【インタビュー】西澤 哲さん「年齢ではなく、『その人が自立できるか』を見極めて社会に出していく」
2014年07月03日(木)
- 投稿者:番組ディレクター
- カテゴリ:「施設」で育った私
シリーズ 「施設」で育った私
第2回 “巣立ち”に寄り添う児童養護施設の試みにご出演された西澤 哲さんにメッセージをいただきました。
《プロフィール》
山梨県立大学教授。
――第2回は、自立支援を専門的に行う「自立支援コーディネーター」という職員を施設に配置し、手厚く支えていこうとする東京都の取り組みを紹介しましたが、いかがでしたか。
自立支援コーディネーターというのは、日常のケアワークと兼職せずに、子どもの自立支援に専念しますから、専門性を高めていけることにもなります。地方の施設にとっては、「東京都は恵まれているな」と思うかもしれませんが、この取り組みを参考にするべきところはあると思いますね。できれば全国化してほしいし、福祉というのはナショナルミニマムでなければいけないわけですから、東京と別の場所で格差があるというのはよくありません。ただ、本来は施設で生活している時にケアしてくれたケアワーカーさんが引き続き施設を出た後も相談に乗ってくれて、支援をしてくれるかたちが望ましいというのは言うまでもありませんから、そういう意味では苦肉の策とも言えるかもしれませんね。
――子どもたちのゆるやかな自立のために、児童養護施設ではどのようなことができたらいいと思いますか。
今は年齢によって“支援はここまで”というのが決められていますが、本当はそうではなくて、子どもたちがどこまで自立に向けて支援されてきたか、そして、それを心の中で蓄えて自立できる状態になったのかというのをしっかりと見極めて社会に出してあげることが望ましいですね。社会的養護や自立支援に向けた取り組みが個々にされるように作っていきたいと思うんですが、それがなかなか難しい。
――今は「義務教育までが社会で育てる期間」ということになっている面もあるかもしれません。
教育の分野の話になってしまいますが、例えばヨーロッパなどでは大学の無償化も進んできて、「教育というのは次世代の育成にとってかけがえのないものだ」という意識が高まっているわけです。でも、日本はそこにずいぶんと乗り遅れていて、中学以降は自己責任のようなシステムになっていますよね。もし教育側で全ての子どもに高等教育を均等に与えるようにしてもらえれば、社会的養護の子どものハンディキャップも今ほどは大きくないわけです。その辺は社会全体としての取り組みが欠けているなと思いますね。
◆7月特集<「施設」で育った私>
本放送:夜8時00分~8時29分
再放送:午後1時5分~1時34分
第1回 漂流する施設出身の若者たち
2014年7月 1日(火) 再放送7月 8日(火)
第2回 “巣立ち”に寄り添う児童養護施設の試み
2014年7月 2日(水) 再放送7月 9日(水)
第3回 “最後の砦” 自立援助ホーム
2014年7月 3日(木) 再放送7月 10日(木)
第4回 反響編
2014年7月 30日(水) 再放送8月 6日(水)