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【インタビュー】西澤 哲さん「自立支援ホームという存在、そして課題をまずは知ってほしい」

2014年07月03日(木)

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シリーズ 「施設」で育った私
第3回 “最後の砦” 自立援助ホーム

出演された西澤 哲さんにメッセージをいただきました。


《プロフィール》
山梨県立大学教授。

 

――第3回は、いろいろな事情で児童養護施設を退所した人たちが入所する自立援助ホームの実態を見ていきましたが、いかがでしたか。

自立援助ホームというのは当初、児童福祉法の狭間に落ちている子どもたちや、サービスを打ち切られた子どもたちを支えるために、“児童福祉法の外”に作られた施設だったんですね。でも、今はその時代に生まれた施設はすごく少数派になってしまって、経営的に立ちいかなくなった多くの施設は“児童福祉法の中”に入っていきました。しかも、当初は補助金というかたちでお金が入ってきたのですが、それでも立ち回らないので、今度は措置費制度を使うようになったという歴史があるんです。
そして、“児童福祉法の外”にあった当初は年齢制限がありませんでしたが、“児童福祉法の中”に入れられることで、結果的に支援を受けられる年齢が切り下げられてしまったんですね。そのことについてあなたはどう考えるか。私としては、自立援助ホームにいる限りは25歳になるまで措置の延長を認めるとか、そういう形で“児童福祉法の外”にあった当初の自立援助ホームの精神を何とか活かす形にはできないだろうかと考えているのですが……。
 


――その中で、番組では香川県にある、地域とつながりながら若者を支える自立援助ホームを紹介しましたが、どのようなこと考えましたか。

先ほどの話とのつながりで言うと、当初20か所位だった自立援助ホームが、今は100か所を超えているんです。それは社会福祉法人などが「自立援助ホームはある程度安定した経営が可能だ」と認識して増えていったところが大きいと思うんですけども、今回の愛媛県の事例というのは社会福祉法人ではなくNPO法人から始まっていますよね。でも、NPO法人の自立援助ホームは本当に孤立してしまっているのが現状ですし、番組で紹介したところはおそらく3人で支援をしていたので、そうすると勤務体系はどうなっているんだろうという心配もでてきます。ですから、もしNPO法人が運営できる施設なのであれば、そこに対する手当をもっと手厚くしないと、善意で始まった自立援助ホームが結果的に不適切な養育をしてしまったり、十分に役割を果たせないまま閉鎖されていくことになりかねません。そこはもう一度制度を考え直さなければいけないなというふうに思いました。
 

――そもそも、自立援助ホームというものを多くの人が知らない現状もあるのかもしれません。

おそらく知らないでしょうね。だから今回自立援助ホームの存在を全国放送できたことはすごく意味があると思います。まずはそういう施設があることを知ってもらう、そして、それは運営面でも十分ではないということが伝わればいいと思います。


――今回の収録ではどのようなことを考えましたか。

例えば児童相談所の果たす役割も今回の香川県の施設はかなり限定的でしたし、本来なら児童養護施設にいる子どもと同じような支援を児童相談所もしなければいけないのですが、それもできていませんでした。そういう意味でもこのような施設の重要性をもっとクローズアップしていくことはすごく大切ですし、福祉の領域だけではなく、例えば引きこもりや青少年の自立の問題とタイアップさせていくような形で、彼らが社会に出ていけるような支援を一緒になって考えていくことも必要になっていくのではないかなと思います。

 

 

◆7月特集<「施設」で育った私>
本放送:夜8時00分~8時29分
再放送:午後1時5分~1時34分

第1回 漂流する施設出身の若者たち
2014年7月 1日(火) 再放送7月   8日(火)

第2回 “巣立ち”に寄り添う児童養護施設の試み
2014年7月 2日(水) 再放送7月   9日(水)

第3回 “最後の砦” 自立援助ホーム 
2014年7月 3日(木) 再放送7月 10日(木)

第4回 反響編 
2014年7月 30日(水) 再放送8月   6日(水)