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Road to Rio vol.55 「リオの畳 それぞれの思い ~柔道~」

2015年12月02日(水)

こんにちは、キャスターの山田賢治です。

パラリンピックで行われる、視覚障害者柔道。東京パラリンピックで日本勢が表彰台に上がるには、まず来年のリオでどれだけ躍進できるかが重要です。
11月下旬、東京の講道館で開かれた全日本視覚障害者柔道大会を取材しました。


1202_yamaken001.JPG今回で30回目の記念大会。観客席はほぼ満員。「こんなに歓声が聞こえるなんて、かつては考えられませんでした」とベテラン選手。注目が高まってきている証拠です。
 


1202_yamaken002.JPG今回は、スウェーデンやインドからも選手が出場しました。
 


1202_yamaken003.JPG副審が両選手を畳の縁から試合場に誘導し、2人を向かい合わせます。
 


1202_yamaken004.JPG視覚障害者柔道のルールは、一般の柔道とほとんど変わりません。大きく違う点は、組み手争いがないこと。両者がお互いに組んでから、主審の「はじめ」の声で動き始めます。5分間、相手の柔道着をつかんだままで戦うので、疲労で腕の力や握力、脚力が後半落ちてきます。試合後は、指の感覚がなくなることもあるそうです。

 


今回、私が注目したのは、女子の2人の選手です。
 

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まず、57kg級優勝の三輪 順子選手。「パラリンピックは夢の舞台」と話す三輪選手は、去年2月のワールドカップと5月の世界大会でそれぞれ5位と、メダルを狙える位置にいます。ただ、世界との差は大きいと感じていて、実力上位の選手とは、「組んだ瞬間に強さがわかるんです。まだまだ稽古が足りません」。
 

三輪選手は、小学5年生のときに柔道少女が主人公の漫画がきっかけで競技を始めました。高校のときはインターハイにも出場する実力の持ち主でしたが、大学1年のときに膠原病の一つ、「成人スチル病」を発症。視力が大きく低下しました。しかし、大学3年のときにゴールボールの選手が汗をかいて頑張っているのを「うらやましい」と感じ、かつて自分がやっていた柔道の世界に戻ってきました。


普段は、実家のある愛媛県の高校や大学で練習を積んでいます。
かつて取り組んでいた一般の柔道と比べると、「腕の力の入れ方が難しい」と話す三輪選手。視覚障害者柔道では、腕を使って押し引きするパワーが必要なため、三輪選手は、普段の稽古の他に、ベンチプレスなど筋力トレーニングを欠かさないそうです。また、身長は157cm。海外には170cmを越える選手もいて手足が長いため、いかに相手の大きな技に対応し、自分の間合いで柔道ができるかがポイントです。


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試合前。右側が三輪選手



現在、視力は両眼ともに0.08で、視界は真ん中と外側が見えないとのこと。その見えない所に相手が入っても体が反応できるように、様々なタイプの選手と稽古することが大事だと考えているそうです。


「相手に“強い!”“負けて悔しい!”と思われる選手になりたい」と話す三輪選手。
得意の背負い投げで、初のパラリンピックの畳に立ってほしい!


もう1人の注目は、63kg級の米田 真由美選手。三輪選手と同様、今年の2つの主要国際大会でいずれも5位に入っています。


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米田選手は右側
 

この日、同じクラスには3人が出場し、日本選手には勝ちましたが、スウェーデンの選手には完敗でした。「足技に入るタイミングが、相手が一つ上だった」。得意は寝技。どうやって崩して寝技に持っていくか、が課題です。


パラリンピックには前回ロンドンで初めて出場。しかし、最初の試合で筋肉を断裂し、残念ながら棄権。その悔しさから、「自分が変わった」と話します。
「パラリンピックに出たい!ではなく、具体的に『●●のために、●●したら、●●となる』とイメージして今の稽古をすることが大事。やれることはすべてやっていく。悔いを残したくない。」


2大会連続でパラリンピック出場なるか。ロンドンパラから成長した米田選手の姿を、リオの畳で見せてほしいと思います。



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スウェーデンの選手の寝技を必死にこらえる米田選手


パラリンピックでは、各国すべての階級に参加できるわけではありません。これまでに各選手が出場した主要な国際大会の結果をポイントに換算し、世界ランキングが決められ、来年1月の段階のランキングによって、各国に出場枠が与えられます。そのあと、その階級で国内の選手による代表選考会が、春に行われます。
1つでも多くの枠を獲得して、パラリンピックで日本の柔道を思う存分見せてほしい!


◆関連情報
Road to Rio vol.15 「全身全霊で立ち向かう ~視覚障害者柔道~」

コメント

お疲れ様です、見えない世界でのスポーツは想像することが出来ませんが、本当に大変な努力をして闘って頑張っておられる姿に頭が下がります。パラスポーツがニュースで少しずつ多く報道されるようになって良かったですね。選手の皆さんの活躍をテレビの前で応援しています。ガンバレニッポン‼︎山田さんもお身体に気をつけて取材も頑張って下さい。

投稿:清満 2015年12月04日(金曜日) 09時10分