったらどんなグローブをお願いしようか…と想像がどんどん膨らみます。お気に入りのグローブがあれば、冬は寒いからと出不精な私も外に出るのが楽しくなりそうです!しばらくぶりにスキーを始めようかな…。形から入ってもいいですよね。

道央いぶりDAYひだか
坂井里紗
2023年12月13日

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